俳句deしりとりの結果発表

第22回 俳句deしりとり〈序〉|「うか」②

俳句deしりとり
俳句deしりとり〈序〉結果発表!

始めに

皆さんこんにちは。俳句deしりとり〈序〉のお時間です。

出題の句からしりとりの要領で俳句をつくる尻二字しりとり、はじまりはじまり。
“良き”

第22回の出題

兼題俳句

ン・スラー・タタタまた止まる卒業歌  鷹見沢 幸

兼題俳句の最後の二音「うか」の音で始まる俳句を作りましょう。

 


※「うか」という音から始まれば、平仮名・片仮名・漢字など、表記は問いません。

憂かりける人や初瀬の初紅葉

日光月光

憂かりける人打ちつける除夜の鐘

菜活

「憂かりける人」は百人一首の七四番「憂かりける人を初瀬の山おろしよはげしかれとは祈らぬものを」からの着想でありましょう。ちなみに作者は平安時代後期の歌人・源俊頼朝臣。元の和歌における「憂かりける人」は、つれないあの人を、と訳されることが多いようです。歌全体をざっくり意訳すると、つれない想い人がさらにつれなくなった、といった意味になりますね。せ、せつな~。

《日光月光》さんは元ネタである和歌を踏まえて「初瀬」を詠み込んでいるのが心ニクい。《菜活》さんは「打ちつける人」で切れると読むか、あるいは助詞の「が」が省略されていると読むかによって解釈が分かれそう。人を想いながら除夜の鐘を打っているか、当の想い人が打つ鐘の響きか。……あるいは憂かりける人「を」打ちつけるなんてバイオレンスな読みも……いやいや、さすがにないない。事件性はない。いいね?

“良き”

憂かりける禿げを狙いし歌留多会

春野つくし

百人一首や歌留多で禿げといわれるともっぱら蝉丸のイメージだったのですが、なんで源俊頼朝臣のこの歌? 七七の「はげしかれとは」の部分の「はげ」のせい? 「禿げ」って書いちゃうとほら、センシティブになるからさ……頭髪のことって……。
“ポイント”

浮かぬ顔しては沈めて浮いて来い

佐藤儒艮

憂鬱さを表す言葉には「浮かぬ顔」もありました。「浮かぬ顔して」まで読むと人物を連想しますが、続く後半のフレーズによって想像を心地よく裏切ってくる滑稽味が味わいです。浮かぬ、沈めて、浮いて来い、と動詞をこれでもかと使って破綻してないのもスゴイ。

“とてもいい“

浮かばざる風船ひとつ風の庭

西野誓光

浮かんでは来ない反抗期の海月

みづちみわ

浮かんでは沈む病葉黒揚羽

しせき

心理的な要素はなく、物理的に浮かばない・浮いてないシリーズ。三句を眺めてみると、それぞれに「本来は浮かぶべきもの」が取り合わせられているのが興味深いですね。必然的に浮かばない状況との対比が成立しています。《西野誓光》さんと《みづちみわ》さんがともに十七音全体を使って一つのモノを描写しようとしているのに対し、《しせき》さんは上五中七で病葉の動きを描写した上で切れを作り、下五には新たな季語「黒揚羽」を登場させています。季重なりではありますが、水場の実景を捉えてみれば、厳然とそこに存在しているのだからしょうがないじゃないか、と言わんばかりの堂々とした描写。お見事です。
“ポイント”

浮かべたる涙に価値のなき小春

月城龍二

物理的なあれこれが浮いてる句はかなり多く届いていたのですが、こういう描き方になるとセンチメンタルさがアップアップですなあ。なぜ「価値のなき」と言い切ってしまっているのだろう。別れの場面? 学生が最後の部活の試合に敗れた? 打ちひしがれる以外に、泣いてても仕方ないから前に進まなきゃ、と自らを叱咤している読みも成立するかなあ。「小春」のかすかに兆す温さをどう読むか。

“ポイント”

ぶ瀬や七合五勺酌む新酒

山本八

「浮かぶ瀬」とは苦しい境遇や状態から抜け出る機会のこと。身を捨ててこそ浮かぶ瀬もあれ、という言い回しもありますね。強い詠嘆の「や」で切れを作りってからの切り替えしが上手い。「七合五勺酌む新酒」はなんとか苦境から抜け出した祝杯に違いないですねえ、さぞ美味しかろうってもんだ。ちなみに七合五勺はリットルに換算すると約1.35リットルになります。一升瓶1.8リットルの4分の3を飲み切っちゃってるわけですか。二日酔いの沼に沈まぬようにお気をつけて~(笑)。
“とてもいい“

受かつたら鯨一頭買うて欲し

梵庸子

受かるわけない大学を越す小鳥

北里有李

浮かぶ瀬もあれば浮かばない瀬もあるのが人生ってもんでありまして。悲喜こもごもの入り乱れる受験シーズン、悲観的な見通しで迎える人も当然世の中にはいるわけです。

《梵庸子》さん、望みが薄いにしても「鯨一頭買うて欲し」はめちゃくちゃ大きく出たなあ。約束としては、針千本の~ます、よりも吹っ掛けてるんじゃないか??

《北里有李》さんは動詞「越す」の選択が上手い。自然と大学の校舎を見上げるような視線が誘導されます。秋に日本へと渡ってくる小鳥たちは山や森など木に沿って移動するといいますが、この「大学」の背後には豊かな自然が広がっているのかもしれないなあ。
“ポイント”

ウかんむりおんな入って春かなし

馬場めばる

季語の「春かなし」が意外な着地。漢字の部首である「うかんむり」に女が組み合わさると「安」。この漢字からどんな単語を連想するかによって、取り合わせの評価が分かれそうですねえ。安全や安心といった単語を連想すると「春かなし」のアンニュイさがアンバランスに感じますが、安価や激安などを思い浮かべると、場合によっては「春かなし」がピタっとハマるかもしれません。在庫処分の安売りとかの場合、売る側としては泣きたくなるもんな……。
“ポイント”

うかんむりみたいな黒の冬帽子

風蘭智子

部首のうかんむりを比喩に使うことで「黒の冬帽子」を映像化できているのが愉快かつえらい! 着想が面白いタイプの句だから、肩肘張った文語のスタイルよりも口語「みたいな」の軽やかさが似合います。黒くてつややかなベレー帽のような「冬帽子」なんだろうな。藤子不二雄が被ってるようなやつ。(発想が古い)
“ポイント”

ウ冠の角も寒かろ太く書く

澤村DAZZA

不思議な感覚なんだけど、妙に心惹かれるなあ。「寒かろ」と同情的に語りかけられても、当のウ冠さんには感覚器も感情もありはしません。が、そんなありうべからざるものを感じ取るのが俳人のヘンな面白さなんだよなあ。「太く書く」のは書道か、あるいはマジックでしょうか。作者の心と指先に込める力一つによって「太く」できるのが小粋。濃く太く書かれたウ冠は「寒さ」から切り取られ守護されているかのよう。

《③へ続く》
“ポイント”