俳句deしりとりの結果発表

第22回 俳句deしりとり〈序〉|「うか」③

俳句deしりとり
俳句deしりとり〈序〉結果発表!

始めに

皆さんこんにちは。俳句deしりとり〈序〉のお時間です。

出題の句からしりとりの要領で俳句をつくる尻二字しりとり、はじまりはじまり。
“良き”

第22回の出題

兼題俳句

ン・スラー・タタタまた止まる卒業歌  鷹見沢 幸

兼題俳句の最後の二音「うか」の音で始まる俳句を作りましょう。

 


※「うか」という音から始まれば、平仮名・片仮名・漢字など、表記は問いません。

羽化の夜の瓶詰めに枝冬の蝶

白庵

生命の神秘が俳人心を捉えてやまない「羽化」。かなりの句数が寄せられた発想ではありましたが、その多くは蝉の羽化を扱った句でした。《白庵》さんのように蝶を題材にしたのは少数派。神秘的な「羽化の夜」から始まり、中七で硬質な「瓶詰め」に収められた「枝」の映像へと展開する語順が上手いですねえ。最後に季語である「冬の蝶」が登場し全貌が明らかになるわけです。一緒に羽化までの数日を見守りたくなるような静けさがあります。

“良き”

羽化登仙くねくね道の冬の星

東ゆみの

羽化登仙ずっと居座る御慶かな

氷雪

羽化登仙ですねと声掛けてみる

アルル

生物の羽化ではなく四字熟語の「羽化登仙」。中国の神仙思想に由来する言葉で、人が仙人となって羽が生え、仙界に登ることを指します。これだけ聞くとなんのこっちゃ、って感じですが「酒に酔ってよい気持ちになったときのたとえ」なのだそうです。うーん、並んでる句も酒の匂いがぷんと薫ってきそうなものばかりだ! 《アルル》さんにいたっては羽化登仙のすえに季語がなくなってしまっている! 嗚呼、これもお酒を召したせいなのかしら~。
“ポイント”

迂回路の信号きらきら星月夜

のんつむ45号

迂回路は右へ嗚呼眩しき西日

伊沢華純

迂回路を白く大きな犬と月

津々うらら

身近な体験として「迂回路」も多かった。続く助詞に何を選ぶかによって、それぞれ展開が変わっていきます。《のんつむ45号》さんの「の」は直接「信号」へとつながり、どこの、なにか、を明確にします。《伊沢華純》さんの「は」は迂回路がどうなっているかの説明になります。「右へ」で意味の切れを作り、曲がった先の光景へと切り替える展開が巧み。《津々うらら》さんの「を」は迂回路という空間を、の意味になります。犬も月もゆったりと同じ空間に存在しております。

“とてもいい“

い書却下鯛焼六つ買う

雨野理多

心がくさくさする感じ、わかる、わかるぞ……! 数詞「六つ」のやるせない迫力にも共感するやら笑えるやら。食え、好きなだけ食えっ! 紙袋が湿気でくちゃくちゃになる前に帰って食えっ!!
“ポイント”

齲窩の穴詰まる麻婆の味痒し

おやじん

「齲窩(うか)」は虫歯でできた穴のこと。過ぎたるは及ばざるごとし。食いすぎても困ったことになるんだからやりきれねえよなあ……。麻婆豆腐の豆板醤や山椒が齲窩に詰まってたらなかなかひどい有様になりそう。ただ、材料に入っているであろう「山椒の実」とかは季語だけど、麻婆だけだと季語にはならぬのですよ。惜しい。

“ポイント”

有界とは無縁な穴へ蛇入れり

留辺蘂子

これも耳慣れない単語。どうも同じ「有界」でも「うかい」と読むか「ゆうかい」と読むかによって意味が変わるようです。兼題が「うか」なので前者の読みは確定ですが、仮に「ゆうかい」と読んだら数学用語になるんだって。へぇー。

「有界(うかい)」は仏教用語であり、生死流転するものとしてとらえられる世界、欲界・色界・無色界の総称であると辞書には解説があります。みんな本当にいろんな言葉知ってるなあ。蛇にとって、冬眠のために穴へと潜り込んでいくことは一時的に有界から離れることなのかしらん。
“とてもいい“

鵜飼舟炎の色の水と魚

せんのめぐみ

「鵜飼」という季語の場面に立ち会って周囲をしっかり観察した一句。闇の中で焚く篝火もあいまって、綺麗なんだよなあ鵜飼。ラスト三音で水の表だけでなく、その内に泳ぐ「魚」の姿まで描写しようとしたのがえらい! ちなみに愛媛県の大洲市は鵜飼で有名なお土地なのです。ぜひ一度お越しください♪
“ポイント”

雨花石へ水打つ待ち人はまだか

てんむす

「雨花石」は、水に濡らすと色が鮮やかになったり透明感が増し、花のように美しくなるのだとか。《てんむす》さんの句は十七音の器に盛る情報量が丁度良い塩梅です。「まだか」と投げかけるような言葉で一句の世界を閉じることによって、呟きの奥にある心の襞を読者が想像して楽しむ余地が生まれます。雨花石を水で鮮やかに変えるように、待ち人が到来した時には心が彩られるのでありましょう。打ち水がもたらす涼感の心地よさも一句の背骨としてしっかり機能しています。
“ポイント”
第24回の出題として選んだ句はこちら。

第24回の出題

うかとしろばんば呼び込む坂の

七瀬ゆきこ

「うかうかと」が転じて「うかと」になっているのだろうと判断しました。「しろばんば」は冬の季語・綿虫の傍題。なぜ雪虫がしろばんばと呼ばれるようになったのかは所説あるようですが、いずれにせよこの珍妙な人間くさい傍題を採用したのが《七瀬ゆきこ》さんのお手柄であります。宙を漂うしろばんばがなにかの拍子に店の中に入ってきてしまう。あちゃー、と困ると同時に、ざらに起きるんだろうな、と思わせる妙なリアリティがあります。もちろんわざと入れているわけではないんだけど、「呼び込む」と意思をもって行ったかのような語りが滑稽味を生みます。外の坂では高く低くしろばんばが群れ飛んでいるんだろうなあ。

ということで、最後の二音は「みせ」でございます。

しりとりで遊びながら俳句の筋肉鍛えていきましょう!
みなさんの明日の句作が楽しいものでありますように! ごきげんよう!
 

“とてもいい“