ドリルde俳句の結果発表

【第9回 ドリルde俳句】⑤

ドリルde俳句結果発表!

始めに

皆さんこんにちは。ドリルde俳句のお時間です。
出題の空白に入る言葉を考えるドリルde俳句。出題の空白を埋めてどんな一句が仕上がったのか、皆さんからの回答を紹介していきます。
“良き”

第9回の出題

○○○○○がんばった子の汗○○○

今回の出題を考えるにあたって、一番難しいな~と個人的に感じていたのは「感情の分量の処理」です。

冒頭でも述べたように、「がんばる」に「汗」さらに「子」とくれば凡人的ベタの極み。それら「素材・発想のベタ」に加え、「がんばる」という感情の要素を含んだ行動が引き起こす「感情的ベタつき」。

たとえば、お芝居やドラマなどのお涙頂戴シーンを観て「やりすぎ……」とか「クサい」と思ったことはありませんか? あるいは物事に対して斜めに見たり、呆れた気分になったりしたことはありませんか?
“良き”
プラスの方向にせよ、マイナスの方向にせよ、一句の中に収める感情の分量を見誤ると、読み手にこういった敬遠を発生させてしまう場合があるのです。

中七〜下五の頭「がんばった子の汗」はもう感情の分量が限界近くまで盛られた素材。コップの縁まで溢れそうになった水です。

その難しさを乗りこなして、なおかつ詩としても上質な回答なんてできるのかしら……と思っていたのですが、ありましたありました!
“ポイント”

和太鼓やがんばった子の汗は華

笹弓

上五「和太鼓や」の強調。ああ、なんという和太鼓だろう! 読み手は胴に響くような太い音、バチを振るう奏者の姿、様々な力強いモノを想像します。中七で人物の姿と、その汗が登場します。ここで「たくさん汗をかいてる」とか「汗が光ってる」と収めてしまうと凡人に逆戻りなのですが、最後の「は華」の収め方がお見事。

着物に浮いた白い汗の跡とも、肌に浮いた汗の描く幾何学とも、「汗」への賞美ともとれるラスト三音。「華」は植物の形を表すのみでなく、はなやかなこと、輝き、すぐれて美しいものなどの意味も含みます。

「和太鼓」も「華」も、単独ではただの存在ですが、詩の言葉として一句に収められると、読み手はその奥に秘められたイメージを引きずりだして一句を味わおうとします。大仰な誘導をせず「や」「は」の助詞一文字でそれぞれの効果を発揮させたのも見事な采配。
“とてもいい”
和太鼓やがんばった子の汗は華

脱衣籠がんばった子の汗ずしり

琳青

同じ発想が多くあった中から抜きん出たという意味で、お見事でした。実は近い発想の回答は多かったのです。「シャツ」「ユニフォーム」「剣道着」「柔道着」etc、それらが汗を吸って重い。あるいはそれらを洗う、といった発想。《琳青》さんの上手かったのは「脱衣籠」という上五を見つけてきたこと。

様々に想定される雑多な衣類をまとめて受け止めるだけの容量のたしかさ。リアリティを出すためのコツとして「より具体的に描く」とよく言われますが、種類を特定しない「脱衣籠」の大きな括りが逆に効果的なこともあるのです。持ち重る「ずしり」の感触の表現もまた真実の重み。
“良き”
脱衣籠がんばった子の汗ずしり

茶を冷やすがんばった子の汗見えて

鯖水煮

さりげなさが上手かった。上五「茶を冷やす」は終止形。一度軽く句が切れます。なぜ茶を冷やすのか? がんばった子の汗が見えたから。……一見、こういう解釈をすると、俳句に慣れてきた人なら「その読みは因果関係がありすぎる!」と否定的な見方をなさるかもしれません。

しかしこの句の上手いポイントは下五「見えて」の切れずに終わる形。「~て」などの切れずに終わる下五の形は、主に二つの効果を発揮します。

一つは、詠嘆の省略。「~なことだなあ」といったニュアンスです。もう一つは、意味の転回。下五から再び上五に言葉が戻っていくようなイメージです。「汗見えて茶を冷やす」といった具合です。

《鯖水煮》さんの回答はどちらのニュアンスもほどよく含んでいます。押しつけがましく「さあさあ見えたからやりましょう!」と感情を露わにするのではなく、「見えて」という事実だけがある。その事実の奥に、子を慈しみ、子のために行動する静かないたわりが見えてくるのです。
“ポイント”
茶を冷やすがんばった子の汗見えて

いいにおいがんばった子の汗だもの

ちょきさん

感情を抑制していくだけが乗りこなし方ではありません。感情の量を保ったまま、ふんわりと包み込むような《ちょきさん》さんもお見事でした。優しく語りかけるような口語の柔らかさ。

「子」「汗」以外はすべてひらがな表記で書かれていることもポイントです。子の汗の匂いを嗅いで「いいにおい」と感じるのは親の特権。ふいにこぼれたつぶやきがそのまま句になったような素朴な味わいです。
“良き”

これこそががんばった子の汗である

山本先生

同じく、放った言葉がそのまま一句に仕上がった句。《ちょきさん》さんの優しい語りとはまた違った、讃えるような言葉は現職小学校教師ならでは。語りの質は違えど、それぞれの言い回しを成立させるための工夫は同じように凝らされています。

「いいにおい」「だもの」が優しい言葉で中七を挟み込むのに対し、「これこそが」「である」は格調高い言い回しで上下を固めます。一つのものを指定し、強調する上五「これこそが」から始める語順のよろしさ。

その大上段に構えた歌い出しをきっちり受け止めるには、断定・強い決意表明を表す「である」でなくてはいけない。賞賛を受けて一層誇らしく輝く「汗」であります。

ベタをベタで終わらせない辣腕の光ったドリルde俳句。みなさんの明日の句作のお役に立てれば幸いです。ごきげんよう!
“とてもいい”