俳句deしりとりの結果発表

第12回 俳句deしりとり〈序〉|「よい」③

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俳句deしりとり〈序〉結果発表!

始めに

皆さんこんにちは。俳句deしりとり〈序〉のお時間です。

出題の句からしりとりの要領で俳句をつくる尻二字しりとり、②に引き続きご紹介してまいりましょう!
“良き”

第12回の出題

兼題俳句

無欠なるおしやべりな指月今宵  板柿せっか

兼題俳句の最後の二音「よい」の音で始まる俳句を作りましょう。

 

※「よい」という音から始まれば、平仮名・片仮名・漢字など、表記は問いません。

よいよいよい踊れば右の袖重し

くるぽー

よいこらしょ幼稚園児のすすはらい

豌豆緑

ヨイコラショ立つとき気合い寒仕事

薫陶

よいしよして出世街道野老掘る

里山まさを

よいしょして鮟鱇鍋が煮えていく

もぐ

ヨイトマケ意味を調べる大晦日

すけまま

ヨイトマケ除夜に掻っこむ汁だくだく

ミンコフスキー

「よい」を呼びかけや発声として捉えた句あれこれ。《くるぽー》さんは踊りの所作とかけ声両方に読み取れます。「右の袖重し」の言い止めが静かに上手い。
《豌豆緑》さんと《薫陶》さんは同じ「よいこらしょ」なんだけど、全然年齢が違いそうなのが対比として愉快。
《里山まさを》さんと《もぐ》さんは社会人のご苦労でありますねえ。「野老掘る」は「ところほる」と読む初春の季語。ヤマノイモ科の植物で、根茎を掘り出して食べます。一緒に掘りに行ってるのか?
《すけまま》さんと《ミンコフスキー》さんは「ヨイトマケ」。建築現場や土手の地固めをする仕事に従事する女性を指した言葉ですが、元々はその際にあげられていたかけ声なのだそうです。美輪明宏さんが歌った「ヨイトマケの唄」は有名ですね。個人的には桑田佳祐さんのカバー版で初めて聴いたんですが、じんと泣かせる良い唄だったなあ。「ヨイトマケ」自体を差別用語として扱う向きもありますが、そういう歴史を調べて知るのも大事なこと。《ミンコフスキー》さんの句は「除夜」にまで働く体を支える「汁だくだく」の食事の滋味が染み渡る佳句です。
“良き”

ヨイク聴きながら鯖缶開けて春

のさら子

「ヨイク」はサーミに伝わる音楽。北方民族であるサーミは現在ではフィンランド、ノルウェー、スウェーデン、ロシアにまたがる地域に居住し、伝統のライフスタイルを現代に伝えているそうです。「鯖缶」が登場するのはノルウェーやアイスランドなど、漁獲量の多い北方からのイメージかしら。あるいは「こうしてると現地に行った記憶が蘇ってくる」みたいな作者の体験とリンクする要素なのかもなあ。缶を開ける音と感触から季語「春」へと繋がる展開も明るく気持ち良い。
“ポイント”

えびす行き交う人の笹が擦れ

井上ヘボ孔球

こちらも新年の行事であります。「えびす」は漢字で書くと「戎」。「宵戎」とは正月の九日に大阪の今宮、兵庫県の西宮などの戎神社に参詣すること。特に大阪では商売繁盛の縁日として十日戎があり、「宵戎」はその前夜祭として大いに盛上がりを見せるのだそうです。縁起物の飾りを買った人々がすれ違う音と感触が「笹が擦れ」から伝わります。

“とてもいい“

夷そろそろ職を探そうか

ときちゅら

字は違うけどこちらも「宵えびす」。人生万事上手くいってる人もいれば、そうでない人もいるわけで。商売繁盛のお祈りをして、次に見つかる職は良いものになりますように。……と、幸ある今後をお祈りする反面、「そろそろ職を探そうか」なんてのんびりつぶやきながら縁日を楽しんでる人は、そんなに切迫してもいないかもなあ~(笑)。
“ポイント”

宮の叫びや犬の瞳に火

宇野翔月

お祭り関係の言葉には「宵」から始まるものが多いみたい。「宵宮」は「夏祭」の傍題となっています。例祭の前に行われる前夜祭ですが、本来は本社以外の場所に祭られていた神霊が本社へと帰る還御祭であり、重要なものであったそうです。宗教行事としての神聖さに対してミスマッチな言葉選びが、逆に句の魅力を高めています。耳を突く「叫び」の強さ、夜の灯りを爛々と映す「犬の瞳」の映像、どちらも生臭くリアリティを発する言葉です。
“良き”

よいサンタだったかニッカちびりつつ

背番号7

これは完全に趣味枠なんですが、俳優のリーアム・ニーソンさんがめっちゃ好きなんですよ。映画『ラン・オールナイト』(2015年/ジャウム・コレット=セラ監督)で、リーアム・ニーソン演じる主人公ジミーはマフィアに長年仕えた殺し屋なんですが、今はアルコールに溺れる日々で、お酒プンプンさせながらこども達のクリスマス会にサンタ役で登場するバイトとかやってるんですね。まるでよいサンタじゃないっていう。現実でそんなことしてるやつ、いる!? いねえよなぁ!?
“ポイント”

与一射る矢は春濤を浮力とす

けーい〇

これまた半分趣味枠なんですが、とお断りしつつ。「与一」こと那須与一は『平家物語』や『源平盛衰記』に伝えられる人物です。源義経に仕え、屋島の戦いでは平氏の軍船に立てられた扇を見事射貫いた逸話が有名です。「春濤を浮力とす」の見てきたかのような語り口が魅力。荒波のすぐ上を貫いて飛ぶ、映像的なハッタリが効いてます。鏑矢の鳴る音まで思い起こされますなあ。ちなみに今回調べて初めて知ったのですが、那須与一こと那須与一宗隆は当時の那須家の十一男だったそうです。栃木県大田原市のwebサイトに「郷土の誉れ 那須与一」として資料がまとめてありました。興味ある人は見てみてたもれ。
“とてもいい“

よいお年を 祈りのすこし命令形

髙田祥聖

最後に、出題候補にしようかと最後まで悩んでいた二句をご紹介。耳に親しみ、かつシンプルな「よいお年を」というフレーズ。本来は相手の平安な年越しを祈る言葉なのでしょうが、そこに「命令形」というどこか脅迫的な響きを感じ取る《髙田祥聖》さんのひねくれ具合が愛しい。一文字分の空白が、心理的な屈折を表現するために必要なパーツとして機能しております。
“良き”

酔ひ止めを舌下に冬の星たゆたふ

ツナ好

実は今までの人生で酔い止め薬を飲んだことがありません。めちゃくちゃ乗り物酔いするのに。根性で耐えるか寝てやり過ごすのが常であります。
酔いにやられた視界には、窓の外の「冬の星」が朦朧と見えております。少しでも早く楽になってくれと願いながら口に含む「酔ひ止め」はどんな味なんだろう。舌の下からは薬効が素早く吸収されるそうです。つまり一刻も早く抑えたいほど酔いに追い詰められているということ。共感しかないですね……。自分の頭の重量すら持て余すなか、できるのはたゆたう「冬の星」を眺めることだけなのでありますよ。
“良き”
第14回の出題として選んだ句はこちら。

第14回の出題

よい年であったと捨つる鰤の

紫すみれ

非常に素直な実感があります。やれやれ、今年も一年「よい年」をやりきった、と達成感とともに捨てる「鰤の骨」。ゴミ箱へと落ちる重みが聴覚にも再生されてきます。年が明けてお正月には捌いた鰤でお雑煮したりするんでしょうかねえ。よい年の終わりを描きつつ、次の年の営みへと連綿と続いていく営み。人生ってこうやって続いていくんだよなあとしみじみいたします。

ということで、最後の二音は「ほね」でございます。

しりとりで遊びながら俳句の筋肉鍛えていきましょう!
みなさんの明日の句作が楽しいものでありますように! ごきげんよう!
 

“とてもいい“