俳句deしりとりの結果発表

第4回 俳句deしりとり〈序〉|「かり」③

俳句deしりとり
俳句deしりとり〈序〉結果発表!

始めに

皆さんこんにちは。俳句deしりとり〈序〉のお時間です。

出題の句からしりとりの要領で俳句をつくる尻二字しりとり、②に引き続きご紹介してまいりましょう!
“良き”

第4回の出題

今月の兼題俳句

昼の雪みるみる積もりゆくひかり  苔 琥宇良

兼題俳句の最後の二音「かり」の音で始まる俳句を作りましょう。

 

※「かり」という音から始まれば、平仮名・片仮名・漢字など、表記は問いません。

カリギュラの淫蕩かなし木の芽和

かなかな

カリギュラ帝の無聊ふらここに鎖

陶瑶

「カリギュラ」とは、古代ローマ帝国の第三代皇帝。

独裁者として有名で、いろんな意味で強烈な逸話の残る人物です。しかしどちらの句もどこか哀愁が漂うのが興味深い。

しかも「木の芽和」に「ふらここ」、どちらも春の季語。明るさと暗さの対比が感じられます。暗君には暗君なりの哀しみややりきれなさがあったんですかねえ……。
“良き“

カリアチードの神殿に春の月

龍の珠

こちらも古代の世界を思わせるフレーズ。

調べてみると、西洋建築における女像柱を意味する言葉なのだそうです。古代ギリシア神殿の柱になっていたのだとか。今でも残ってるんですかねえ、いつか現地に見に行ってみたい。「春の月」が柱のシルエットを浮かび上がらせます。
“ポイント”

カリンカのテンポ押し上げ風薫る

胡麻栞

「♪カーリンカ カリンカ カリンカ マヤ♪」のフレーズが耳に思い出されてきます。

段々加速していくテンポを聴いていると、途中からわくわくを通り越して焦りを覚え始めるのは僕だけでしょうか。

「カリンカ」はガマズミの愛称らしく、5月頃に白い花をつけるのだそうです。おお、そういう背景も加味しての季語「風薫る」ならさらに説得力が増しますね!
“とてもいい“

衣で唱える祝詞薫る風

むい美縁

衣に玉砂利の白若葉風

天恵の風

同じく薫風を季語に選んだ一句ですが、取り合わせる素材は純和風。

カリンカや祝詞など、人の声が風に乗って届いてくる状況と薫風は取り合わせやすいのかもしれませんね。同様に「狩衣+風に関する季語」の作りでも、《天恵の風》さんの句は焦点の合わせ方が変わってきます。

中七「玉砂利の白」で歩く足下の映像を明確にする手堅い作り。季語「若葉風」は漠然とした「風」ではなく、新鮮な「若葉」の色彩やそよぐ音も含んでおり、上五中七の具体的な語りとうまく釣り合います。
“ポイント”

人や今夜もファイナルファンタジー

紅紫あやめ

人を熱唱伊那の春は去ぬ

星埜黴円

「狩」の字から始まる季語に「狩人」があります。

が、確信犯的に季語としてビミョーなラインの句が二つ。《紅紫あやめ》さんは完全に「ファイナルファンタジー11」マニアの僕を狙い撃ちしてきてるやつですね……。銀弾スラッグは当時異次元な強さでござった……(真っ当な読者諸氏は意味がわからなくて大丈夫です)。

《星埜黴円》さんの「狩人」は歌手ですね。「あずさ2号」を過去映像で部分的に聴いたことしかない世代であります。長野県へのアクセスは今もあずさが活躍している模様。それで「伊那の春」なのね。
“良き“

人の軽トラ鹿の二三頭

蓼科 嘉

こちらは「猟人」と書いて「かりうど」と読ませる形。

「鹿」も季語なので季重なりになりますが、死んで軽トラに積まれた「鹿の二三頭」は秋の季語としては鮮度に欠けるようにも思えます。ビミョーなラインではあるけれど、冬の季語「狩人」の句と考えるのが妥当かなあ。
“良き“

カリブーの群れ秋風のツンドラを

山棚佳津

「カリブー」はシカ科の動物。

北アメリカ産のトナカイで、アラスカやカナダに生息するようです。寒冷なツンドラにおける狩猟の対象となり、重要な生活の資源とのこと。

寒さの増してゆく「秋風のツンドラ」を群れが身を寄せ合いながら進んでいく姿を想像すると、雄大な自然の満ち足りた寂しさのようなものを感じますね。上五から下五まで、切れのない形で綴られているのも余韻を持たせる工夫の一つ。
“ポイント”

カリフォルニアアシカへ放りやる鰯

にゃん

長い長い動物の名前が登場します。

「カリフォルニアアシカ」だけでなんと九音。こんな固有名詞を使ってどうするんだろう、と一瞬心配になるものの、残り八音の展開の仕方が上手い。助詞「へ」でカリフォルニアアシカを動作の終着点だと示し、直後に「放りやる」動きを提示。

さらに続く三音の季語「鰯」によって、放物線を描いて飛ぶ鰯の鈍い銀色の煌めきが見えてきます。長い単語だってなんのその。巧みだねえ。
“とてもいい“

カリメロや頭の殻にある春愁

杜まお実

引き続き、生き物……と言って良いのでしょうか。架空のキャラクター「カリメロ」の登場。

よく知られたキャラクターではありますが、実はあんまり「カリメロ」のアニメって見たことないなあ。割れた卵の殻をかぶったひよこが主人公のカリメロらしい、くらいの漠然とした知識しかありませぬ。案外春愁を抱くような、内省的で深い作品だったりするの……?
“良き“

河了貂まねる姪っ子鉄線花

あみま

こちらも漫画・アニメ『キングダム』からの登場人物「河了貂(かりょうてん)」。

コミックス買っております。実写映画の第二弾が2022年7月15日公開ですね。「姪っ子」はどんな場面を真似しているんだろう。初期の頃は非常にマスコット感溢れる姿でしたが、最近は真っ当な軍師してるからなあ。

「鉄線花」の取り合わせも中国原産あたりを意識してるんだろうか。あるいは尻二字を「んか」にして次の人を苦しめてやろうという策士な発想!?
“ポイント”

カリキュラム厚く学びの天高し

浅田老遊

カリキュラム終え鯛焼を皆みっつ

はなぶさあきら

学びの現場からの二句。

大学、あるいは中学や高校で初めてこの単語に出会う人もいるでしょう。一口に「カリキュラム」と言っても、それぞれに描こうとする光景は違います。《浅田老遊》さんは「厚く」と語られていますから、冊子などの手に取れるモノとしての「カリキュラム」。

一方、《はなぶさあきら》さんは履修の課程を完了しての一息、といったニュアンスでしょうか。「皆みっつ」の数量も育ち盛り満々の食欲でよろしい。「鯛焼」の湯気が人数分見えてきます。
“ポイント”

刈り込んで男の肩は広く首夏

のつり

そこにはこんな屈強な「男」もいるかもしれないなあ。

「刈り込んで」と「肩は広く」。この二つの情報だけで、いかつい筋骨隆々な姿を想像してしまいます。

「首夏」は「初夏」を意味する時候の季語ですが、あえて「首」の字を用いた言い方をすることで、肩の間にそびえ立つ立派な「首」まで映像化しようとします。貪欲なまでに言葉を効率的に使おうとする姿勢は見習いたいですねえ。
“良き“

葱伸ぶ空に引き戻されるごと

雪音

「刈葱(かりぎ)」は夏の季語。文字通り葱です。

一年に何度か収穫できる、つまりそれだけ成長が早いということが「刈葱」の特徴なわけですが、その成長の早さを詩的に語る中七下五が魅力的。

まるで空に引き戻されるように尖っていく葱の緑。抜けるような空の青を背景にして、季語が描写されています。
“ポイント”

ゆくよヤカンの音は弱きしゅしゅ

龍酪

かり」から始まる季語、そのものズバリがありましたねえ、「雁」でございます。

叙情的な使われ方をすることが多い「雁」に対して、中七下五のバランスが良いのが特徴です。大仰に感慨を述べるのではなく、ヤカンが噴く弱い音がほんのりと耳に届いている事実だけを述べる。

そして雁たちは、そんな音も届かない遠くへと離れていってしまう。季語の持つ力に身を託すことで成功した例です。
“ポイント”
第6回の出題として選んだのはこちら。

第6回の出題

かりんとのじゃりじゃり溶ける夜釣りかな

山河穂香

かりんとうの句もたくさん届いていたのですが、なかでもこの句を推しました。

かりんとの音をあぢはふ緑夜かな 卯年のふみ〉の季語への瑞々しい感覚や〈花林糖噛めば匂ひくる麦星 鰯山陽大〉の噛んだ瞬間に広がる味覚と嗅覚も魅力的だったのですが、《山河穂香》さんの「じゃりじゃり溶ける」までの時間の長さを季語「夜釣り」が豊かに受け止めている点に惚れた!

しりとりで遊びながら俳句の筋肉鍛えていきましょう!
みなさんの明日の句作が楽しいものでありますように! ごきげんよう!
“とてもいい“