俳句deしりとりの結果発表

第6回 俳句deしりとり〈序〉|「かな」③

俳句deしりとり〈序〉結果発表!

始めに

皆さんこんにちは。俳句deしりとり〈序〉のお時間です。

出題の句からしりとりの要領で俳句をつくる尻二字しりとり、②に引き続きご紹介してまいりましょう!
“良き”

第6回の出題

兼題俳句

かりんとのじゃりじゃり溶ける夜釣りかな  山河穂香

兼題俳句の最後の二音「かな」の音で始まる俳句を作りましょう。

 

※「かな」という音から始まれば、平仮名・片仮名・漢字など、表記は問いません。

かなちょろは方言だという夫と子と

千暁

かなちょろの鱗ほろほろ小米雪

摂田屋 酵道

「かなちょろ」?? 愛媛では聞かない言葉ですねえ。

《摂田屋 酵道》さんの句から判断するに、なにか鱗をもった生き物だということはわかりますが……魚か爬虫類? 調べてみると、「かなちょろ」とは北海道や福島の方言で「かなへび」のことだそうです。へぇー、初めて聞いた! ちょろちょろ走るから? 方言や名付けって面白くて好き。
“ポイント”

かながしら煮付けに酒と衣被

沙魚 とと

お次は「かながしら」。

煮付けにするくらいだからきっと魚だな!? 調べたところ、ホウボウに似た魚で、名前の由来は頭の骨が硬いから。丸ごと煮付けにすると内臓も食べられるそうです。「衣被」をつるんと剥いて、酒を飲んで、かながしらの煮付けつついて。贅沢な幸せぢゃ~。
“ポイント”

沢にのどぐろ喰らふ夏座敷

みなごん

お魚つながりでこちらも。

「のどぐろ」は石川県・金沢の名物として有名なようです。名前の由来は口を覗くと喉が黒いことから。白身のトロとも呼ばれる美味な魚で、出てくる写真のどれも美味しそうなことといったら! 個人的に石川県は一度旅行に行ってみたいのです。
“良き”

神奈川も東京でしょとサングラス

帝菜

神奈川を「東京のほう」と言う狗日

ノセミコ

神奈川は生まれ市で言うあいすくりん

朝野あん

県名・都市名では「神奈川」もありましたね。

四国・愛媛の人間からするとほぼ東京みたいなイメージでおります。「生まれ市で言う」は神奈川県民の共通の生態なんでしょうか? 愛媛でも「松山です」「宇和島です」なんて出身の市で言ったりはしますけど、かの「横浜」を擁する分、さらに顕著なのかしら。神奈川県民からの情報お待ちしてます。
“良き”

かな押せばアンパンマンの声春日和

暁馬

育児中の身としてはとてもわかる。

アンパンマンの幼児用学習パソコンみたいな商品があるんですよね。あいうえおの文字と音がわかる、という。取り合わせの「春日和」に優しい目線が伺えます。疲れ切った親になるともっとエグい季語になるんですよ、ええ。(我が身を省みる)
“参った”

かな入力にしたのだれだよ夏の果

陽光

あるあるなイライラ事態。

パソコンがデスクワークの必須道具となり、同じ事態にいったいどれだけの人が毒づいたことでありましょう。いつきさんは普段かな入力なので、時々親子間でこれに直面します。

普段切り替えなんてしないから、直そうにもわからないんですよね……。ちなみに「Alt」+「ひらがな・ローマ字」キーで直るようです。覚えておこう。
“ポイント”

仮名入力カタカタ風薫る佳詩

国東町子

いつきさん曰く「慣れると一押しで一文字だからローマ字入力よりはやい」のだそうです。

「仮名」「カタカタ」「風薫る」「佳詩」と「か」の音のリフレインも楽しい。「風薫る」はそのまま「佳詩」へ係っていく言葉として読みたいなあ。浮世離れした風の匂いがする詩であってほしい。
“良き”

かなぶんの飛び来会議は踊りだす

あなうさぎ

詩ではないのですが、個人的に好きなフレーズが用いられた句。

句中の「会議は踊りだす」は音数を使いやすく調節してありますね。本来は「会議は踊る、されど進まず」と訳される言葉です。1814年9月のウィーン会議を風刺する言葉として伝えられています。

宴会や舞踏会はあるのに審議が難航し進まない状態を皮肉ったのだとか。現代でも泥沼会議ってありますよねえ、耳が痛い。それを考えれば、「かなぶん」が飛んで来て一時紛糾するくらいならまだ可愛いもの(?)。
“難しい”

かなぶんや年金支給日豆腐買ふ

のさら子

取り合わせ自体は良いのですが、音数が気になります。

全体で十八音。あと一音減らすことができれば韻律が整います。中七下五の単語は「年金支給日」「豆腐」で十一音。残る一音は助詞に使いましょう。

「年金支給日の豆腐」くらいでいかがでしょうか。買っている、食べている、あるいは落とした、などなどの想像は読者に任せてしまうのも一手です。
“ポイント”

蚊などこうこうしてこうで刺されたり

三浦にゃじろう

日常感でいえばこれも面白い。

蚊を避ける方法を得意げに解説してるのかしら。「蚊なんてなあ、こうや。こうしてこうしとったら刺されんのや」とか言ってる間に、蚊がやってきてこっそり血を吸ってたりして。なぜか関西弁で場面が再生される~(笑)。
“良き”

カナル型ばかり車内の秋静か

若山 夏巳

イヤホンには主に二つのタイプがあります。

その一つが「カナル型」。耳の奥までしっかりと装着するため、遮音性が高く、外部への音漏れが少ないのが特徴です。複数の他人の様子を観察できる「車内」となれば電車でしょうか。

車両にまばらな人影は一様に密閉されたカナル型イヤホンをつけて、自分の世界に沈んでいる。その空間の空疎さを秋が静かに満たしていることに気づくのは俳人の目線をもっている作者だけなのです。
“良き”

カナルグランデ春隣の橋の影

彩汀

こちらは海外の光景。

「カナルグランデ」はイタリア・ヴェネツィアを二分するようなS字形の大運河です。この運河には16世紀に建造されたリアルト橋を始め、四つの橋がかかっていますが句中の「橋の影」はいったいどの橋の影かなあ。

「春隣」は冬の時候の季語。冷たさの奥に温みへの期待を含んでいます。陽光と影とを行き来する運河の舟上にて感じる温度感と似合います。
“良き”

屑のたばしる町や夏真昼

赤坂 奈緒

物屋の親父は夏至を直しけり

青に桃々

床へ振るふ大鎚梅雨あがる

泉楽人

槌の音の明るし憂し暑し

ありあり

個人的な話で恐縮ですが、イタリアへの憧れがありまして。

ヴェネツィアなどの世界遺産を紹介するDVDなどを観ていると、ガラスや仮面やカメオを作る工房の映像が流れていたものです。「カナルグランデ」のあとに物作り系の句の一群を読んでいると、いい感じに脳内で労働に汗する「親父」たちの姿が想像されてたまりませんね……! 句としてもそれぞれに良いポイントがあります。

《赤坂 奈緒》さんの「金屑」という物の性質に対して、「たばしる」の一語が持つ勢い。《青に桃々》さんは「夏至を直しけり」が虚の世界とも読める独特の語り。

《泉楽人》さんの「大槌」を上から下へと振るう動きに逆らうように散る火花。《ありあり》さんは「金槌」が奏でる労働の音の三段階の表現が巧み。

最後に季語「暑し」で締める語順も確か。労働って大変だけど、美しさも伴うんだよなあ……と励まされる思いです。
“とてもいい“

縛り解けず纏い付く百合の香

九月だんご

縛りのような猿の目油照

東ゆみの

幸いにして今までの人生で「金縛り」にあったことがないのです。

怪奇小説などで読んでは恐ろしいなあ、と震えるばかりなのですが……。《九月だんご》さんの句には背筋が寒くなりますね。「纏い付く百合の香」が女性の情念を思わせて、夢枕獏先生の小説『陰陽師』の世界であります。

《東ゆみの》さんは違った意味で怖い。野生はもちろん、動物園の「猿」がじっとうずくまっている時でも、呼吸やまばたきなど微かな動きはあるはずです。その微細な動きすらしない「猿の目」なんて、恐ろしくて不穏。
“ポイント”

わない恋してキャベツ切る仕事

ミンコフスキー

わぬと知りつつ二人メロン食む

伊藤 柚良

気分を変えて甘酸っぱい二句。

と言いつつ、読みようによっては、解釈に幅も生まれ得ます。《ミンコフスキー》さんは「恋して」の一語が恋愛系の読みを明確にしますが、《伊藤 柚良》さんの句はなにが「叶わぬ」のかは読み手の想像に委ねられます。「知りつつ二人」からは、お互いの状況への理解を深めてきた重みが感じ取れます。

ひょっとしたら、病気や余命などの読みも成立するかもしれないなあ……。たとえば、もう一緒に行くことは叶わないと知りつつ旅行の計画を立てたりとか。ああ、そういう感動系ストーリーは脆くなった涙腺に悪いのだ……。
“ポイント”

引草「必ず」と言ふ夫の嘘

立石神流

「かな」の二音から「必ず」へと言葉を繋げた人は多かったのですが、こちらは変わり種。

あくまでしりとりは別の季語「鉄引草」へと繋げつつ、中七で「必ず」を登場させました。先ほどの《伊藤 柚良》さんの「叶わぬ」と同様、この「必ず」もこの単語だけではどういった約束と「嘘」があったのかは特定できません。

「必ず戻る」と約束して戦争に行き、帰らなかった夫、なんてシリアスな想像もできれば、「草引き? やっとくわ」と適当な返事をした夫が実際にはちっとも働かない、なんて悪態句の可能性だって想定できます。他の植物に半寄生するという「鉄引草」の性質を考えると、悪態の読みも捨て難いか!?
“良き”

しくて桃の甘さに溺れそう

笑笑うさぎ

次回兼題にしようか迷っていたうちの一つがこちら。

口語の軽さがナマの人間の心情を引き立たせます。他の果物だったらどうだろう、といくつか候補を考えてみたりもしたのですが、やはり「桃」は良いですね。「甘さに溺れそう」のフレーズを引き出せる果物はなかなか他に思いつきません。

傷みやすく、軽く剥けて、水気が多く、顔を濡らすほど埋めることができる果物。依存するように「桃」へと駆り立てる原因となった「悲し」さには人間くさい粘度がありそうで。
“良き”
第8回の出題として選んだのはこちら。

第8回の出題

釘に水の濁れる震災忌

内藤羊皐

独特の感覚で攻めた佳句も多かった今回ですが、あえて逆路線からチョイスしてみました。上五中七で映像をきっちり描写しています。

中七で切れを作らず「濁れる震災忌」とすることで、全ての情報を季語へと集約させていく技術も確か。 ということで、最後の二音は「いき」でございます。

しりとりで遊びながら俳句の筋肉鍛えていきましょう!
みなさんの明日の句作が楽しいものでありますように! ごきげんよう!
“とてもいい“