始めに
皆さんこんにちは。俳句deしりとり〈序〉のお時間です。
出題の句からしりとりの要領で俳句をつくる尻二字しりとり、②に引き続きご紹介してまいりましょう!
第13回の出題
兼題俳句
Lはこう、と少女の息やスイートピー 緑萌
兼題俳句の最後の二音「ピー」の音で始まる俳句を作りましょう。
※「ピー」という音から始まれば、平仮名・片仮名・漢字など、表記は問いません。
兼題俳句
Lはこう、と少女の息やスイートピー 緑萌
兼題俳句の最後の二音「ピー」の音で始まる俳句を作りましょう。
※「ピー」という音から始まれば、平仮名・片仮名・漢字など、表記は問いません。
「peaceful(平和な)」、いい言葉ですねえ。常にこうありたいものです。「レモンティー」は季語「ホットドリンクス」の季感として読みました。二人の間に立ち上る芳香が可視化されるかのような午後の時間。
煙草の銘柄にも「ピース」はありましたね。缶にどかっと入った「ピース缶」は香りがしっかり封じ込められ、ファンから愛好されるそうです。かなり古くからある商品だけに、並ぶ句も過去の時代を彷彿とさせる内容になっていますね。《藤井かすみ》そうさんの「褞袍」、《小川さゆみ》さんの「墓参り」はちゃんと季語として機能しているけど、《竹庵》さんの句は季語らしきものが見当たりません。時代感覚みたいなものは見えるんですけどねえ、惜しい!
ピーカン照りなんて言いますよね。少なくとも、僕がこどもの頃の愛媛では使われておりました。強烈にお日様が照る晴れた日を指していましたが、どれくらいの世代まで通じる言葉なのかなあ。いわゆる俗語なのですが、その語源には諸説あるらしく、そのうちの一説として先述の「ピース缶」が由来である、という説もあるそうです。へぇー。
土壌作りに使われる「ピートモス」。ガーデニングや家庭菜園を楽しむ人にはなじみ深いかもしれません。泥炭化したミズゴケなどを砕いたもので、ふわふわの軽い土は触ると気持ちいいですね。土のphを酸性に傾けるほか、土の保水力を上げたり肥料を保持したり、様々な効果があります。《寒芍薬》さんの「水含ませる」も、《みずな》さんの「ほぐし入れ」も手ずから行う作業のリアリティがありますね。やっぱり体験は強いなあ。
耳慣れない単語だけど「ピーアム」ってなに? なんと調べてみるとタイで「金縛り」を指す言葉であり、直訳すると「覆い被さる霊」なのだそうです。こ、こわぁ~……。しかも「テント」ってことは、登山か旅か、屋外での出来事でしょう? こわすぎる!
お口直しに身近な素材を。触れて体感できる季語にはまず触ってみる! 実体験で描かれる「ピーマン」の描写がいずれも魅力的です。《城ヶ崎文椛》さんは次々に割っていく手際が鮮やか。《玉響雷子》さんはこぼれた種の散らばる様子。ピーマンの小さな白い種、なんだか妙に賑やかなんですよね。《ガラパゴス》さんは同じものを見ても感じ方がガラッと変わって興味深い。散らばる前は身を寄せ合ってる種たち。これから掻き出されていくのよ、君たち……。
描写とは少し違った角度の「ピーマン」も。ピーマンの肉詰めを描こうとした句もけっこう多かったのですが、《平本魚水》さんの描き方は口語が印象的。ピーマン側からすると空虚もなにも、って感じかもしれないのに、そこに善意をごり押すように詰めていく詩的エゴが魅力。《鰯山陽大》さんは果敢な季重なりですが、主たる季語はピーマンと読んでいいでしょう。単純な取り合わせと読んでしまうと弱いですが、「新涼の心臓」がピーマンの姿そのものへの比喩だと読むと魅力が増幅されてきます。刃をいれたら軽く割れていく感触を繊細に捉えた秀句。
とても稀少な漢字での「ピー」シリーズ。中国料理の加工卵、皮蛋(ピータン)です。個人的には今までの人生ではほとんど食べたことないのですが、句に描かれると妙に魅力的に見えてくるからすごいなあ。家鴨の卵の殻に灰や泥などを混ぜたものを塗って作るんですね、皮蛋って。だから《山音湖七》さんの句のように洗い落とす必要があるのか、なるほどなあ。可食部分は黒と緑の印象が強かったのですが、たしかによく観察すると透き通った卵白部分は厚みによって色を変化させますね。《もりたきみ》さんの小さく刻まれた欠片が見えてくる描写もきらきらと美味しそう。
ピーコックは孔雀のこと。「ピーコックグリーン」は文字通り、孔雀の羽色を思わせる鮮やかな青緑色です。生き物の名が入ることによって、求愛で羽を広げる孔雀の荘厳な威圧感も単語の奥に潜んでいるようであります。色見本を片手に句を鑑賞するとまた鮮やかで良いですねえ。《碧西里》さんにとっての「はるうれひ」はこの色の感触なのかあ、と句の解像度が上がります。本来は形や色彩を持たない「はるうれひ」という概念に強引に色を与えてしまう、そんなやり方も詩を生み出すテクニックでありますね。
物体としてアルファベットのPを捉える視点が面白い一句。たしかにぽっかり空いた「P」の丸い空白はなんだか気になる存在です。「空洞」「淡雪」と重ねられた単語もどこか寂しげな印象。かといって作者の感情へと強く寄せていくのではなく、淡々と「淡雪とほる」と描写することによって、読み手に楽しんでもらうべき感情の余白を残してくれているのが上手い。冬の強い雪ではなく、春の「淡雪」の儚さが活きてます。
第15回の出題
ピーマンハウスを春のざらざらしたラジオ
だいやま
労働環境としての実感がとても強い一句です。個人的な体験で恐縮ですが、農業高校生だったもんですからビニールハウスの内側の空気感とか嫌というほど伝わってくるんですよねえ。土の匂い、作物の放つ呼気と湿度、ビニールを通り抜けてくる陽光の感触。そんな雑多な感触に満ちるビニールハウスの内側には毎日「ラジオ」がかかりっぱなしなのです。長年使い続けてるざらざらした音のラジオが。この上なくリアルな労働の現場証明。
ということで、最後の二音は「じお」でございます。
しりとりで遊びながら俳句の筋肉鍛えていきましょう!
みなさんの明日の句作が楽しいものでありますように! ごきげんよう!