ドリルde俳句の結果発表

【第10回 ドリルde俳句】⑤

ドリルde俳句結果発表!

始めに

皆さんこんにちは。ドリルde俳句のお時間です。

出題の空白に入る言葉を考えるドリルde俳句。出題の空白を埋めてどんな一句が仕上がったのか、【第10回 結果発表④】に引き続き、皆さんからの回答を紹介していきます。
“良き”

第10回の出題

向日葵や○○○○○○○なりにけり

向日葵よながさきの鐘なりにけり

野山遊

珍しい使い方をした人もご紹介しておきましょう。「なりにけり」は一言でいえば「状態の変化」を表す言葉です。

ところが《野山遊》さんは「なりにけり」を「鳴りにけり」と解釈して回答しているわけですね。その機転お見事! 取り合わせの距離感もつかず離れず良い塩梅です。鎮魂の向日葵が明るく咲き誇る周囲の空気を「ながさきの鐘」が震わせます。
“良き”

向日葵よ自由は重くなりにけり

あさいふみよ

並べて読むと、昨今の情勢と合わせて胸にずしりと迫る。「向日葵」は平和や鎮魂から戦禍まで、幅広いイメージを内包した季語ですが、今その本意をあらためて噛みしめます。中七の終わり方が意外と少数派な形なのも技術的なポイント。

中村草田男の名句同様、形容詞で下五へと繋がる形になっています。これまでに紹介した例をみても、圧倒的に「~になりにけり」「~となりにけり」の形が多い中、貴重な成功例です。
“良き”

向日葵よ人の幽けくなりにけり

洒落神戸

同様の形を採用している句。向日葵は人の背丈を超える程の高さが特徴的な花ですが、だからこそ質量や空間占有率を表現することもできます。上五「向日葵よ」でまず場面が提示されます。読者はどんな光景かをまず想像しようとします。

「人の幽けく」なるなら夕刻だろうか。取り囲むような向日葵、降りてくる夕闇。個人的には、一枚の風景の奥へと遠く消えて行く人影を思いました。すこしこわい日本画のような世界に、怯えつつ惹かれます。
“とてもいい”

向日葵よ焦がれて月となりにけり

玉乃とらこ

逆張りの発想も面白かった。本来向日葵は太陽と関連付けられることが多い中、焦がれるあまり太陽の光をうけて初めて輝く「月」になってしまった、なんて切なくロマンチックな向日葵の人生(花生?)。花片も落ちてしまって、残っているのは月のクレーターのように無惨な茶色い頭だけだと想像するといっそう甘やかな哀愁がある。
“良き”
向日葵よ焦がれて月となりにけり

向日葵よ天地の艀になりにけり

むらのたんぽぽ

「天地の艀」という詩語が魅力。「艀」は水路や運河などで荷を運ぶために使われる平底の舟。向日葵の周囲の空間ごと切り取れば、たしかに艀のような長方形になるだろう。「向日葵」のひとつひとつが天と地を結びなにかを運ぶ「艀」だと夢想するファンタジーが楽しい。
“ポイント”

向日葵よ旅のロシアとなりにけり

春野のどか

独特な発想や空想も楽しいけど、現実に根ざした句だってもちろん味わいがある。「なりにけり」は状態の変化を表すだけでなく、その変化への「気づき」の要素も含んだ言葉。本来の「旅」はどこを目指していたのだろう。いつまで「旅」は続くのだろう。

いつの間にか随分遠くにきた、まさかこんなロシアにまで。感動するでもなく、ただ目の前の現実を眺める心持ちが「ロシア」のどかんと広い国土に立つ者の心境なのかもしれない。そこには向日葵も果てしなく続いているだろう。

旅に出たいな、ドリルde俳句。みなさんの明日の句作のお役に立てれば幸いです。ごきげんよう!
“とてもいい”
向日葵よ旅のロシアとなりにけり