俳句deしりとりの結果発表

第10回 俳句deしりとり〈序〉|「むけ」①

俳句deしりとり
俳句deしりとり〈序〉結果発表!

始めに

皆さんこんにちは。俳句deしりとり〈序〉のお時間です。

出題の句からしりとりの要領で俳句をつくる尻二字しりとり、はじまりはじまり。
“良き”

第10回の出題

兼題俳句

意気込みは分かった先ずはレタス剥け  赤坂 奈緒

兼題俳句の最後の二音「むけ」の音で始まる俳句を作りましょう。

 

※「むけ」という音から始まれば、平仮名・片仮名・漢字など、表記は問いません。

向花五差路予鈴遮断機蝉ファイナル

殻ひな

ええ~……なにこれ、全然読めな~い……。そもそも「むけ」で始まる言葉なの?? こういう言葉に作者自身が解説をつけてくださってると、大助かりでございます。《殻ひな》さんによると「向花五差路(むけごさろ)は、鹿児島県霧島市国分にある交差点です」とのこと。おお、さすが難読地名・人名に定評のある九州地方……! 地名はわかったとして「蝉ファイナル」はやはり謎。「セミファイナル」を誤変換した? それとも最後の力を振り絞ってる「蝉ファイナル」?? うーん、わからん!
“難しい”

無毛」「増毛」地名はどっち?冬鴎

あみま

「どっち?」とな。ということは、いずれかは実在する地名なわけですね。半信半疑でそれぞれの単語+町名でweb検索したところ……おお、「増毛町」のホームページがでてきましたぞ! 増毛町は北海道北西部にある町だそうです。なるほど、それを知ると「冬鴎」が北海道らしい取り合わせ。なお、令和4年12月時点の人口は3700人あまり。町のホームページによると「歴史に『増毛』の名が登場するのは宝永3年(1706年)、松前藩藩士・下国家がマシケ領を知行したとき」とのこと。歴史ある町なのですねえ。
“良き”

むけ」じゃない「ぶけ」と読むのだ夏の草

伊沢華純

こちらもそういう地名でもあるのかな? と調べてみたものの発見できず。むしろ方言とか地域的なものなのかな? 「剥け」を「ぶけ」と読む地域があるの?? 情報お待ちしています。
“ポイント”

剥けば芳しき月色バナナかな

栗田すずさん

今回のしりとりの二音「剥け」をそのまま採用したケース。「月色バナナ」が詩の言葉として綺麗ですねえ。剥く行為、芳しく香る匂い、バナナの姿、とひとつひとつ展開される語順も効果的。いつもこんな素敵なバナナなのか、たまたま今回は良いバナナに当たったのか。バナナが食べたくなる一句であります。
“とてもいい“

剥けろ剥けて毬栗踏んでうほほほほ

ぎっくんのママ

うほっ! うほほほほ! 気分はゴリラになりたいところですが、登場するのはバナナでなく「毬栗」。栗の毬を取るために安全靴でぐりっと両サイドを踏んで剥いたりはしますけど……下五「うほほほほ」が謎。見事な栗が現われて、笑いが止まらない栗拾いの場面?? うほほ!
“ポイント”

剥けているもんじゃないのよ蜜柑って

青居 舞

剥けと差し出されし林檎いいえと吾

帝菜

聞くところによれば、世の中には蜜柑や林檎に限らず、食べ物を逐一他人に剥かせる・剥いてもらう方もいるようですね。両句からは、そんな人たちに対する冷ややかなNOが突きつけられていて大変好感を覚えますぞ。自分でやんなよそれくらい、ってね。特に《青居 舞》さんは「ご存知じゃないかもしれませんが」なんて前置き入れてたら、ますます皮肉が効きますなあ。拍手喝采!
“良き”

むけますか春愁つきのゆで卵

トウ甘藻

剥けぬ茹で卵白秋の指先

青屋黄緑

ゆで卵も日常で剥くもののひとつとして実感がありますね。なかなかうまく殻が剥がれてくれなかったり、内側の薄皮だけが残っちゃったりするのも、ゆで卵あるある。《トウ甘藻》さんの「春愁つきの」は、そんなもどかしさの一端を季語に託しているようで面白い。「むけますか」の発問も優しいような無責任なような独特の味わい。一方、《青屋黄緑》さんは感情は乗せずに指先の映像に描写を絞ります。ただの秋ではなく「白秋」が清らかな指先を思わせます。
“ポイント”

剥け始む冬の殻から嘴の先

常磐 はぜ

「嘴の先」が登場となると、こちらも卵でしょうか。雛が殻を破って産まれようとする場面ですかね。状況は推察できるけど、そうなると「剥け始む」が少し疑問。想定した状況があっているとするなら「剥け始む」というよりは「割れ始む」なんじゃないかなあ。ただの「殻」でなく「冬の殻」なのは、硬質な表面を思わせて魅力です。
“とてもいい“

剥けば赤美しき馬珂貝の足

染井つぐみ

剥けば白き果実は多し榲桲も

牛乳符鈴

剥けばなおキチキチバッタの血は青し

三尺 玉子

剥くなにかと色を組み合わせた発想。《染井つぐみ》さんの「美しき馬珂貝の足」は斧足と呼ばれる部分。貝の口から飛び出している部分だけでなく、殻を外せば根元へと続く足全体の色が見える。そのグラデーションの綺麗なこと。《牛乳符鈴》さんの見慣れない漢字は「榲桲(まるめろ)」。秋に実を付け、良い香りと甘酸っぱい味が特徴。生食で食べる以外にも、砂糖漬けやジャムに加工したりするそうです。上五中七の広く一般の真理を語る口ぶりから、手の中の季語の姿へと着地する語順が上手い。《三尺 玉子》さんは……うっ。よくみかけるキチキチバッタことショウリョウバッタ。科学の研究の尊い犠牲なのでしょうか、なにをどう剥いているのか想像するのも怖々です。そして、彼らの血は青いのか!? 実際、イカやタコなどの軟体動物や、甲殻類には青い血を持つ生物はいるようです。これら青い血は、銅を含んだヘモシアニンというタンパク質に由来するのだとか。うーむ、俳人として天晴れな観察力ではある。
“良き”

剥けた蜜柑死神傍にいる眠気

絵夢衷子

剥くという行為が終わったあとの状況。襲ってくる眠気に対して「死神」が「傍らにいる」ようだと表現する不穏さが面白い。とはいえ、本当に危機的な状況にあるのではないことは「剥けた蜜柑」から明白です。襲われる眠気に屈したとしても、せいぜい剥いた蜜柑が乾燥してパリパリになるくらいのものでありますよ。
“ポイント”

むけぬ蜜柑よめぬ木偏の漢字表

くるぽー

今まで紹介した「剥け」シリーズの句とは、少々趣が違います。剥けた剥けないの結果にはあまり関わりはなく、現在の状況を客観視して淡々と描いています。手こずって剥けない蜜柑。木偏と結びついた、読み方のわからない漢字の群れ。両者には直接の関係はありませんが、そのままならなさには相通じるものがあります。それこそが取り合わせの接点。俳句を始めたばかりで、「取り合わせ」の概念がわからない人への例としてご紹介したら、理解の一助になりそうな良句。
〈②へ続く〉
“ポイント”