写真de俳句の結果発表

第31回「恩田川のカワセミ」《ハシ坊と学ぼう!⑤》

ハシ坊

恩田川のカワセミ

評価について

本選句欄は、以下のような評価をとっています。

「天」「地」「人」…将来、句集に載せる一句としてキープ。
「並選」…推敲することで「人」以上になる可能性がある句。
「ハシ坊」…ハシ坊くんと一緒に学ぶ。

特に「ハシ坊」の欄では、一句一句にアドバイスを付けております。それらのアドバイスは、初心者から中級者以上まで様々なレベルにわたります。自分の句の評価のみに一喜一憂せず、「ハシ坊」に取り上げられた他者の句の中にこそ、様々な学びがあることを心に留めてください。ここを丁寧に読むことで、学びが十倍になります。

「並選」については、ご自身の力で最後の推敲をしてください。どこかに「人」にランクアップできない理由があります。それを自分の力で見つけ出し、どうすればよいかを考えるそれが最も重要な学びです。

安易に添削を求めるだけでは、地力は身につきません己の頭で考える習慣をつけること。そのためにも「ハシ坊」に掲載される句を我が事として、真摯に読んでいただければと願います。

干潟にて陽気な鳥や舞踏会

ハイビスカス

夏井いつき先生より
「去年(2022年)、潮干狩りの所を主人と散歩。鳥達がたくさん集まって楽しそうでした。平和の大切さを実感しました」と作者のコメント。
 
下五「舞踏会」という比喩に甘えず、描写する練習を重ねましょう。
“ポイント”

巣立鳥子はルンルンと母涙

とぜん

夏井いつき先生より
中七下五がちょっと説明だなあ……。
“難しい”

一瞬の翡翠枠に森香る

扇百合子

夏井いつき先生より
「枠」の意味が読み解きづらいです。
“難しい”

カワセミに母の名付けて会いに行く

中山白蘭

夏井いつき先生より
発想はよいです。「カワセミ」の片仮名書きは損だなあ。
“難しい”

入選のカフェラテ甘し春日和

中山白蘭

夏井いつき先生より
「今年(2023年)は『NHK全国俳句大会』に入選したので、その気持ちを詠みました」と作者のコメント。
 
この語順だと、「カフェラテ」が入選したような印象になります。

添削例
入選の春よカフェラテ甘くして
“ポイント”

翡翠や川面飛び交いショータイム

清波

夏井いつき先生より
「二羽の翡翠が、川に垂れ下がった木の枝からあちこちに飛ぶ姿が、ショーを見せているかのようでした」と作者のコメント。
 
「ショータイム」という言葉に甘えず、丁寧に描写しましょう。作者のコメント「二羽」であることや、「川に垂れさがった枝」など、ちゃんと観察しています。二句ぐらいにはなりそうですよ。
“ポイント”

翡翠の鼓動や真菜板の指へ

山河深秋

夏井いつき先生より
「獲物を狙う鋭い目の翡翠の鼓動と、まさに魚をさばこうとしている、包丁を持つ手の指先の緊張感がマッチすると思い、この情景を発想しました。なお『真名板』はあて字ということであり、本来は『真菜板』が正しいという事です」と作者のコメント。
 
前半はよいのですが、後半「真菜板の指へ」が分かりにくいかなあ。場面が急に飛ぶので、ついていき難い感じです。
“参った”

水馬烏の行水零点五秒

よだ きん坊

夏井いつき先生より
「水馬(あめんぼう)が餌にならないように、水面をさっと飛び出る様です」と作者のコメント。
 
目の付け所はよいです。「烏の行水」という言葉に頼るのではなく、その様子を描写しましょう。
 
“参った”

初燕今年もここで糞対策

よだ きん坊

夏井いつき先生より
「車庫に出入りする燕を見ると、糞対策を早急にします。そうしないと、巣の真下の車が大変なことになります」と作者のコメント。
 
季語「燕」の糞対策を描く句はかなりあります。作者コメントにある「車庫」という場所を描くと、映像が見えてきますよ。
良き

水面で翡翠意表裏の顔

沙魚 とと

夏井いつき先生より
助詞「で」、この場合は散文的な使い方になります。「水面」という場所は書かず、むしろ「翡翠」の動きや表情を描写したほうがよさそうです。
“難しい”

飛び込みは置きピン翡翠の妙技

前世ニャン子

夏井いつき先生より
「翡翠の早業を撮るためのテクニックです。自分では撮ったことありませんが、写真教室で習いました」と作者のコメント。
 
写真用語? に精通している人には伝わる句なのかなあ……。
“参った”

担任は我が子の式に四月かな

牡丹

夏井いつき先生より
「入学式欠席の先生が多数。時代は変わったなあと思います」と作者のコメント。
 
俳句だけでは、そこまで意味が読み取れないなあ……。
“参った”

花曇和紙のツキヨミ凛として

音羽ナイル

夏井いつき先生より
下五「凛として」は要一考。描写ですよ、俳句は。
“ポイント”

翡翠や透きとおる羹切るごとく

菜活

夏井いつき先生より
「夏の京菓子で、上半分が透明の綺麗な羊羹を思い出してしまいました。こういうのを取り合わせというのかな??? と思い、最初は下五『切り分ける』としていたのですが、投句直前に『切るごとく』と比喩表現に変更しました。どちらがよかったのでしょうか」と作者のコメント。
 
比喩になっているのですが、「翡翠」が水に入る様子の比喩でしょうか? そのあたりが分かりにくいです。
“参った”

地に燃ゆる火のやうな死や赤翡翠

ゆきまま

夏井いつき先生より
「数年前、駐車場のアスファルトの上で赤翡翠(アカショウビン)を見つけました。遠目にもそれは鮮やかに赤く、そして思っていたよりずっと大きくて。全身の朱色と、ことさらに紅い大きなくちばしに見入ってしまいました。建物のガラスに激突したようでした。ガラスに映った空のせいで、こんな美しいものが死んでしまったのかと、なんとも言えない気持ちになりました」と作者のコメント。
 

「火のやうな死」はよいと思います。上五が、言い過ぎ。ガラスに激突したのならば、それが分かるような描写があれば、人選になりそうな素材です。

“ポイント”

魅了する翡翠の啼き声次を待つ

銀幕なり

夏井いつき先生より
上五「魅了する」は説明です。「翡翠」の鳴き声を描写する、あるいはそこがどんな場所かを描写することを考えてみましょう。
“ポイント”