写真de俳句の結果発表

第27回のお題「凍てつく大河」《ハシ坊と学ぼう!⑤》

ハシ坊

第27回のお題「凍てつく大河」

評価について

本選句欄は、以下のような評価をとっています。

「天」「地」「人」…将来、句集に載せる一句としてキープ。
「並選」…推敲することで「人」以上になる可能性がある句。
「ハシ坊」…ハシ坊くんと一緒に学ぶ。

特に「ハシ坊」の欄では、一句一句にアドバイスを付けております。それらのアドバイスは、初心者から中級者以上まで様々なレベルにわたります。自分の句の評価のみに一喜一憂せず、「ハシ坊」に取り上げられた他者の句の中にこそ、様々な学びがあることを心に留めてください。ここを丁寧に読むことで、学びが十倍になります。

「並選」については、ご自身の力で最後の推敲をしてください。どこかに「人」にランクアップできない理由があります。それを自分の力で見つけ出し、どうすればよいかを考えるそれが最も重要な学びです。

安易に添削を求めるだけでは、地力は身につきません己の頭で考える習慣をつけること。そのためにも「ハシ坊」に掲載される句を我が事として、真摯に読んでいただければと願います。

凍曇り真白大河も映へぬ橋

ポト

夏井いつき先生より
「『凍曇り=いてぐもり』と読ませて季語の格を狙う。寒い空気感、(中七の)大河の「白さ」に繋がると良い。『真白大河』と無駄を削ぎ落し洗練。『ましろ』と読ませるのは面白い。下五の歴史的仮名遣いにも合う。『も』(~だけども、雲との並列)。『映へぬ=はえぬ・ばえぬ』とも読ませる。今風を匂わせつつ、歴史的仮名遣いの堅さとのギャップを狙った。句意は『大河も雲も真っ白に凍っていて、折角の(立派な)橋もくすんでしまったよ』」と作者のコメント。

お気持ちは分かりますが、後半は説明です。
さらに、「大河も雲も真っ白に凍っている」ということが書きたいのであれば、前半も含めて、語順を一考する必要があります。
“難しい”

河凍る徒歩にて逃避脱北者

秀翁

氷面鏡羽生結弦のステージか

秀翁

夏井いつき先生より
「(一句目)北朝鮮の脱北者を想像しました。(二句目)この広い氷原で、羽生選手がスケートすれば……と想像しました」と作者のコメント。

お気持ちは分かります。
が、「脱北者」や「羽生結弦」に飛ぶよりは、ご自身がこれまでに体験したことのある「氷」「雪」などの季語の現場を思い出すところから始めましょう。
自分の体験ほど、リアリティとオリジナリティのある句材はないのです。
“ポイント”

雪原に父の跡追う薪ふたつ

ゆりず

夏井いつき先生より
「小さな男の子が、薪を運ぶ手伝いをしながら、父親の足跡を追いかけていくような様子を詠みました」と作者のコメント。

下五の「薪ふたつ」は、子が抱えているのか。「父の跡」に落ちているのか。
薪を運ぶお手伝いならば、そうだと分かるように書く必要があります。
良き

ランドセルの赤「真珠湾へ…」とラジオより

さくら茶話呼

夏井いつき先生より
「買って貰ったばかりのランドセルを枕元に置き、寝入り前に流れていたラジオで、戦争が起こるのだと子供心に感じた事を思い出しました」と作者のコメント。

書きたいことは分かります。
この内容を十七音に入れ込むのは、かなりの技術が必要です。この句材は、しばらく胸にあたためて、ひとまずは基本的な俳筋力をつけるトレーニングを、一緒に頑張っていきましょう。
“参った”

手汗かき車は走る凍結路

山下こりす

夏井いつき先生より
「スタッドレスタイヤを装着していても、凍結路を車で走る時は、緊張で「手汗」をかいてしまいます。「汗」は夏の季語ですが、敢えて「手汗」を使いました」と作者のコメント。

「車は走る」と他人事のように書くよりは、自分が緊張しつつ運転していることが分かるように書いたほうが、多少なりともリアリティがでます。
良き

クリオネよ凍てて変じるエイリアン

れいまめ

夏井いつき先生より
「流氷の天使と呼ばれる愛らしいクリオネも、氷の下では豹変してプランクトンなどに抱きついて捕食するエイリアンとなる」と作者のコメント。

書きたいことは分かるのですが、中七は説明です。
“難しい”

氷下漁絶えて五里余の楡並木

江舟

夏井いつき先生より
「かつて八郎潟(秋田県)の冬景色は、氷下の公魚網曳漁。昭和の干拓で、漁は衰退、米作も減反で不振、南北縦貫道路の楡並木は、置き土産となりました」と作者のコメント。

氷下魚漁から、並木までを十七音に押し込めるのは、無理というものです。
“参った”

川底で子を待ちわびる氷下魚かな

優花里

夏井いつき先生より
「寒い時期に、氷の下で自分の子を産む時を待つ様子は、人間が冬から春へ耐えながら待つ様子に通じるなあと思い、詠みました」と作者のコメント。

「氷下魚」という季語の説明になってしまいましたね。
“ポイント”

季節凍つ懐に息吹き育みて

遥風おんぷ

夏井いつき先生より
「大河が凍てつくほどの厳しい冬でも、いつかは春が来るように、どんなに辛い事があっても、また笑顔になれる日が来る。そろそろコロナも落ち着いて欲しいな、という願いを込めて」と作者のコメント。

お気持ちは分かります。
が、季節への思いを、あまりにも大掴みに書いてしまっているので、具体的な映像が見えてきません。
俳句は、願いを書くというよりは、映像を描写するものだと考えましょう。
良き

突き抜ける原村ブルーに霧氷映え

木のおうち

夏井いつき先生より
「冬の八ヶ岳は、厳しい寒さで大変なことも多いのですが、真っ青な空は冬の楽しみです。原村の人たちはそれを『原村ブルー』と言って自慢します」と作者のコメント。

中七の助詞「に」と、下五の動詞「映え」は不要です。
推敲してみましょう。
“難しい”

湖心に立つアイスバブルの無重力

立川猫丸

夏井いつき先生より
「『アイスバブル』とは、湖底の落ち葉などから発生するガスが、湖面にたどり着く前に水の中で凍ってしまう現象です。凍り付いた湖のど真ん中で、美しいアイスバブルの上に立ったときの、ふわふわとした浮遊感、落ち着かなさ、不安、高揚感を詠みました。『アイスバブル』は歳時記には載っていないようで、これを季語として使うか悩んだ結果の挑戦です。このように、歳時記に記載がないものは、絶対季語として使用がNGか、助言頂ければ幸いです」と作者のコメント。
 
俳人の先生方それぞれ、考え方は違いますが、私は、季節の現場がありありと描けていればよしとする立場です。
この句は、「並選」に入れることはできます。
ただ、「湖心に立つ」が、泡が水面に上がってくるようにも読めて、そのあたりの描写が不十分だと考えます。
“ポイント”

蓮葉氷ひしめく河口わが身深くに

迦楼羅(かるら)

夏井いつき先生より
「今回の兼題写真に一瞬、わが誕生の地、釧路の幣舞橋(ぬさまいばし)かと目を凝らしました。しかし川面は、全面結氷しているようで……。東ヨーロッパか北ヨーロッパの何処かでしょうか。この写真に私は強く心を動かされ……今回は、北の厳冬期に生まれた者の原風景を二句、投稿致します」と作者のコメント。

書きたい内容は推測できます。ただ、材料を詰め込み過ぎています。
前半で一句、後半でもう一句と、材料を切り分けてみましょう。
良き

凍てつきしこころを溶かす君のいて

惠納言

夏井いつき先生より
「始めたばかりで良く分からず、歳時記と乏しい想像で詠んでます。夏井先生の著書『夏井いつきの俳句ことはじめ』を三回読み返し、俳句って楽しいものだと知り、今は句会にも参加し、日々ワクワク過ごしています。〈新米が句会はしごす冬うらら〉そんな気分です」と作者のコメント。

三回読んだのはエライ!
さて、この句ですが、「凍つ」は季語ですが、比喩に使うと季語としての鮮度は落ちます。
まずは、比喩としてではなく、実景の季語として使う練習から始めましょう。
“ポイント”