俳句deしりとりの結果発表

第20回 俳句deしりとり〈序〉|「んす」①

俳句deしりとり
俳句deしりとり〈序〉結果発表!

始めに

皆さんこんにちは。俳句deしりとり〈序〉のお時間です。

出題の句からしりとりの要領で俳句をつくる尻二字しりとり、はじまりはじまり。
“良き”

第20回の出題

兼題俳句

寄箸のをとこと別れラ・フランス  赤坂 みずか

兼題俳句の最後の二音「んす」の音で始まる俳句を作りましょう。

 

※「んす」という音から始まれば、平仮名・片仮名・漢字など、表記は問いません。

んす」なんて言葉ござらんいわし雲

あつ乃

んす」なんて言葉ないよね夏の空

原島ちび助

んす」はないどこにもないよましら酒

くさもち

ンス」なんてググってもむり落花生

みつや湊子

んす」からの作句厳しき秋暑し

蕃茄

んす」からの俳句は無理よ秋鰹

しみずこころ

んすで始まる言葉を探す大暑

いちの

ひええ、いつにもまして大量の悲鳴が届いておりまする。そうだねえ、ないよねえ「んす」。俳筋力を鍛えるトレーニングの一環として尻二字しりとりやってるわけですが、欲を言えば、無謀なチャレンジの結果思わぬ佳句が生まれてほしい! ん~、今回ばかりは厳しいか!?
“良き”

ンス」なんぞあるか?ありんす!「ヒヤシンス」

吉村吉々

そういうことじゃないんだよなあ……! 「んす」で終わる言葉を探すんじゃなくて、「んす」から始まる言葉を探すんだ! 時々同じ勘違いをする人はいるんだけど、《吉村吉々》さんの場合は「ンス」から始めてるし、セーフッ。 
“ポイント”

ンスなんて?あった不断草!んすなばー

とも女

あるわけないよ、という句がたくさん並ぶ中、見つけた報告が。「不断草」で「んすなばー」と読むの? いったいナニモノ??

“とてもいい“

ンスナバーとは夏菜のことかうちなんちゅ

織部なつめ

ンスナバーは葉脈太く団扇ごと

二見歌蓮

ほうほう、解説ありがとうございます。沖縄の食材なんですねえ。少なくともこの二句を読むと野菜の一種であることはわかります。ネット検索してみると、姿形はチンゲンサイとホウレンソウとダイコンの葉を足して3で割った感じの葉物野菜に見えます。暑さと乾燥に強く、よく繁殖するとのこと。へぇー、さすが沖縄の野菜!
“ポイント”

ンスナバーを炒め肉厚の葉とろり

小川都

ンスナバーのみどり濃き朝七日粥

寒芍薬

ンスナバーソテーしながら缶ビール

のりのりこ

んすなばと沖縄ぜんざい休暇果つ

渋井キセ乃

ンスナバー味噌で煮込むや今年酒

月城龍二

レシピ(?)も届きました。炒めたり煮込んだりして食べるのが定番なのかしら。季語が入ってないようにみえる句もあるんだけど、沖縄で独自の発展を遂げた歳時記とかには季語として収録されてたりするのかな? ちなみに調べてみたところ、ンスナバーの旬は12月~5月と出てきました。暑さと乾燥に強いっていうくらいだから夏が旬なのかと思いきや、冬~春とはなんだか意外。
“ポイント”

ンスナバーのンブシ食みたり冬の宵

西村小市

ンスナバーンブシーにして今日の月

さく砂月

ンスナバーンブシーと酒星月夜

雪音

また新たな単語が出てきましたぞ、なんなんだ「ンプシ」って。例に漏れずこちらも沖縄の言葉で、料理法を表す言葉のようですね。味噌を使った炒め煮とも、蒸し煮ともいえるものだそうです。食材「ンスナバー」だけだと食感や味などを想像しきれない部分がありますが、「ンブシー」という調理法がわかると、味噌の味わいや匂いに俄然寄り添いやすくなります。思い切って「ンスナバーンブシー」と九音も使う英断が功を奏しましたねえ。《雪音》さんの句なんて特に美味しそう。味噌の口を酒で洗いながら過ごす沖縄の星月夜は、さぞかし綺麗でありましょう。
“ポイント”

ンスナバー青し泡盛三杯目

広島じょーかーず

「泡盛」が堂々たる夏の季語。いきいきとンスナバーが美味そうなんだけど、旬を考えると季感がベストか迷いもありますねえ。5月まで旬が続くのなら初夏は季感としてアリか。実態としては、季節関係なく泡盛飲んでる可能性もありますが~(笑)。
“とてもいい“

不断草(んすなばー)おばあの地図の脂染み

山本美奈友

沖縄独特の食材である「不断草(んすなばー)」を活かすための描写として、中七下五の描き方がとてもとてもリアル。「おばあ」で沖縄、「脂」で肉由来の油をそれぞれ連想させるなど細かな配慮が行き届いております。あとは不断草が季語と認定されれば完璧!?
“ポイント”

んす(味噌)焼きおにぎり沖縄の秋

そうわ

んす」は味噌しりとり続く風の盆

山崎三才

んす」入れた沖縄そばや濁り酒

みなごん

んす味のラフテー食べし秋の暮

風花舞

んす味のラフテー泡盛はロック

にゃん

またも沖縄の言葉が難題「んす」にひとつの解答を与えてくれたゾ。「味噌」は「んす」って呼ばれるのかあ。すごいな、沖縄方言の引き出し。今後、出題に困った時は沖縄方言が一筋の光明になる可能性が……!?

《風花舞》さんと《にゃん》さんの句に登場する「ラフテー」とは豚肉を使った料理だそうです。いわゆる豚の角煮で、煮込むのには泡盛も使うのだとか。こってり美味しそう。
“ポイント”

んす」は味噌「でーじ」は大事仏桑花

うに子

ほらー、さっそく実例ですよ。「んす=味噌」につづき「大事」を「でーじ」と言うことを知った我々。今後のしりとりで登場してきそうだなあ……。ちなみに「仏桑花(ぶっそうげ)」はハイビスカスのこと。沖縄らしい取り合わせではありますが、少し季語とフレーズとの距離が近いかなあ。

“とてもいい“

ンスタから行く夏雲よ奴隷海岸

坂野ひでこ

ンスタなる町を見つけたさて夜食

寺田 美登里

都市名にもありました「ンス」。ブリタニカによると「ンスタ」はガーナ南西部の町であり、マンガンの採掘と林業で栄えているそうです。歴史的重みを感じる《坂野ひでこ》さんの句とは対照的に「おっ、いい単語みつけた!じゃ、安心して夜食たべよ!」みたいな《寺田 美登里》さんの軽さが妙に愉快~(笑)。
“とてもいい“

ンスカ産玉蜀黍を蒸すお菓子

沙魚 とと

ンスカキャンパス大夕焼の農学部

彩汀

ンスカてふ学びの地より小鳥来る

竹田むべ

ンスカという街は何処に青蜻蛉

うすむらさき

ンスカとなしりとり尽きず月も出ず

うどん蛍

ンスカのキャッサバ買付けアイスティー

天雅

ンスカの瀬舟を墓標に流れ星

二兎丸

ンスッカ捜しさがして虫の声

しせき

ンスッカに嫁いで午後の空とゾボ

海色のの

再び都市の名前。《うすむらさき》さんが「街は何処に」と仰ってますが、まったく同感でアリマス。調べてみると「ンスカ」または「ンスッカ」と呼ばれる町はナイジェリア南部にあるようです。ナイジェリア大学があり、キャッサバやトウモロコシの集散地である、と。おお~、どんな町かがわかるとみなさんの句にそれぞれうなずけるではないか!

《海色のの》さんの下五「ゾボ」はナイジェリア伝統の飲み物で、いわゆるハイビスカスティーのようなものだそうです。赤い美しいお茶であり、色の映えるように白い器に注ぐことが多いのだとか。季語として考えるならアイスティーまたはホットドリンクスと捉えるべきなのかなあ……。あるいはハイビスカスティーであることを重視してハイビスカスの傍題と考えるとか? 未知の言葉の分類は難しいけど知的好奇心がむずむずしますねえ。
“ポイント”

ンズワニ島はじめて聞いた常夏の島

高木友

はい、ワタクシも今はじめて聞きました。「常夏の島」というくらいですから、南方の島なのかな。調べてみると、コモロ連合国家を構成する3つの島のうちの一つ、とのこと。地理的にはモザンビークとマダガスカルに挟まれたインド洋上に位置し、”名物は周辺の海域に生息している生きた化石シーラカンス”……えっ、シーラカンス!? シーラカンスが泳いでるってどういう環境!!? 気になるぞ、ンズワニ島……!
“ポイント”

ンスフラ」と三度唱へて秋のパリ

えりまる

これまた知らない単語……かと思いきや、調べても該当するものが見つからず。うーん? としばらく考えて思い至りました。業界用語っぽいい言い回しなのか!? 「銀座」を「ザギン」と呼ぶ的な。パリなんて行ったことないけど、「秋のパリ」の気取ってる感じに憧れが募りますなあ。
“ポイント”

ンスムニダと口を衝きけり秋の蝉

加賀屋斗的

大学生の頃、第二外国語の履修が韓国語でした。かなり記憶が朧気ですが、丁寧語「~です」に当たる言葉だった……気がする。あえて調べずに書いたけど間違ってたらゴメンナサイ。「口を衝きけり」のさりげなさと「秋の蝉」の取り合わせが上手い。

《②へ続く》
“ポイント”