写真de俳句の結果発表

第31回「恩田川のカワセミ」《ハシ坊と学ぼう!①》

ハシ坊

恩田川のカワセミ

評価について

本選句欄は、以下のような評価をとっています。

「天」「地」「人」…将来、句集に載せる一句としてキープ。
「並選」…推敲することで「人」以上になる可能性がある句。
「ハシ坊」…ハシ坊くんと一緒に学ぶ。

特に「ハシ坊」の欄では、一句一句にアドバイスを付けております。それらのアドバイスは、初心者から中級者以上まで様々なレベルにわたります。自分の句の評価のみに一喜一憂せず、「ハシ坊」に取り上げられた他者の句の中にこそ、様々な学びがあることを心に留めてください。ここを丁寧に読むことで、学びが十倍になります。

「並選」については、ご自身の力で最後の推敲をしてください。どこかに「人」にランクアップできない理由があります。それを自分の力で見つけ出し、どうすればよいかを考えるそれが最も重要な学びです。

安易に添削を求めるだけでは、地力は身につきません己の頭で考える習慣をつけること。そのためにも「ハシ坊」に掲載される句を我が事として、真摯に読んでいただければと願います。

ハシボウと学ぼう

横浜市青葉区恩田川で撮影しました。ここは、いつ行ってもカワセミが見られます。写真に写っているのは、たぶん、まだヒナに近い個体だと思います。

星埜黴円

季語なし

とり逃がす初観察に指ふるう

ぺこ

夏井いつき先生より
「初めてカワセミを見つけ、カメラを構えましたが、興奮してブレブレで、上手く撮れませんでした」と作者のコメント。
 
俳句のほうには、季語らしきものがないなあ……。
“参った”

季語なし

8Kは嫌いとひすい風に跳ぶ

竹庵

夏井いつき先生より
「翡翠」を「ひすい」と読めば宝石となります。
“参った”

季語なし

無風なり翡翠の湖のエメラルド

大山和水

夏井いつき先生より
「読みは〈むふうなりひすいのみずのえめらるど〉でお願いします」と作者のコメント。
 
「翡翠」を「ひすい」と読ませるとなれば、どれが季語になるのかなあ。
“参った”

季語なし

釣果なし小枝で揺れる翡翠色

瑞風

夏井いつき先生より
「翡翠色」となると、色の種類であって、季語ではないということになります。
“参った”

季語なし

病院の額のかわせみ鮮やかに

小林葛花

夏井いつき先生より
「額」の中の絵? 写真? だとすると、この「かわせみ」は季語としての力が弱くなります。
“参った”

季語なし

「やまなし」のかわせみを読む六年生

稚草

夏井いつき先生より
「六年生の国語教科書に宮沢賢治の『やまなし』が出ています。その教材を読み深めるときに、かわせみは重要な役割を持ちます。あの、しっとりと考え、賢治の世界観を読み深める子どもたちの姿を詠みました」と作者のコメント。
 
うーむ、この「かわせみ」を季語とすることには無理があります。
“参った”

季語なし

息ひそめ魚影を待つやひすいの眼

瞳杏

夏井いつき先生より
上五中七、描写しようとしているのはよいのですが、「ひすいの眼」で、季語「翡翠」だとするのは、ちょっと強引ではないかと。
“参った”

季語なし

パレットに翡翠色とせせらぎと

夢追い人

夏井いつき先生より
「川辺りでスケッチしていたら翡翠が枝にとまり、あまりの綺麗さにパレットにその色をだそうと絵の具を載せると同時に、せせらぎの音で慌てなくていいよと、自分に言いきかせ、非日常の幸せを詠みました」と作者のコメント。
 
やりたいことは分かるのですが、「翡翠色」では季語になりませんし、「せせらぎ」はそもそも季語ではありません。
“難しい”

季語なし

この指に母の温もり翡翠かな

夢追い人

夏井いつき先生より
「母が気にいってた形見の翡翠の指輪をつけると、母との想い出が蘇ります」と作者のコメント。
 
「翡翠(かわせみ)」は季語ですが、「翡翠(ひすい)」は季語ではありませんね。
“難しい”

季語なし

おかわりに応える私親鳥か

春瑛

夏井いつき先生より
「まるで雛鳥のように好物のバナナを催促する赤ちゃんに、せっせと潰したバナナを食べさせる私は親鳥のようだと思い、詠んだ句です」と作者のコメント。
 
気持ちは分かりますが、この「親鳥」も比喩なので、季語としての力は弱いですね。
“参った”

季語なし

風やわら飛ぶ宝石はエメラルド

飯島寛堂

夏井いつき先生より
この表現で「翡翠」を想像させるというのは、ちょっと無理があります。やはり、「翡翠」という季語は入れる必要があります。
“参った”

季語なし

ヒスイ色母の数珠手に通夜の席

閑陽

夏井いつき先生より
明確な季語がありません。
“参った”

季語なし

かたりべや誰に聞かせる枝の鳥

アギト

夏井いつき先生より
「この辺りの川辺の事を一番知ってて誰彼なく話してるのは、枝にとまっている川辺の鳥である川蝉ではないか」と作者のコメント。
 
やろうとしていることは分かるのですが、明確な季語がありません。
“難しい”

季語なし

急降下魚めがけて水しぶき

みゅうみゅう

夏井いつき先生より
たぶん、翡翠の様子を描いたのだろうと思いますが、明確な季語がありません。
“ポイント”

季語なし

おでかけはかわせみ色のワンピース

つる

夏井いつき先生より
「かわせみ色」だと季語にはなりません。明確な季語が欲しいですね。
“ポイント”

季語なし

せせらぎの羽音の勝利青き鳥

てんよう

夏井いつき先生より
「せせらぎ」も「青き鳥」も季語ではありません。まずは、季語を一つ、入れましょう。
“難しい”

季語なし

貴船川床深碧にあお揺らぎたる

立川猫丸

夏井いつき先生より
「翡翠の色・川・清涼感から京都・貴船の川床に発想を飛ばし、色の情報だけに着目してみました。貴船の川床で見た一面深い緑の光景の中にも、木々や畳に差す光や川の水の揺らぎといった多くの『あお』色があり、その中には翡翠がかすかに動く揺らぎもあったかもしれないな、と思ったところです。『貴船川床』を下五に置くか迷いましたが、今回は一物仕立て+句末体言止めに初挑戦。毎回何か新しいチャレンジする投句をしていきたいと思っています」と作者のコメント。
 
季語はどれに当たるのでしょう。
「毎回何か新しいチャレンジ」することよりも、まずは基本を反復練習するところから、俳筋力をつけていくことをお勧めします。
“ポイント”