第13回 俳句deしりとり〈序〉|「ピー」①

始めに
皆さんこんにちは。俳句deしりとり〈序〉のお時間です。
出題の句からしりとりの要領で俳句をつくる尻二字しりとり、はじまりはじまり。
出題の句からしりとりの要領で俳句をつくる尻二字しりとり、はじまりはじまり。


第13回の出題
兼題俳句
Lはこう、と少女の息やスイートピー 緑萌
兼題俳句の最後の二音「ピー」の音で始まる俳句を作りましょう。
※「ピー」という音から始まれば、平仮名・片仮名・漢字など、表記は問いません。
ぴーごろろ原因はアレ寒雀
和脩志
「ぴー」の音からどんな単語に繋げていくか。最後が長音(―)の場合、取れる単語の選択肢がかなり限定されそうですね。困った時のオノマトペ作戦は今回も威力を発揮しております。しかしなんというか……そのオノマトペ、腹具合的なやつでしょう……? 元の句の綺麗さとのギャップが身も蓋もないなあ……。
ピーヒャララお囃子軽やか春祭り
ぽんぽこぽんこ
ピーヒャララ響き渡るや村祭り
つきみつ
ピーヒャララ足腰燥ぐ夏祭り
骨の熊猫
ピーから始まるオノマトペといえば「ピーヒャララ」もありますなあ。祭のお囃子で吹き鳴らされる笛の音は多くの人がイメージできるでしょう。《ぽんぽこぽんこ》さんの「春祭り」、《つきみつ》さんの「村祭り」、《骨の熊猫》さんの「夏祭り」と、やっぱりこのオノマトペから連想されるのは祭の場面が多かろうと傾向が見えてきますね。


ピーヒャララ木の間に響き秋麗
竜酔
同じピーヒャララ仲間でも、《竜酔》さんは明確に祭という単語を使わずに仕上げているのが一枚上手。木立の密度の中を音が縦横に抜けていく空間の立体感がいいなあ。「秋麗」で木の間から見える空の青が想像されるのもグッド!


ピーヒャラや祭りの神楽賑やかに
カモミール
《カモミール》さんは「ピーヒャラや」と最後の一音を強い詠嘆へと変化させています。「ピーヒャララ」の楽しさというか、お気楽感が減るかわりに、奏でられるお囃子の音の印象は強くなりますね。


ピーヒャラピ春待つ夜のちびまるこ
朝波羽丸
♪ ピーヒャラ ピーヒャラ パッパパラパ~ ♪ といえば、いわずと知れた国民的アニメ作品『ちびまる子ちゃん』の歌『おどるポンポコリン』。絶対このネタは出てくるよなあ、と思っていたけど案の定ですねえ。調べてみると意外とOP・EDの歌は時期によって変わってるのだそうです。『おどるポンポコリン』はいろんなグループがカバーもしてるみたい。へぇー。


ぴーしゃらら巫子舞咲く秋の空
天野いく子
こちらは似て非なるオノマトペ。巫女さんの舞いに合わせて鳴る音だと思うと、「しゃらら」は身につけた飾りの触れ合う音かなあと想像させてくれます。秋のお祭りの神事かねえ。


ピーヒョロロ初春祝うトンビかな
らん
ピーヒョロロ空を眺める狐の仔
若宮 鈴音
鳶の鳴き声として形容されることの多い「ピーヒョロロ」。《らん》さんがトンビの姿を直接描いているのに対し、《若宮 鈴音》さんは地上の狐の仔との対比。鳶に捕食されないか警戒してるのかしら。ここでも、オノマトペだけを使って、音の主を明示しないテクニックが使われてますね。言わずとも伝える俳句らしい省略の仕方。


ピーと鳴く鳶の風よ春祭
miko miko
ピーと鳴くヤカンの気持ちや冬の朝
ちよ坊
ピーと鳴るヤカンの音や冬の朝
マーキ
ピーと鳴る音はいろいろ忘れ霜
砂月みれい
ピーと鳴る体操着の子春の風
恵翠
もっとストレートに「ピー」だけをオノマトペに使ったシリーズ。「ピー」の二音に続けて「と鳴く」または「と鳴る」の三音を補って五音にするのが使いやすい……んだけど、その分似た発想の句は生まれてきやすい模様。特にちよ坊さんとマーキさんは「ヤカン」「冬の朝」とかなりの要素が重なっております。
「ピーヒャラ」「ピーヒョロ」などが音によってある程度、なにが出している音か、を推測できるのに対し、「ピー」だけだと想定されるモノの幅が広すぎるのが難しくなる要因なのでしょうね。それを補うために動詞を入れたり、物の名を入れたりして具体的にした結果、類句ができてしまう、という。
「ピーヒャラ」「ピーヒョロ」などが音によってある程度、なにが出している音か、を推測できるのに対し、「ピー」だけだと想定されるモノの幅が広すぎるのが難しくなる要因なのでしょうね。それを補うために動詞を入れたり、物の名を入れたりして具体的にした結果、類句ができてしまう、という。


ピーピッと一糸乱れぬ運動会
しせき
その点「ピーピッ」は季語「運動会」と取り合わせることで、何が出している音かよくわかる好例ですね。停止を知らせる笛の号令と、ピタッと止まる行進と足音。切れのいいオノマトペが効果的です。


ぴーちくと子の懐かしき夏の果て
山光
ぴーちくぱーちくとも言ったりしますが、鳥がさえずったり人がいささかやかましく喋ったりする際に使われる言葉。やかましげに語っていますが、中七の懐かしんでる姿からすると、それも愛情の表現なのでありましょう。季語「夏の果て」の取り合わせには一長一短ありそうです。夏休みに遊びに来ていた子がようやく帰ってやれやれと息をついているようにも読めるし、はるか昔を思い返しているようにも読めます。時間の尺度がどの長さか確定仕切れないのが悩みどころ。


ピー音で何を消したか春の雷
⑦パパ
ピー音に消されし歌詞や春の闇
西村小市
ピー音の多きラジオやスーダラ忌
嶋村らぴ
最近はバラエティ番組でも聞く頻度が減ってきた気がする「ピー音」。ある種下世話なワードではあるのですが、描き方によっては社会詠ぽい格調が生まれるのが興味深いですね。「スーダラ忌」は、いつきさんが『俳句αあるふぁ』誌上で連載していた「発掘忌日季語辞典」で出題された新季語提案から。俳諧味があって軽やか。
〈②へ続く〉

