第24回 俳句deしりとり〈序〉|「みせ」②
始めに
出題の句からしりとりの要領で俳句をつくる尻二字しりとり、はじまりはじまり。
第24回の出題
兼題俳句
うかとしろばんば呼び込む坂の店 七瀬ゆきこ
兼題俳句の最後の二音「みせ」の音で始まる俳句を作りましょう。
※「みせ」という音から始まれば、平仮名・片仮名・漢字など、表記は問いません。
見世物の小屋に急ぐや祭り客
風譚
見世物となりし人魚よ夕霧忌
ノセミコ
見世物の犬に凍蠅群がりぬ
葉村直
見世物のおっさん飲んで出す金魚
横山雑煮
見世物の大蛇が逃げたお元日
泉楽人
見せものじゃねえんだワイルドな炬燵
ヒマラヤで平謝り
見世物じゃねえぞ初御籤を返せ
けーい〇
こちらは口上? としての「見世物」。映画やら漫画やらの「おうおうなに見てんだ!」的な場面で以前はよくみかけたフレーズですね。今ではみかけない……というか、現代の作品でこのフレーズを出しても、読者にとっては「見世物ってなに??」になっちゃうのかなあ。同じ状況でも現在だと「何見とんじゃワレェ!」みたいな描かれ方になってる気がする。お祭りの出店に見世物小屋の姿が消えるのと同じように、いずれこの言い回しも消えるのかもしれないと考えると少しセンチメンタル。炬燵や初神籤囲んでじゃれあえるうちにじゃれあっとこ!
みせ場は討ち入り帰るは雪道
こきん
見せ球はカーブ炎天のオータニ
信茶
見せ球の山めく軌道春の塵
にゃん
オータニさんが登場するし明らかに野球用語だなあ。調べたところ「投手が決め球をより効果的にするために、打者に見せておく球」とのこと。速球の前に変化球を投げたりする、と実例がありました。緩急をつけるのが大事ってことかねえ。《にゃん》さんの「山めく軌道」はフォークボールでありましょうか。「春の塵」によってマウンドと打席の間の空間と、放たれたボールの軌道とが見えてきます。
見せ梁は郷の家から山笑ふ
茂木 りん
見せムチに応へる芦毛日脚伸ぶ
あみま
見せ消ちの企画書ぐしゃりホットワイン
めいめい
見せ消ちの符号読み解く夜長かな
草深みずほ
……とはいえ、そこは人間の仕事。たくさん直しが入ると悔しいやら情けないやら企画書も握りつぶしたくなるし、便利な見せ消ちもごちゃごちゃ符号を書き込みまくられると逆に暗号のようになってしまうのであります。ままならねえなあ、人生。ホットワインで心慰めつつ夜長を過ごそうじゃないか、友よ。
見せ場なく敗退俳句甲子園
佐倉英華
三瀬君の珍解答や夏合宿
猫の前髪
未成年の主張夏空揺らしけり
前田
ちなみに「未成年の主張」が印象深すぎて刷り込まれておりましたが、これは企画名であり、番組本体は『学校へ行こう!』だったようです。ああ~、言われてみれば……!
未成年煙草はいかん酒も待て
アルル
未成年飲酒ステテコよりダサし
ぞんぬ
未成年へのアドバイス? 警句? だが《アルル》さんよ、季語すら入っておりませんがな! 《ぞんぬ》さんはなんとか季語「ステテコ」を入れております。
……今原稿書きながら映画かアニメのワンシーンが記憶に浮上してきたんだけど……どの作品のなんの場面だったか思い出せない……タバコに関する場面で「綺麗な肺を汚してえのか」って台詞があった……あったはず……思い出せない……もやもやする……。
見せてみろ子猫とやらの性能を
水蜜桃
店売りの武器でゾーマを倒す冬
中岡秀次
作品によっては店売り武器でも最強クラスだったりするんだよな。エストポリス伝記IIも店売りのジルコンシリーズが武器種によっては最強じゃないっけ。
《③へ続く》