俳句deしりとりの結果発表

第23回 俳句deしりとり〈序〉|「とう」②

俳句deしりとり
俳句deしりとり〈序〉結果発表!

始めに

皆さんこんにちは。俳句deしりとり〈序〉のお時間です。

出題の句からしりとりの要領で俳句をつくる尻二字しりとり、はじまりはじまり。
“良き”

第23回の出題

兼題俳句

老僧を殺める夢や夾竹桃  満る

兼題俳句の最後の二音「とう」の音で始まる俳句を作りましょう。

 


※「とう」という音から始まれば、平仮名・片仮名・漢字など、表記は問いません。

辛子ご指摘いつもごもっとも

信茶

中七下五の皮肉な口ぶりが魅力。ごもっともでございますなあ、へいへい……とため息まじりに、それでも自分の手は止めない人物が目に浮かぶようではありませんか。「唐辛子」は心の中のピリッとした怒りでもあるだろうし、ひょっとしたらご飯食べながら小さな欠片をかみ潰してるなんて読みもできるかも知れない。

心の中はくさくさするけど、そのくさくさに負けてちゃ話にならないもんな。共にがんばっていこうぜ、マイフレンド!

“ポイント”

瓜の茫洋へ刃を入れませう

平本魚水

瓜や問題児てふ面の皮

素々 なゆな

「とう」で始まる季語シリーズが続きます。「冬瓜(とうがん)」は名前に冬が入ってるけど、秋の季語。煮たり汁物などにして食べることが多いみたい。見た目はずんぐりした巨大な瓜なんだけど、煮るとさくっと軽い食感になりますな。愛媛だとあまりメジャーな食材ではないんだけど、《平本魚水》さんの「冬瓜の茫洋」は日頃から調理経験があるのかしら。冬瓜の独特の感触に対して「茫洋」という捉え方がリアル。一方、《素々 なゆな》さんは上五のやで詠嘆するストレートな取り合わせ。問題児のまあなんと面の皮の厚いことか、と憤懣やるかたない心で一気にかち割るに違いない。

“良き”

至粥小さき炎に波立てず

杏乃みずな

個人的には冬至といったら南瓜のイメージ。実際には南瓜に限らず、災厄を払うためにいろんな食べ物を食べる風習が各地に残っているようです。調べてみると冬至粥のレシピもいろいろ。小豆と南瓜で作る冬至粥なんて美味しそうだなあ。「小さき炎に波立てず」は静かに火にかけ始めたばかりの状態かしら。「に」「立てず」の2パーツによって少し読みに迷う。
“ポイント”

暖や一人割り込む縄電車

小林 昇

冬の時候の季語である「冬暖」。「ふゆあたたか」と読む場合もあるけど、「冬暖(とうだん)」と音読みするとゆったり感が薄まる印象です。縄電車で遊ぶくらいの年齢っていったら幼稚園児頃かなあ。割り込み発生で喧嘩勃発、の声を聞きながら「よっこらせ」と止めにいく保護者の姿が目に浮かぶようであります。取り合わせがそれでもほのぼのとした視点。

“とてもいい“

帝の盾めく甲羅沈みけり

白庵

亀の甲羅を想像しました。亀の甲羅を「盾」と見立てる発想はなくはないけど、それが「冬帝の盾」のようだ、と言い切ってしまうと詩が生まれます。「けり」の持つ気付きのニュアンスが活きてるのも褒めポイント。見ている最中は形になりきっていなかったイメージが、甲羅が沈んで見えなくなってしまってから「冬帝の盾のようだったなあ」と作者のなかで形になったわけです。水面には冬帝=冬らしい寒さだけが残ってわびしい。
“ポイント”

眠の蝙蝠が目の濡れてゐる

内藤羊皐

夏の季語である蝙蝠、冬の季語である冬眠。二つの季語を「冬眠の蝙蝠」と合体させることで季重なりを成功させるやり方。身を縮めた蝙蝠の顔、その目玉をクローズアップして描写する一物仕立てでもあります。季重なり×一物仕立てのウルトラ高難度、腹が据わっておりますなあ! あっぱれ!

“ポイント”

雨止み野猿しぶしぶ樹皮を喰む

山田季聴

冬の雨の傍題に「凍雨」を含めている歳時記もあるようです。辞書にあたると、①氷のように冷たい雨、②雨滴が空中で凍って氷の粒となって落ちてくる現象、とあります。ん? ②のほうって雹や霰とかなり近いものがあるんじゃないの?? 「凍雨」としての差別化をはかった読みをしてあげるなら①の意味を強く読んであげるべきかなあ。猿たちが凍雨のしみた樹皮を剥いで食べる表情の絶妙な不幸せ感がいかにも厳しい冬。
“とてもいい“

螂の斧は朝日に錆び付いて

千代 之人

……ふと気になったけど、なんで「斧」なんだろう。蟷螂=カマキリの前足の部分は鎌って言われたり斧って言われたりするよね。カマキリっていうくらいだし鎌が普通なんじゃなかろうか。……が、調べてみると実は「蟷螂の斧」は七音で一塊の故事成語でもあるらしい。無謀で身の程をわきまえない行いをすることのたとえ、とのこと。ほほー、しらんかった! 歌舞伎などにも登場するフレーズだそうです。

とはいえ、この句においては故事成語として読むのではなく、生き物「蟷螂」の姿として読んであげたほうがちゃんと季語が力を発揮してくれます。下五の描写もあいまって枯蟷螂の風情がありますなあ。
“ポイント”

茱萸の甘き銀河に星数多

となりの天然水

茱萸は秋の季語。歳時記には特に表記はないけど「唐茱萸」も茱萸の一種として考えて良い……のかな? ナツグミの変種で、唐とついてはいるものの日本が原産のようです。別名・ビックリグミ。「甘き銀河」は茱萸の表面に浮く斑点模様の比喩と考えて良いでしょう。食べるとちょっとざらっとするんだよね、茱萸の斑点。舌に感じるざらつきのひとつひとつが「星数多」の実感だと考えるとなんだかロマンチック。
“ポイント”

板醤へ和して同ぜず新豆腐

紫すみれ

季語ではない食べ物にも「とう」で始まるものはありました。辛いものがあんまり得意じゃない人間からすると豆板醤と聞くと身構えてしまうなあ。「和して同ぜず」が新豆腐のぎこちない鮮度の表現として言い得て妙。

《③へ続く》
“ポイント”