第20回「散歩中の紫陽花」《ハシ坊と学ぼう!③》
評価について
本選句欄は、以下のような評価をとっています。
「天」「地」「人」…将来、句集に載せる一句としてキープ。
「並選」…推敲することで「人」以上になる可能性がある句。
「ハシ坊」…ハシ坊くんと一緒に学ぶ。
「並選」…推敲することで「人」以上になる可能性がある句。
「ハシ坊」…ハシ坊くんと一緒に学ぶ。
特に「ハシ坊」の欄では、一句一句にアドバイスを付けております。それらのアドバイスは、初心者から中級者以上まで様々なレベルにわたります。自分の句の評価のみに一喜一憂せず、「ハシ坊」に取り上げられた他者の句の中にこそ、様々な学びがあることを心に留めてください。ここを丁寧に読むことで、学びが十倍になります。
「並選」については、ご自身の力で最後の推敲をしてください。どこかに「人」にランクアップできない理由があります。それを自分の力で見つけ出し、どうすればよいかを考える。それが最も重要な学びです。
安易に添削を求めるだけでは、地力は身につきません。己の頭で考える習慣をつけること。そのためにも「ハシ坊」に掲載される句を我が事として、真摯に読んでいただければと願います。
リュックより紫陽花のぞく翁おり
夢々
夏井いつき先生より
「リュックより紫陽花」と書けば、「のぞく」のは分かります。下五「翁」は、少々古臭いか(苦笑)。
「リュックより紫陽花」と書けば、「のぞく」のは分かります。下五「翁」は、少々古臭いか(苦笑)。


惡の華紫陽花を見て想い出し
中平保志
夏井いつき先生より
「惡の華」と「紫陽花」を取り合わせるのは、果敢な挑戦。後半「~を見て想い出し」は書かなくてよいフレーズです。
関係ないものをぶつけて、詩の火花を飛び散らせるのが、「取り合わせ」という技法の本質。色々試してみましょう。
「惡の華」と「紫陽花」を取り合わせるのは、果敢な挑戦。後半「~を見て想い出し」は書かなくてよいフレーズです。
関係ないものをぶつけて、詩の火花を飛び散らせるのが、「取り合わせ」という技法の本質。色々試してみましょう。


暁闇の空映しける紫陽花や
島田雪灯
夏井いつき先生より
「暁闇の空や」と詠嘆して、残りの音数で「紫陽花」を描写しましょう。
「暁闇の空や」と詠嘆して、残りの音数で「紫陽花」を描写しましょう。


紫陽花や華やぎ競ふ道の花
しせき
夏井いつき先生より
「華やぎ競ふ」は、ありがちな擬人化。上五「紫陽花や」と置いて、中七下五には「季語とは関係のない十二音」を取り合わせる、基本の練習から始めましょう。
『夏井いつきの世界一わかりやすい俳句の授業』(PHP研究所)、参考にして下さい。
「華やぎ競ふ」は、ありがちな擬人化。上五「紫陽花や」と置いて、中七下五には「季語とは関係のない十二音」を取り合わせる、基本の練習から始めましょう。
『夏井いつきの世界一わかりやすい俳句の授業』(PHP研究所)、参考にして下さい。


紫陽花や葉覆ひて色こんもりと
朱葉
夏井いつき先生より
観察しようとする姿勢はよいのです。ただ、紫陽花の特徴をぼんやりと書いてみた……にとどまっています。さらに細部を観察してみましょう。
観察しようとする姿勢はよいのです。ただ、紫陽花の特徴をぼんやりと書いてみた……にとどまっています。さらに細部を観察してみましょう。


亡き友の書と紫陽花や凛として
沢山葵
夏井いつき先生より
「凜として」は、案外凡人ワード。よく使われます。この言葉に甘えないで、どんな映像が「凜として」と感じさせたのか。その映像を描写する練習から始めましょう。
「凜として」は、案外凡人ワード。よく使われます。この言葉に甘えないで、どんな映像が「凜として」と感じさせたのか。その映像を描写する練習から始めましょう。


赤門の内にがくある青蛙
瑞陽庵
夏井いつき先生より
「赤門→東大、がく→東大の学と紫陽花の萼、赤門と青蛙・紫陽花の色を掛けてみました。欲張りです(汗)」と作者のコメント。
「がくある」が分かりにくいです。色々と、意味を掛けたんだと思いますが、まずはどんな「青蛙」なのかを、描写する練習から。
「赤門→東大、がく→東大の学と紫陽花の萼、赤門と青蛙・紫陽花の色を掛けてみました。欲張りです(汗)」と作者のコメント。
「がくある」が分かりにくいです。色々と、意味を掛けたんだと思いますが、まずはどんな「青蛙」なのかを、描写する練習から。


紫陽花の咲く道知らぬ町
明甫
夏井いつき先生より
「紫陽花の咲いているところはないかなと思い、近所を歩いて見ました。なかなか巡り会えず、ちょっと遠出になってしまいました」と作者のコメント。
表現したい内容と、書かれた字面のあいだに、少々隙間があります。書きたかったことは何だったか、整理しなおしてみましょう。
「紫陽花の咲いているところはないかなと思い、近所を歩いて見ました。なかなか巡り会えず、ちょっと遠出になってしまいました」と作者のコメント。
表現したい内容と、書かれた字面のあいだに、少々隙間があります。書きたかったことは何だったか、整理しなおしてみましょう。


紫のわけあひ土ふむ七変化
やまうらけいこ
夏井いつき先生より
「七変化」は紫陽花の傍題。上五中七の意味が、取りにくいのが問題点。「わけあひ」「ふむ」のは、誰? 何? かを、自問自答してみましょう。
「七変化」は紫陽花の傍題。上五中七の意味が、取りにくいのが問題点。「わけあひ」「ふむ」のは、誰? 何? かを、自問自答してみましょう。


紫陽花や長靴の音弾みける
水川 海豊
夏井いつき先生より
後半を素直に「長靴の音弾む」と整え、余った音数で「紫陽花」を少しでも描写してみましょう。
「紫陽花は揺れ」「紫陽花は青」「紫陽花に雨」など、言葉のパズルのつもりで、いろいろな言葉を当てはめる練習をしてみましょう。
後半を素直に「長靴の音弾む」と整え、余った音数で「紫陽花」を少しでも描写してみましょう。
「紫陽花は揺れ」「紫陽花は青」「紫陽花に雨」など、言葉のパズルのつもりで、いろいろな言葉を当てはめる練習をしてみましょう。


紫陽花やキラキラ光る路地の雨
康女
夏井いつき先生より
「キラキラ」と「光る」は、情報が重複しています。
「キラキラ」と「光る」は、情報が重複しています。


命日や四葩鎧で門の脇
深生
夏井いつき先生より
「親の命日に空き家になった実家に足を運ぶと、門の脇に紫陽花が見事に咲いていました。鮮やかだけど固い萼が、鎧を着て家を守っているように見えました」と作者のコメント。
「鎧」が比喩なのか否か、この書き方では分かりにくいですね。
「親の命日に空き家になった実家に足を運ぶと、門の脇に紫陽花が見事に咲いていました。鮮やかだけど固い萼が、鎧を着て家を守っているように見えました」と作者のコメント。
「鎧」が比喩なのか否か、この書き方では分かりにくいですね。


雨楽し紫陽花の葉が手招きす
畑の百日草
夏井いつき先生より
「手招きす」という擬人化に甘えず、その動きを描写する練習をしてみましょう。俳句は筋トレ。俳筋力を鍛える練習です。
「手招きす」という擬人化に甘えず、その動きを描写する練習をしてみましょう。俳句は筋トレ。俳筋力を鍛える練習です。


紫陽花や祠を染めし水の色
紅絹(もみ)
夏井いつき先生より
「染めし」も、かなりの凡人ワード。この言葉に甘えないで、他の表現がないか、考えてみましょう。
「染めし」も、かなりの凡人ワード。この言葉に甘えないで、他の表現がないか、考えてみましょう。


待ち遠しいな押し木した紫陽花
虹いろ
夏井いつき先生より
「押木二年目で花芽をつけてくれた紫陽花が愛おしく、どんな色・種類なのか心待ちにしています」と作者のコメント。
「待ち遠しいな」と、自分の思いをそのまま書くのではなく、今の状況を書けばよいのです。
「挿木二年目」は、具体的でよい表現ですよ。(「押し木」ではなく「挿し木」の間違いですね、きっと。春の季語としては「挿木」の表記が一般的です)
「押木二年目で花芽をつけてくれた紫陽花が愛おしく、どんな色・種類なのか心待ちにしています」と作者のコメント。
「待ち遠しいな」と、自分の思いをそのまま書くのではなく、今の状況を書けばよいのです。
「挿木二年目」は、具体的でよい表現ですよ。(「押し木」ではなく「挿し木」の間違いですね、きっと。春の季語としては「挿木」の表記が一般的です)


田植では子守りの主役かぶとえび
うしがえる
夏井いつき先生より
「紫陽花は田植どき。田に水が入ると大量のカブトエビが湧いて、子供の興味を惹きつけます」と作者のコメント。
「では」は散文的。コメントにある言葉「田植どき」のほうがよいですね。
「紫陽花は田植どき。田に水が入ると大量のカブトエビが湧いて、子供の興味を惹きつけます」と作者のコメント。
「では」は散文的。コメントにある言葉「田植どき」のほうがよいですね。


パンダ待つ騒めきを聞き七変化
奏美和
夏井いつき先生より
「七変化」よりも、パンダのほうが主役っぽい。もう少し、紫陽花を描写して欲しいところです。「パンダ待つ騒めき」でカットを切り替えて、「~を聞き」を節約し、その三音で「紫陽花」を描写しましょう。
傍題「七変化」よりも、「紫陽花」のほうが映像がくっきりしますよ。
「七変化」よりも、パンダのほうが主役っぽい。もう少し、紫陽花を描写して欲しいところです。「パンダ待つ騒めき」でカットを切り替えて、「~を聞き」を節約し、その三音で「紫陽花」を描写しましょう。
傍題「七変化」よりも、「紫陽花」のほうが映像がくっきりしますよ。


傘越しの目が合うた途端紫陽花よ
谷川炭酸水
夏井いつき先生より
「傘越しに目の合う」でワンフレーズにして、カットを切り替えて「紫陽花」の映像を作る。「切れ」は有効な技法です。トライしてみて下さい。
「傘越しに目の合う」でワンフレーズにして、カットを切り替えて「紫陽花」の映像を作る。「切れ」は有効な技法です。トライしてみて下さい。


雨上がり真一文字の夏燕
西山永行人
夏井いつき先生より
燕らしいといえば、燕らしいのですが、中七はありがちな表現。もう一工夫ほしいところです。
燕らしいといえば、燕らしいのですが、中七はありがちな表現。もう一工夫ほしいところです。


ででむしの歩みのゴルフ空を見る
しげ尾
夏井いつき先生より
「ででむしの歩みのゴルフ」ですから、ゴルフの上達をカタツムリに喩えているのだと思われます。季語を比喩に使うと、季語としての鮮度は落ちます。再考してみましょう。
「ででむしの歩みのゴルフ」ですから、ゴルフの上達をカタツムリに喩えているのだと思われます。季語を比喩に使うと、季語としての鮮度は落ちます。再考してみましょう。

