俳句deしりとりの結果発表

第24回 俳句deしりとり〈序〉|「みせ」①

俳句deしりとり
俳句deしりとり〈序〉結果発表!

始めに

皆さんこんにちは。俳句deしりとり〈序〉のお時間です。

出題の句からしりとりの要領で俳句をつくる尻二字しりとり、はじまりはじまり。
“良き”

第24回の出題

兼題俳句

うかとしろばんば呼び込む坂の店  七瀬ゆきこ

兼題俳句の最後の二音「みせ」の音で始まる俳句を作りましょう。

 


※「みせ」という音から始まれば、平仮名・片仮名・漢字など、表記は問いません。

じまいの手書きの誤字や年の暮

紫すみれ

じまいの貼紙の誤字冬深し

城ヶ崎文椛

じまい貼り紙揺れる年の暮れ

糸桜

じまい文字の乱れや花八手

老黒猫

仕舞いのテープ剥がれぬ寒夜かな

小林 昇

仕舞の掠れた文字や冬ざるる

先に閉店予告氷雨打つ

かたくり

出題の句が二音の名詞で終わっているとそのまま同じ単語が使えます。「店」から始まる単語はいくつかバリエーションが考えられますが、なぜか多かったのが「店じまい」。しかもだいたい張り紙でお知らせされているのです。《かたくり》さんは「店先」になってるけど、描いてる状況は同じ。世知辛いねえ。
“良き”

先の肉まんの湯気寒の入り

砂月みれい

先の肉まんの湯気春の立つ

せんのめぐみ

店先にあるなにものかを句材にしたシリーズ。「店先の○○」とすることでいろんなバリエーションが作れます。「肉まん」の蒸し上がる湯気ってなんであんなに蠱惑的(こわくてき)なのかしら。人を惹きつけるだけに、上五中七がまったく同じになっちゃった仲間がお二人。取り合わせる季語を寒さに寄せるか、暖かさに寄せるかで個性が分かれました。
“ポイント”

先の看板猫や春夕焼

福朗

先の看板猫や日向ぼこ

飛来 英

先の猫尾を舐める春の風

紙風船

ここにも上五中七まったく一緒仲間がおりました。《福朗》さんも《飛来 英》さんも猫好き俳人なのかしら。店先の猫ってずるいくらい客寄せ効果あるよねえ。つい近づきたくなっちゃうもの。《紙風船》さんは一歩踏み込んで、猫の動作を描写できています。「店先」「猫」の2ワードがあれば読者の想像を補うには十分。自然と読者は「お店の猫かな、看板猫かな」という読みまで辿り着いてくれるでしょう。

“とてもいい“

先も小春日和やさくら猫

猫日和

同じく猫の句だけど、こちらは中七で切れて下五にぽんと猫の存在が出てきます。去勢された野良猫はその印に耳に切れ込みが入れられ、その切れ込みの形から「さくら猫」と呼ばれます。上五の助詞「も」によって、小春日和らしさが猫にも店先にも及んでいるという、空間占有率の高さを語れているのが褒めポイント。
“ポイント”

のドア開けたさう大寒の鳩

鈴白菜実

猫は大切にされるけど、鳩はそういうわけにもいかず。十音と七音の2パーツで構成される句跨がりの形です。人間くさい描写から始まり、実はそれは鳩の姿である、という展開が愉快。ひょうきんで挙動不審な愛すべきいきもの、鳩。大寒の厳しい寒さのなかをおろおろする姿が見えてきます。

“ポイント”

先に扇子十面開かるる

玉響雷子

商品を並べた店先もありました。「十面」がいいなあ。それぞれの扇子に描かれた模様が鮮やかに並ぶお土産物屋の店先が想像されます。涼を求めたくなる汗ばむような気候、店先に入る陽光の光量などもいやみなく連想させてくれるのがなんとも粋であります。
“とてもいい“

先の豚の頭やサングラス

渥美こぶこ

OH, 大迫力……。沖縄かアジアの市場の喧噪と熱気が立ちこめるかのようであります。発見の衝撃が「や」の詠嘆から察せられますなあ。「サングラス」は観光客である作者のものか、あるいは店の人がかけてるのか。後者だったらなおのことうさんくさい(笑)。
“ポイント”

 

先へどんと師走のおしぼり屋

うーみん

おしぼり屋さんのお仕事の実感。飲み屋街とかでこんな場面見かけたことあるなあ。「どん」に重さと勢いと師走の気忙しさとが集約されております。《うーみん》さん勤めてた??
“ポイント”

 

閉めて一円合わぬ一葉忌

三尺 玉子

閉を溶けゆく硬貨雪女郎

蜘蛛野澄香

店じまいの張り紙の一団もありましたが、こちらは一日の終わりの閉店業務です。小売店勤務の経験がある人は《三尺 玉子》さんの句にあるある~ってなるんじゃないでしょうか。レジ締めで金額のズレが起きると嘆きたくなるよねえ。原因究明にへたすると一時間以上かかったりして……。若くして亡くなった「一葉」と労苦の取り合わせがグッド。

《蜘蛛野澄香》さんは日本昔ばなし風。きつねやたぬきが化けて葉っぱのお金で買物するけど、化かしたのがバレて……みたいな話、あるよね。雪女郎が買いにくるって発想はちょっと捻ってて新鮮であります。そういうバージョンのお話もあるのかな?
“ポイント”

 

番の老婆うとうと窓に春

べにりんご

番はじいじ小春の文具店

田季たまき

番やねんねこの掌が陽を掴む

メレンゲたこ焼き

番を猫に任せて福引へ

えりまる

番のギャルはつっかけ年の市

夏村波瑠

店番シリーズあれこれ。言葉としてはすんなり入ってくるけど、あんまり実生活では使わないよなあ。店員さん、って言っちゃう。

辞書を引いてみると「店番」は文字通り「店の番をする人」とあります。一方「店員」は「商店に勤める人」。ほうほう、意識してなかったけどそういう違いがあるわけね。しっかり勤める意識がなくても番をしてくれてればOKなのであれば、それぞれの句に登場する人物(猫含む)が醸し出すふんわり感に納得がいきます。《夏村波瑠》さんの「ギャル」は少し差別化できてて面白い。足下まで観察して映像化することでリアリティに繋がります。お祭りの屋台とかでもこんなおねーちゃんいるよね。

《②へ続く》
“良き”