俳句deしりとりの結果発表

第3回 俳句deしりとり〈序〉|「らい」②

俳句deしりとり
俳句deしりとり〈序〉結果発表!

始めに

皆さんこんにちは。俳句deしりとり〈序〉のお時間です。

「らい」から始まる尻二字しりとり句、①に引き続きご紹介してまいりましょう!
“良き”

第3回の出題

今月の兼題俳句

なししじみみかんと言って初笑い  西岡メーグル

兼題俳句の最後の二音「らい」の音で始まる俳句を作りましょう。

 

※「らい」という音から始まれば、平仮名・片仮名・漢字など、表記は問いません。

らい」とくりゃ、雷さまよ群馬人

志無尽おたか

らいさまや街道杉を真っ二つ

森野もりす

雷ネタは非常にたくさん届いたのですが、地域色が出た二句をピックアップ。

群馬だと雷のことを「らい」「らいさま」って呼ぶの? 調べてみると、群馬は気流の影響によって雷が多く落ちる土地なのだとか。そのため雷様を祭る神社が多数あり、信仰の対象として「雷様(らいさま)」の名で親しまれているのだそうです。ほほー!
“ポイント”

鳴や薄幸色のらんぷ揺れ

山川腎茶

雷・雷鳴ネタの秀句。「薄幸色のらんぷ」が詩の言葉として綺麗です。

山のコテージやテントの中にいて雷鳴を聞いているのかなあ。あちこちが風雨に揺れるなかで「薄幸色のらんぷ」を眺める頼りなさ。読み手がそれぞれの「薄幸色」を思い浮かべる余地を残してくれているのは賛否が分かれそうですが、個人的には楽しめます。

中七下五が印象的でありつつも、じっくり時間をかけて句に浸ると「雷鳴」が一句の主役へと立ち上がっていきます。「雷鳴」という人の力の及ばない偉大なモノに取り巻かれる、ある種神聖な時間と空間。
“良き“

電の手形のごとき大蛾かな

藤 雪陽

こちらは雷ではなく人名。江戸時代の伝説的な力士・雷電為右衛門です。

調べて見ると、現在の長野県出身。とにかく巨漢であったらしく、残された手形も非常にデカイ、とのこと。「大蛾」への比喩として迫力がありますなあ……絶対こっちに飛んできてほしくない~……びくびく。
“ポイント”

らいてうのやうなをんなを目指す春

藤れんぎょう

同じく人名ネタで登場したのは、平塚らいてう。明治~昭和を生きた人物であり、女性解放運動を行ったことでも有名です。

女性による女性のための文芸誌『青踏』を創刊しています。平塚らいてうの忌日である5月24日は「らいてう忌」として季語にもなっています。キリッと名詞止めで締める「目指す春」も威勢良し!
“良き“

鳥は羽の色かえ生きていく

カモミール

鳥や雛を五六羽連れる尾根

はなぶさあきら

鳥のつがひ亡命のトランク

麦のパパ

こっちは人間ではなく、鳥の「雷鳥」。日本の特別天然記念物に指定されており、長野県・岐阜県・富山県では県鳥になっています。

季節によって羽の色が変わるのは《カモミール》さんの句にある通り。夏はオスメスそれぞれに黒褐色や茶色が混じりますが、冬は両性とも全身白になります。以前富山に行った際、雪の上を歩く雷鳥の写真をみたのですが、丸々とした胴がとってもキュート。

冬の名物かと思いきや、歳時記では夏の季語に分類されています。歳時記によれば、夏には雛を連れた姿を見かける、との記述あり。なるほど、姿をよく見かけるのが夏だからかあ。

《麦のパパ》さんの句は八音と九音に分けて読む句またがりの型。世界が戦争に胸を痛める今、こんな亡命の瞬間もあるかもしれない。一夫一妻で生きる雷鳥の健気と取り合わせが響き合います。
“良き“

ライオンの子の目みづいろ花朱欒

平本魚水

ライオンの昼寝重たし檻の錆

琳青

ライオンは寂しい春は賑やかで

胡麻栞

らい」で始まる動物といえば百獣の王「ライオン」。

動物園などで実物を目にする機会が多いためか、俳人の心を捉えるモチーフなのか、秀句が揃っています。《平本魚水》さんの〈ライオンの子の目みづいろ花朱欒〉は、歴史的仮名遣いの表記もやわらかに「目」の映像を描いています。花朱欒のくりくりと集まって咲く花姿は数頭の子ライオンがいるのかもと想像を広げてくれます。

《琳青》さんの〈ライオンの昼寝重たし檻の錆〉は、「重たし」が表情を生んで上手い。動物の昼寝が季語になるか議論はあるでしょうが、夏の気怠さは十分に感じられます。

《胡麻栞》さんの〈ライオンは寂しい春は賑やかで〉は、動物園の作りが目に浮かんでくるから面白い。愛媛県松山のとべ動物園のサバンナエリアもこんな感じですね、シマウマやキリンのエリアと深い溝を挟んで独立するライオンエリア。ライオンの目線の先に春を賑やかに謳歌する動物や人々が遠い。
“とてもいい“

ライオンを名に持つたんぽぽの威厳

つんちゃん

同じライオンでも、こちらはダンデライオン=たんぽぽ。

「威厳」が精一杯黄色い花弁を開いてる姿を思わせてかわいい。がおー。
“良き“

ライトバンより獅子舞の降り来る

木染湧水

獅子違いもございます。

「ライトバン」が現場あるある。かろうじて車内で昼食と水摂って次の出番に備えるようなやつですね。敬意と共感がひしひし。
“ポイント”

ライス大盛り税務署の待ち時間

東田 一鮎

リアルな現場の句が続きます。

先ほどの《木染湧水》さんの句は「獅子舞」が新年の季語になるのですが、こちらは季語無し。だけどこの生々しい体験の再現度は心を掴んできますねえ。税務署内って食堂あるのかな……。
“ポイント”

ライターのオイルの匂い春の闇

千代 之人

「ライター」「春の闇」とくれば、その灯りを述べそうなものですが、中七を嗅覚情報で抑えてくるのが上手い。

個人的にはタバコが苦手で、ライターを使う機会はお線香を立てる時くらいしかないのですが、こんな「匂い」を句材で拾えるなら、それもひとつの良い経験でありますなあ。「春の闇」が艶っぽくもあり。
“良き“

ライムラム落花も注ぐ混合酒

かなかな

ライムを齧るウォッカは無味の四月

みぞの

ライム押し込むコロナビールを華奢な指

津島野イリス

お酒も句材。「ライム」はいろんなお酒との親和性がありますね。

ビールの炭酸が苦手な自分には《津島野イリス》さんの〈ライム押し込むコロナビールを華奢な指〉が難易度高かったんだけど、指がアルコールに浸かる瞬間の冷たさはとても魅力。調べてみるとメキシコ発祥のビールで、公式がこの飲み方を推奨してるんだそうで。へぇー!
“ポイント”

ライトより返球低し炎天下

さち今宵

野球好きには特定のゲームが思い出されそうな一句。

「返球低し」がシューッと滑るような高速の返球を描いて気持ち良い。「炎天下」の容赦ない日差しが送球の直下に濃い影を作っていることでしょう。
“良き“

ライナーノーツ書く〆切の蜜柑

みづちみわ

「ライナーノーツ」とはまた珍しいモノが出て参りました。音楽CDの冊子などに書かれている解説文ですね。

全くの妄想か、そういうお仕事に携わった経験の上での賜物なのか⁇ 「蜜柑」つまんで栄養補給しながら書いてる状況が若干昭和っぽい雰囲気もある。偏見?
“ポイント”

ライナスは安心毛布手離さず

まこと七夕

ライナスは毛布ムスメはスマホ

哲太豚九

漫画『ピーナッツ』、スヌーピーと言った方が通りは良いでしょうか。常に安心毛布を抱えて(引きずって?)いるのが「ライナス」です。

「毛布」は冬の季語……なんだけど、四六時中持ち歩いてる安心毛布は季語と考えて良いのか⁇ スマホ依存が進む現代のあるある状況。
“ポイント”

ライバルは歯科医の息子バレンタイン

さくら悠日

ダメだ……勝てる気がしない……。(敗北感に打ちのめされながら)
“難しい”

ライラック四百本の札幌よ

織部なつめ

ライラック揺れる売家の吊り看板

九月だんご

ライラック屋根裏部屋の開き窓

「ライラック」といえば北海道が有名。リラの花なんて呼んだりもしますね。

「四百本の札幌よ」とあるように、ライラックは札幌市の木に選定されているようです。空屋・売家や屋根裏部屋は時に悲壮感を持って描かれることもありますが、「ライラック」の明るい紫色と取り合わせると心地良い風が吹き抜けるようで好印象。
“ポイント”

ライ麦麺麭がしがし切れば夏来る

赤坂 奈緒

ライ麦パンの表示どんだけ見るの?

ぱんだ社長

「麺麭」の字が読めん! という方もいらっしゃるのでは。

「麺麭(パン)」を漢字で書く機会なんて日常でほぼないですからね。寒冷な地域でよく作られるライ麦パン。ヘルシーで健康に良いとされていますが、その感触はまさに「がしがし」。少しの酸味も夏に向けて気持ち良いですよ。

《ぱんだ社長》の〈ライ麦パンの表示どんだけ見るの?〉は季語とかの話は置いておいて、妙に可笑しい。商品片手に立ち止まってまじまじと成分表示眺めちゃう時、あるよね。健康意識しだすとついつい……。
〈③へ続く〉
“良き“