俳句deしりとりの結果発表

第1回 俳句deしりとり〈序〉|「なし」③

俳句deしりとり
俳句deしりとり〈序〉結果発表!

始めに

皆さんこんにちは。俳句deしりとり〈序〉、はじまりました。

楽しみながら俳句の筋肉を鍛えよう! 出題の句からしりとりの要領で俳句をつくる尻二字しりとり、開幕です。【第1回 結果発表②】に引き続き、皆さんからの回答を紹介していきます。
“良き”

第1回の出題

今月の兼題俳句

初日さす硯の海に波もなし  正岡子規

兼題俳句の最後の二音「なし」の音で始まる俳句を作りましょう。

 

※「なし」という音から始まれば、平仮名・片仮名・漢字など、表記は問いません。

ナシゴレン常夏の島一人旅

来冬邦子

ナシゴレンのウィンナー朱し春の風

丹波らる

ナシゴレンすくふアルミのスプン朱夏

平本魚水

ナシゴレンカツカツかっこむカンカン帽

十月小萩

ナシゴレンの黄身春光へ崩しけり

洒落神戸

ナシゴレンふつふつ匂ひ立つ穀雨

染井つぐみ

ナシゴレン混ぜる四日や木のスプン

木染湧水

ナシゴレン春情色の二黄卵

くま鶉

今回トップクラスに大量の投句があったのが、インドネシア料理「ナシゴレン」。

耳慣れない独特の語感が俳人心を惹きつけたのでしょうか。それともみんなわりと食べ慣れてたりするのかな……?

場所に状況、どんな具が入っているのか、匂いや食べ方などなど、それぞれが「ナシゴレン」を魅力的に見せてくれます。特に「春情色の二黄卵」は珍しさと喜びが入り混じってて上手い!
“ポイント”

むくやボタンボタンと落とす皮

こたま

の皮くるくる細く蜜しとど

すずさん

の皮一本に剥いた昼下がり

濃厚エッグタルト

を剥くをんなの爪の紅きかな

Q&A

を剥く父の手付や二等兵

伊沢華純

食べ物としては「ナシゴレン」と並んで多かったのが「梨」。

「梨の花」などの周辺季語を含めるとナシゴレンを超えます。「梨」といえばまず、皮を剥く動作や剥かれた皮を意識した人が多かったご様子。その中でも《伊沢華純》さんの〈梨を剥く父の手付や二等兵〉は発想の方向性が意外でした。

「爪」や「指」などの部位まで視点をフォーカスした場合と比べて、「手付」だと剥くまでの一部始終や使っているナイフの濡れ具合まで見えてくるようです。
“良き“

を食ふ明日の仕事は泊りがけ

東山すいか

喰うや幹の太きに足投げて

みずな

喰らふアンドロメダを呑むやうに

青野彼路

食べ方もいろいろ。現代の光景から過去の人々の暮らしまで。

水分豊富な梨だからこそ旅の乾きを癒すような〈梨喰うや幹の太きに足投げて〉はいいなあ。日本昔ばなしの世界。〈梨喰らふアンドロメダを呑むやうに〉の大胆な比喩も魅力。
“とてもいい“

固形ぶってほんとは優し水

衷子

この詩の感覚もとても好き。梨って固形ぶってるくせに、ほんとうは優しい水なんだよ、と作者だけが知っている詩的真実。

「優しい水」の意味であれば文法的には少し注意が必要。「優し」だと終止形になり、ここで一度切れができてしまいます。連体形「優しき水」とすれば誤読される可能性が減ってグッド。
“ポイント”

供え嫁の務めをしたつもり

京あられたけむら

こんな庶民の生活実感も大いに愛しちゃう。

亡くなったあとも義理のご両親を大切に供養なさっているけれど、はたして本当に「嫁の務め」をできているだろうか、という自問自答。

……と、読むのはきっと心の清い方。「なーにが嫁の務めだ、ケッ!」なんて心情に読み取ってしまう、嗚呼、わたしの心の汚れていることよ~。
“良き“

売るや90トンで御殿建つ

井納蒼求

元農業高校生、気になったのでこれまたネット検索してみました。

総務省統計局の小売物価統計調査を元に各農産物の価格推移をまとめているWebサイト「小売物価統計調査による価格推移」によりますと、全国のスーパーで売られる梨1キログラムの値段平均は868円とのこと(2021年10月のデータ)。

90トンは90000キログラムなので、
868(円)×90000(kg)=78120000(円)

なんと7812万円!

あくまで単純計算であり、経費や卸値などは考慮していませんが、金額にくらくらしてしまいます。小御殿くらいなら建てられる……?

余談ですが、2015年1月~2021年10月の調査期間で梨の価格は大きく変動しています。最高値期は2020年10月の980円/kg、最安値期は2017年10月の518円/kgとなり、その差は約462円となります。その価格差、約1.9倍!

気候や天候もさることながら、燃料の高騰など様々な要因が絡み合ってのことだとは思われますが……うーん、農作物という生き物相手のお仕事は、一筋縄ではいかないとあらためて思い知らされますね!!
“良き“

園やみづの震への瀞みける

鰯山陽大

咲くや蹄に窪む潦

葵新吾

梨園と梨の花の秀句。

「瀞み」は「とろみ」、「潦」は「にわたずみ」と読みます。綺麗な言葉ですね。〈梨園やみづの震への瀞みける〉が梨園という広い空間のどこかに存在する「みづ」の表情を捉えるのに対し、〈梨咲くや蹄に窪む潦〉は同じ水という素材ですがその水たまりがどうやって・どんな場所に・どれくらいの大きさで存在しているのかを捉えます。

どちらも、それぞれの句が表現したい内容に対して光景の合わせ方がぴったり。前者は「梨園」の光景が広々と展開されますし、後者は潦に映ったり、あるいは周囲に散っているかもしれない梨の花の姿が想像されてきます。
“ポイント”

の花きらきら寂し父の家

ゆすらご

感情語「寂し」の置かれた位置が上手い。

「梨の花」は一面に白い光のような花を咲かせますが、「きらきら」はその広がりを見せてくれます。「父の家」にはもう大好きなお父さんはいらっしゃらないのかもしれないなあ、と。美しいけど寂しい春を迎える心地。
“良き“

割りの薪を焼べたる焚火かな

無弦奏

割りは忽ち伊勢海老を咲かす

いかちゃん

これも植物「梨」かと思いきや、「梨割り」は独立した別の言葉。

料理の世界において、梨の実を割るように縦に真っ二つに切り分けることをいうのだそうです。その他、演劇の世界でも刀で真っ二つに割るだとか、歌舞伎の小道具の一つにも「梨割り」なるものがあるのだとか。

どちらの句も綺麗にぱっかーんと割れておりますな。特に後者は「忽ち」の勢いや「咲かす」の鮮やかに開いていく姿も上手い。季語「伊勢海老」が活きております。じゅるり。
“ポイント”
さて、第1回しりとりもそろそろお開きの時間です。

せっかく多くの投句を頂いておりますから、この先の出題兼題はご投句いただいた句の中から選んでいきましょう。第3回の出題として選んだのはこちら。

なししじみみかんと言って初笑い

西岡メーグル

とことんしりとりにこだわってみました! な一句。
最後の二音は「らい」でございます。

しりとりで遊びながら俳句の筋肉鍛えていきましょう! みなさんの明日の句作が楽しいものでありますように! ごきげんよう!
“とてもいい“