俳句deしりとりの結果発表

第8回 俳句deしりとり〈序〉|「いき」③

俳句deしりとり
俳句deしりとり〈序〉結果発表!

始めに

皆さんこんにちは。俳句deしりとり〈序〉のお時間です。

出題の句からしりとりの要領で俳句をつくる尻二字しりとり、②に引き続きご紹介してまいりましょう!
“良き”

第8回の出題

兼題俳句

金釘に水の濁れる震災忌  内藤羊皐

兼題俳句の最後の二音「いき」の音で始まる俳句を作りましょう。

 

※「いき」という音から始まれば、平仮名・片仮名・漢字など、表記は問いません。

生きのびてゐて流星といふ摩耗

磐田小

「生き」から始まる人たちも多かったです。その中でも上手かった句・面白かった句をいくつか。かたや生きのびる自分、かたや空を削れていく流星。単純な対比だけではなく、身を削りながら飛ぶ流星への疲れた共感、なんて自己投影する読みもありかもしれません。だとしたら現代人として泣けるくらいわかりますねえ……。削れた光跡を誰かがどこかから見て、綺麗だと思ってくれるなら少し救われる思いもありつつ。
“ポイント”

生きづらさ」あいつのライン秋旱

千鳥城

生きづらき世に一房の葡萄かな

中岡秀次

生きづらい感覚、これもわかるなあ。私が陰キャ(陰気なキャラクター・陰気な性格の人)だからなのか……? 《千鳥城》さんは遺書めくラインの文章を受け取った側の焦燥が「秋旱」と響き合います。《中岡秀次》さんは「一房の葡萄」の瑞々しさが燦然と輝きます。まだ手をつけていない「一房」の状態、さぞや立派な葡萄でありましょうねえ。これから食べる場面かなあ。ひょっとしたら葡萄を育てる人間の目線としても読めるかもしれないなあ。
“参った”

生きあぐね掬う朝の岩清水

秋野しら露

物事がうまくいかず、どうしたらいいかわからないのが「あぐねる」状態。ストレートに感情が乗っかる「生きづらさ」とはまた違った感覚の言葉ですね。途方に暮れて触れる「岩清水」の冷たさが鮮烈。掬った水の確かな感触が一掴みの生の実感として生々しい。 
“良き”

生き生きとまたさめざめと新樹の夜

加藤ゆめこ

この詩の感覚も魅力的。夜に捉える「新樹」の姿。苛烈な陽光ではなく、月の光の中で葉をそよがせる様は絵になりますねえ。どこにも「風」とか「吹く」みたいな言葉が使われていないのに、夜を吹き渡る風の存在が伝わります。最後を「の夜」としたのも手練れの技。夜という時間と空間を現出させます。
“ポイント”

生きる筋見えぬ碁盤や月の影

わおち

深刻な話かと思いきや、これは囲碁のお話でしょうか。どう頑張っても詰んでて、ここからどう挽回したらいいのやら……な場面。本人としては大真面目なんだけど、相手の長考の間待ってる側はどういう心境なんでしょうね。月影が形を変えていくくらい悩んでたりして。
“良き”

生き死にに関わる今朝のバナナがない

七瀬ゆきこ

こんなことを堂々と言い放つ神経が好き。そこまでバナナの在庫切らしてるのが大事になるか!? 句として良い悪いはおいといて、なんだか愉快で愛してしまいました(笑)。
“とてもいい“

いきいきとケアマネ繋ぐ吊し柿

細川小春

干柿がないなら作ればいいじゃない。「いきいきと」が表情を見せてくれますね。職務に前向きなだけじゃなく、かつてご実家でもやっていたのを思い出してたりするのかもしれない。
“良き”

いきいきと父亡き月日秋やそじ

井上玲子

実父、はたまた「お父さん」と呼び掛けていた旦那さんが亡くなってどれくらいたつのでしょうか。意気消沈したままではいられず、なんとか元気を絞り出している人もいれば、「さあ自由だ!」と文字通りいきいきする人もおります。色鮮やかな秋を八十路の今年も楽しんでいこ!
“ポイント”

霊となりし女や芋を炊く

山棚佳津

「生霊となりし女や」も怖いけど、下五の展開が輪をかけてこわい。怨んだり祟ったりするんじゃなく「芋を炊く」お世話をするだなんて……がっつり近くで存在しようとする思いの丈は大したモノですよ、こりゃあ。六条御息所(『源氏物語』)の話みたいに人を呪い殺さないだけマシ……なのか……?
“参った”

いきなりの愛の告白星月夜

山下こりす

いきなりの告白の先長き夜

京あられ

いきなりの告白は告ハラの冬

奈良の真

いきなりステーキならぬ、いきなり告白。語順や最終的な展開の違いはあれど「いきなりの」+「告白」で十七音中の九音が使われています。なぜ告白といえば「いきなり」なのだろう。これも類想ってやつですねえ。《山下こりす》さんの「星月夜」はストレートにロマンチックな取り合わせ。《京あられ》さんは「の先」が含みを持たせます。「長き夜」は煩悶する時間かもしれないなあ。《奈良の真》さんの「告ハラ」って単語は初めて聞きました。告白ハラスメント…ってこと!? たしかに、されて困る告白だってあるでしょうけどもねえ……会社の上司から告白されて、断ったら評価に響きそう、とかさ。断りにくい立場を利用して、みたいな。うわ~生々しい想像してしまった。気をつけよう、コンプライアンス!!
“良き”

る理由が変だ秋扇

憤る人を前にして、困惑を覚える瞬間ってありませんか。怒りのポイントがズレてるというか。聞いていて違和感を感じるんだけど、へたに疑問を差し挟むとこちらに飛び火しそうで、腫れ物をさわるように扱わざるを得ないのですよ、きっと。上品な「秋扇」をお使いになるくらいだし、品のある憤り方なのだろうけど、それがかえって厄介さを増していたりして……。
“良き”

行き先を告げず別るる茸山

伊藤 恵美

山菜採りや茸採りでは常識(?)なのかもしれません。自分だけの秘密のスポットを持っていて、それは決して他人に教えてはならない、と。山の入口か、あるいは少し入ったところで
「じゃ、ここで」
「じゃ」
なんて言葉少なにお互いの道へと別れていく場面を想像すると妙に可笑しい。
 
〈④へ続く〉
“とてもいい“