写真de俳句の結果発表

第36回「廃遊園地」《天》

評価について

本選句欄は、以下のような評価をとっています。

「天」「地」「人」…将来、句集に載せる一句としてキープ。
「並選」…推敲することで「人」以上になる可能性がある句。
「ハシ坊」…ハシ坊くんと一緒に学ぶ。

特に「ハシ坊」の欄では、一句一句にアドバイスを付けております。それらのアドバイスは、初心者から中級者以上まで様々なレベルにわたります。自分の句の評価のみに一喜一憂せず、「ハシ坊」に取り上げられた他者の句の中にこそ、様々な学びがあることを心に留めてください。ここを丁寧に読むことで、学びが十倍になります。

「並選」については、ご自身の力で最後の推敲をしてください。どこかに「人」にランクアップできない理由があります。それを自分の力で見つけ出し、どうすればよいかを考えるそれが最も重要な学びです。

安易に添削を求めるだけでは、地力は身につきません己の頭で考える習慣をつけること。そのためにも「ハシ坊」に掲載される句を我が事として、真摯に読んでいただければと願います。

廃遊園地

36

 

凶年やづをんと観覧車落ちた

津々うらら

 

いきなり「凶年や」から入る上五も挑戦的ですが、中七下五のフレーズも大胆です。

今、手元にある講談社『カラー版 新日本大歳時記』には、「凶作」という季語は載っていますが、「凶年」はありません。ちなみに、「豊年」は載っていて、傍題に「豊の秋」「出来秋」「豊作」があります。

では、この句の「凶年」をどう受けとるべきか。単語としての意味は、二つあります。(『精選版 日本国語大辞典』より)
 ① 農作物のできが非常に悪い年。不作の年。飢饉年(ききんどし)。
 ② 不幸なできごとのあった年。災難の多い年。

①ならば季語のニュアンスになりますが、この句の場合は①と②、二つの意味を併せ持つ言葉として解釈すべきと受けとめました。つまり、季語のニュアンスを含みつつも、無季の句として表現しているのではないかと。

今年は農作物の出来も悪く、次から次へと不幸な出来事や災害が続いたことだよ、という上五の詠嘆から始まる一句。まだまだ悪いことが続きそうな予感がするよ。その証拠に、近くのあの観覧車がいきなり落ちたよ。地を揺するような「づをん」という不吉な音を立てて。

「観覧車」は、ちょうど五音なので、「無人駅」「秘密基地」などのように下五に置くと成立しやすい、使いやすい言葉です。その分、ありがちな句になってしまうのですが、そんな言葉を使って、今まで見たこともないような作品に昇華させたのは大したものです。

上五「や」は文語、下五「落ちた」は口語と、文体は入り混じっていますが、内容と文体を考慮した上での工夫であることは、一目瞭然。この判断も的確です。

「凡人ワード『観覧車』に挑戦しました。私は、凡人ど真ん中なので、いままで凡人ワードを使うことをできるだけ避けていましたが、凡人ワードでも、類想から脱出できるよう俳筋力を鍛えていきたいです」とは作者ご自身の弁。この覚悟が、寓意を内包した作品として見事に結球しました。

“夏井いつき”