第31回「恩田川のカワセミ」《ハシ坊と学ぼう!⑥》
評価について
本選句欄は、以下のような評価をとっています。
「並選」…推敲することで「人」以上になる可能性がある句。
「ハシ坊」…ハシ坊くんと一緒に学ぶ。
特に「ハシ坊」の欄では、一句一句にアドバイスを付けております。それらのアドバイスは、初心者から中級者以上まで様々なレベルにわたります。自分の句の評価のみに一喜一憂せず、「ハシ坊」に取り上げられた他者の句の中にこそ、様々な学びがあることを心に留めてください。ここを丁寧に読むことで、学びが十倍になります。
「並選」については、ご自身の力で最後の推敲をしてください。どこかに「人」にランクアップできない理由があります。それを自分の力で見つけ出し、どうすればよいかを考える。それが最も重要な学びです。
安易に添削を求めるだけでは、地力は身につきません。己の頭で考える習慣をつけること。そのためにも「ハシ坊」に掲載される句を我が事として、真摯に読んでいただければと願います。
翡翠のショーのごとくに魚捕る
森中ことり
どんな様子が「ショーのごとく」と感じられたのか、その映像を描写しましょう。


翡翠色の目や花冷のマウンド
青に桃々
添削例
花冷のマウンド翡翠色の目よ


かはせみは背中だけ見せる忍者鳥
まさし
翡翠の目立ちたがり屋そのケバサ
まさし
二句ともに、下五を再考して下さい。下五で、結論を述べるような構成になっています。俳句は、映像ですよ。


翡翠や賞金女王誕生す
陽光
取り合わせの接点が読み取り難いかなあ……。


右耳のさかなの名残水草生ふ
天陽ゆう
とても面白いと思います。「耳」に「魚の名残」があるという感覚。「水草生ふ」との取り合わせもよいです。なぜ「右」と限定するのか。そこが、ちょっと分からない……。


薄羽織打音の碧き歩行器と
大西どもは
「母のカワセミ色の羽織から発想を飛ばしました。歩行器は床を打つ音がします。家の何処にいてもその音が聞こえると、今日は母さん、まずまず動けてるのかなと。そんなとき母は大抵その薄羽織を肩に掛けてました」と作者のコメント。


求婚を葉桜見とれ聞き逃す
萩 直女
添削例
葉桜に見惚れ求婚ききのがす


翡翠や曲るストロー守る川
トウ甘藻
「子供の頃、曲るストローを初めて使った時は、嬉しくてワクワクしました。曲る機能により、寝たきりの人も水分を取りやすくなったそうです。いい事づくめの曲るストローが、プラスチックごみとして川や海に捨てられ、環境問題になり、紙の曲がらないストローも増えてきました。 今後どうなるのかわかりませんが、植物由来の曲がる物が開発されたそうで、環境にも良さそうです」と作者のコメント。


夏の野の更地に変わり不思議消え
夏雲ブン太


直火の宴跡山清水の朝
不二自然
「直火の宴跡」とは、キャンプの焚火? ちょっと表現に無理があります。


リメイクでかわせみのごと友の服
見和子
季語を比喩として使うと、季語としての鮮度は落ちます。


かはせみや(青緑)みどりの矢と化し川面さす
井上玲子
「(青緑)」の部分は、どういう意図だろう?


瑠璃色のカワセミいっ瞬水清し
英曙


翡翠を追いる三人忍び足
きべし


満開もメジロも見たし揺らす花
おっとっと
こんな感慨を抱くことには共感します。勿論、「花」も「目白」も季語ですが、桜にやってくる目白を詠みたいと思う気持ちも分かります。
「待ちに待った満開の桜を愛でていると、そこへメジロ」、まずはここまでで一句になります。さらに「ついばみ、せっかくの花をポタポタと落とし」、ここももう一句になります。十七音の器に盛れる量が分かってくると、細部を観察する習慣も身についてきます。


悪しき人翡翠のごと仕止めたし
うっとりめいちゃん
季語を比喩として使うと、季語の鮮度は落ちます。

