俳句deしりとりの結果発表

第6回 俳句deしりとり〈序〉|「かな」②

俳句deしりとり〈序〉結果発表!

始めに

皆さんこんにちは。俳句deしりとり〈序〉のお時間です。

出題の句からしりとりの要領で俳句をつくる尻二字しりとり、。①に引き続きご紹介してまいりましょう!
“良き”

第6回の出題

兼題俳句

かりんとのじゃりじゃり溶ける夜釣りかな  山河穂香

兼題俳句の最後の二音「かな」の音で始まる俳句を作りましょう。

 

※「かな」という音から始まれば、平仮名・片仮名・漢字など、表記は問いません。

かなかなとひぐらしかなとかなとまな

東田 一鮎

かなかなのかなしかなしと透きとほる

にゃん

かな」の二音から始まるしりとりで最多の回答となったのは「かなかな」。

鳴き声だけでなく、単語としても音の繰り返しが印象的な季語です。「な」の音を何度も登場させる《東田 一鮎》さんの句、タレントのマナカナ姉妹(三倉茉奈と三倉佳奈)を思い出しますね。NHKの連続テレビ小説『ふたりっ子』や『だんだん』といえば記憶にある人も多いんじゃなかろうか。

《にゃん》さんは音への詩的な把握が魅力。薄緑色の線の入った翅に対する言葉のようにも思えます。
“良き”

カナカナが乾いた耳に流れこむ

もぐ

肉体感覚ではこの句も面白い。

「乾いた耳」とあえて言われると、じゃあ乾いてない状況もあったのかしら、と読み手として考えます。プールからの帰りとかかなあ。今まで水が入り込んでいた耳が解放され、流れこんでくる「カナカナ」の洪水。
“ポイント”

かなかなや兄についてく校区外

末永真唯

かなかなや母とさいごに観た映画

渋谷晶

「かなかな」はその音の哀切から様々な郷愁を誘います。

どちらの句も明確に過去のことだと言及があるわけではないんだけど、句の奥にかつての日を思い起こしているような手触りがあります。子ども心に、決められた「校区」の外に出て行くことは禁じられた冒険に出掛けるようで、恐れ半分わくわく半分の心地でしたねえ。「兄」の背が頼もしい。

一方、「母とさいごに観た映画」は切ない。その映画を観るたびに、引き金のように母との記憶が蘇るわけです。どうせなら良い映画を共に観た記憶として残しておきたいものですね。最後にいつきさんと観た映画なんだったかな……ハリーポッターの七作目だったかな……?
“良き”

かなりいい~」と言はれ脱ぐ試着のアロハ

常磐 はぜ

大いなる共感と共に笑ってしまう一句。

ぜんっぜん興味もなければ好みでもない服を着せられること、ありますよね……本気で言ってんのかよ、とか思いながらすぐ脱ぐやつ。衣服系の季語のなかでも「アロハ」はかなり現実感があって良いチョイス。仮に「どてら」とかだと「かなりいい~」って言葉は出てこないだろうし。
“ポイント”

かなんなあ西瓜だらけで寝られへん

虎八 花乙

関西弁の会話調。

「西瓜だらけで」って理由が妙にリアルです。田舎だとできすぎた作物を山のようにいただくこと、割とよくありますからねえ。転がる西瓜の脇で昼寝したりする姿を想像すると余計に愉快。
“とてもいい“

かなり苦手自治会長と心太

藍創千悠子

これもなんとも言えずリアルだなあ……。

「かなり苦手」なのは「自治会長」に対してなのか、「心太」に対してなのか、あるいは両方か。《虎八 花乙》さんの句と続けて読むと「めっちゃ勢い強すぎる関西弁の自治会長」みたいな姿が思い浮かんで余計に苦笑い。
“難しい”

家内とはどなたのことか心太

いろはにぽてと

もうお一人、心太仲間がいらっしゃいました。

内心、ふん! と憤りに鼻を鳴らしているような上五中七。酸っぱい心太をすすり上げてこんな悪態つけるパワーが逞しくて眩しい!
“良き”

家内なら居ません。」缶ビール旨し

太之方もり子

この、のうのうとした様子も愛しちゃうなあ。

一見、ぐうたらな夫の姿かと想像しましたが、状況をいくつか想定してみると面白い。本当に奥様が不在で缶ビールを楽しんでいる夫の句かもしれないし、あるいはもう気持ち良くお酒を召している「家内」をわざわざ訪問者のために引き出すこともあるまい、と嘘をついて門前払いする夫の優しさを耳にした妻の句かもしれない。

個人的には後者の読みが好みだけど、真実は如何に。
“ポイント”

かなぐり捨てる節制よビヤホール

佐藤レアレア

今回相性が良かった(?)のか、不思議と「ビール」も複数回登場した単語でした。

個人的にはあまりビールを飲まない人間なのですが、ビヤホールって一回いくとどれくらいの摂取カロリーになるんですかねえ……嗚呼、おそろしい。
“参った”

かなしみやビールの泡の零れざる

清瀬朱磨

かなしみの降り積もりゆくかき氷

梵庸子

かなしみの性質を季語で喩えたタイプの句。

《清瀬朱磨》さんはビールの泡が零れる瞬間を心がこぼれる瞬間と重ねているのかなあ。零れるかと思いきや、ギリギリを保つ「かなしみ」の量。

《梵庸子》さんは「降り積もりゆく」が映像と時間の流れを表しています。さりさりと音を立てて削られていく先にできる「かき氷」が、我が身と心を削り生きる現代にシンクロする。……と考えてしまうのはワタクシ病んでおりますでしょうか。
“良き”

カナリアは父の土産よ春を乞ふ

むらのたんぽぽ

カナリアの句も寄せられましたが、傾向としては鳴いたり、鉱山につれていかれたりといった描かれ方が多かったです。

その点、《むらのたんぽぽ》さんは明確なカナリアの行動をどうこう語らなかったのが魅力。鳥かごの小さなカナリアも、そして私自身も「春を乞ふ」心で今を過ごしています。
“ポイント”

かなりあは鬱か かなりあも鬱か

髙田祥聖

実験的な作風に振り切る潔さ、キライじゃない。

句としての良し悪しはともかくとして、私もだよ、と共感もしつつ。
“良き”

カナリアの無精卵冷ややかな笛

立田鯊夢

不思議な魅力に取り憑かれて離れられなくなったカナリアの句がこちら。

十音+七音の変則的な形の句。この取り合わせに強い魅力を感じております。産み落とされた卵は命として孵らない「無精卵」。その無精卵に取り合わせの言葉としてぶつけられたのは「冷ややかな笛」。

「冷ややか」は時候の季語ですが、秋の冷たさのなかにあって、この「笛」自体もすっかりその温度に染まってしまったかのような無機質さ。そのお互いの「無」が取り合わせの接点なのかなあ。うーん、しりとりという遊びの中でこんな佳句が生まれてくるのだから、真剣な遊びはやめられませぬ。
“とてもいい“

夏奈ちゃんの美魔女自慢の暑苦し

ぱんだ社長

しっとりした句が続いているので、気分を変えて。

こんな人、いそうだなあ!(笑)。いつの頃からか「美魔女」なる単語が使われるようになりましたが、いったい発祥はどこなんだろう。「暑し」は季語だけど「暑苦し」は季語になるのか? と疑問も残りますが、有無を言わせぬ夏の迫力がありますな~(笑)。

〈③へ続く〉
“良き”