写真de俳句の結果発表

第31回「恩田川のカワセミ」《ハシ坊と学ぼう!⑧》

ハシ坊

恩田川のカワセミ

評価について

本選句欄は、以下のような評価をとっています。

「天」「地」「人」…将来、句集に載せる一句としてキープ。
「並選」…推敲することで「人」以上になる可能性がある句。
「ハシ坊」…ハシ坊くんと一緒に学ぶ。

特に「ハシ坊」の欄では、一句一句にアドバイスを付けております。それらのアドバイスは、初心者から中級者以上まで様々なレベルにわたります。自分の句の評価のみに一喜一憂せず、「ハシ坊」に取り上げられた他者の句の中にこそ、様々な学びがあることを心に留めてください。ここを丁寧に読むことで、学びが十倍になります。

「並選」については、ご自身の力で最後の推敲をしてください。どこかに「人」にランクアップできない理由があります。それを自分の力で見つけ出し、どうすればよいかを考えるそれが最も重要な学びです。

安易に添削を求めるだけでは、地力は身につきません己の頭で考える習慣をつけること。そのためにも「ハシ坊」に掲載される句を我が事として、真摯に読んでいただければと願います。

翡翠や花散る後の恩田川

白木蓮

夏井いつき先生より
「最近、俳句を一句詠むごとに、句を詠む楽しみが増していますが、逆に、『ド素人』の度合いが増していくように思えてきます。『外出ができない』『文字が読めない、書けない』等、悲観的なできごとが増えていますが、俳句により季語の世界を知る喜び、楽しみ等、これまで経験したことのない世界に侵入しています」と作者のコメント。
 
知らなかったことを沢山知る。それもまた楽しみです。
この句は、「花散る後」に季語の残像があるというか……それぐらい「花=桜」という季語の力は強いので、中七を再度考えてみましょう。
“ポイント”

下萌て学び舎巣立つ日の近く

庭野利休梅

夏井いつき先生より
第29回『オオイヌノフグリと小さなアブ』で投句した〈下萌や卒業の日の近づいて〉を、《ハシ坊と学ぼう!⑨》に取り上げていただき嬉しかったです。先生からは、『二つの季語の強弱をつけようと意図している点は、評価します。ただ、中七下五のフレーズには既視感があるので、いっそ「卒業」という言葉を使わないで、それを伝える、というワンランク上を狙ってみてはどうでしょう』とのコメントをいただきました」と作者のコメント。
 
こんなふうに自問自答を重ねることが、俳筋力のトレーニングです。このように、前回の句がどんなものであったか、書き添えておいてくれると有り難いです。
この句に関していうと、「下萌」という季語を選んだのはよいと思いますが、「学び舎巣立つ」に常套句の匂いがちょっとするなあ……。
“ポイント”

翡翠よ空と小麦の色よ征け

杜若友哉

夏井いつき先生より
「小麦の色よ」とは、麦畑のことですか? そのあたりが分かりにくいです。
“難しい”

春近し施設にぎやか名はメンコ

るはちか

夏井いつき先生より
「今は亡き母が通所していたデイサービスに、インコがやって来て、皆が寄ってたかって争奪戦の模様を楽しげに話してくれていたのを思い出しました。名前がユニークで大笑いしました」と作者のコメント。
 
メンコ? インコ? 俳句だけだと、施設の名前が「メンコ」だと読めますが……。
“難しい”

恐竜に色覚ありて翡翠へ

あおぎりみさ

夏井いつき先生より
やろうとしていることはぼんやりと分かりはしますが、ちょっと強引すぎるかな。
“難しい”

翡翠や指パッチンの間をよぎる

踏轍

夏井いつき先生より
「指パッチンの間をよぎる」とは、瞬間的なニュアンスですか? そのあたりが読み取りにくいです。
良き

千切れ独活ロケット花火や獣道

暑寒りんご

夏井いつき先生より
「毎年行く独活(うど)採りの場所に、熊が滑った跡や食べた跡があり、再度花火でお知らせ? しました」と作者のコメント。
 
これは、作者コメントを読まないと、どういう状況なのか、分かりませんでした。
“難しい”

翡翠の急下降空へ舞う

夏井いつき先生より
「翡翠の、獲物を狙う一瞬の行動を詠もうと思いました」と作者のコメント。
 
翡翠の一瞬の行動……というには、切り取った時間が長すぎます。急降下の様子だけで、まずは一句に切り取る練習からやってみましょう。
“ポイント”

目力に秘めたる決意翡翠鳴く

牛乳符鈴

夏井いつき先生より
こちらは、中七が要一考です。
良き

川蝉や恩田川沿い何おもふ

牛乳符鈴

夏井いつき先生より
下五「何おもふ」は要一考。どんな様子を見たので、そんな感想を抱いたのですか。
良き

書を曝す顔面神経麻痺6日

もりのもりす

夏井いつき先生より
「6日」を「六日」とすれば、人選です。
“ポイント”

青あをの雌の朝日の翡翠や

美湖

夏井いつき先生より
「鳥類は雄の方が美しい羽を持つ事が多いのですが、翡翠は雌も美しい事を知りました」と作者のコメント。
 
下五「や」の着地は、バランスが取りにくく、難しい型です。語順を再考してみましょう。
“ポイント”

雪の果犬ばしり刺す縞の羽

北国はな

夏井いつき先生より
第29回「オオイヌフグリと小さなアブ」《ハシ坊と学ぼう!⑩》では、コメントをいただきありがとうございました。北の春の様子を具体的に映像にしたいと散歩していたら、犬ばしりに羽がありました。おそらく窓にあたって死んだ鳥が残したものかと思うのですが……まだ植物の芽があまり出ていないので、こちらを投句することにしました。前より前進しているでしょうか?」と作者のコメント。
 
表現しようとしている内容はよいのです。「刺す」が分かりにくいかな。「前より前進しているでしょうか?」との問いかけ。前の句を、書いてくれてると有難いです。
“ポイント”

翡翠飛んで娘も飛んで海を越え

道見りつこ

夏井いつき先生より
「娘があっという間に入籍して、異国へ行ってしまいました」と作者のコメント。
 
俳句としては、「翡翠」よりも「娘」が主役になっている感がありますが、作者の人生の記録として、こんな句もあってよいと思います。書き留めておきましょう。
“ポイント”

蝉生る一夜貸したる傘の下

常磐はぜ

夏井いつき先生より
第23回「カメラと夕焼け」で並選だった句を再考したものです。〈一夜貸す傘空蝉となれるやう〉が原句です。夜に、子どもと羽化しそうな蝉を見つけ、雨が降りそうだったので傘をかけてあげたことを句にしました。朝、傘の下の空蝉を子どもと発見し喜んだことが忘れられません。材料が多いでしょうか、それとも類想類句でしょうか」と作者のコメント。
 
原句も含めて、さらなるワンランクアップを目指すのであれば、「一夜貸す」「貸したる」と、ここに擬人っぽい措辞を使わず、「蝉」を描写することに徹することをお勧めします。
“ポイント”