写真de俳句の結果発表

第41回「お腹が空いていましたので」《ハシ坊と学ぼう!②》

ハシ坊

お腹が空いていましたので

評価について

本選句欄は、以下のような評価をとっています。

「天」「地」「人」…将来、句集に載せる一句としてキープ。
「並選」…推敲することで「人」以上になる可能性がある句。
「ハシ坊」…ハシ坊くんと一緒に学ぶ。

特に「ハシ坊」の欄では、一句一句にアドバイスを付けております。それらのアドバイスは、初心者から中級者以上まで様々なレベルにわたります。自分の句の評価のみに一喜一憂せず、「ハシ坊」に取り上げられた他者の句の中にこそ、様々な学びがあることを心に留めてください。ここを丁寧に読むことで、学びが十倍になります。

「並選」については、ご自身の力で最後の推敲をしてください。どこかに「人」にランクアップできない理由があります。それを自分の力で見つけ出し、どうすればよいかを考えるそれが最も重要な学びです。

安易に添削を求めるだけでは、地力は身につきません己の頭で考える習慣をつけること。そのためにも「ハシ坊」に掲載される句を我が事として、真摯に読んでいただければと願います。

ケット待つ素振りよお茶二つ

銀髪作務衣

夏井いつき先生より
「私には到底不可能な素振り。女子力無し。観察力は自信あり」と作者のコメント。

「ケット待つ素振り」とは?
“参った”

子と二人にぎりほおばる菜花燃ゆ

えみりん

夏井いつき先生より
「菜花」は「花菜」? にしても、「花菜」に対して「燃ゆ」は大げさすぎます。描写を再考しましょう。
“ポイント”

手に取りてまたそっと置く苺福

すみだ川歩

夏井いつき先生より
「苺福」は、ちょっと強引すぎるのではないかと。
“参った”

孫かわ祖父どら焼きのあん春日向

砂糖香

夏井いつき先生より
「母方の祖父は、私が二歳の頃には亡くなっているので、記憶にないはずなのですが、繰り返し聞かされた思い出話のおかげで、『甘いもの好きの祖父の膝にのって、どら焼きの皮だけもらって食べていた』という『記憶』が造成されました。兼題写真のどら焼きを見て思い出しました。というか、妄想しました。『孫皮』ではなく『孫かわ』にして『可愛い』に掛けてみました」と作者のコメント。

むしろ、下五「春日向」が不要かも。「どら焼き」は微妙ですが、「鯛焼」などは季語になっていますので、そちらを季語として考えてはどうでしょう。
“ポイント”

風に乗り迷いた道で蝶の昼

風花舞

夏井いつき先生より
「迷いた」? 風に乗って迷ったのは「蝶」なのですか? 作者ご自身なのですか?
“ポイント”

春よパンパンの妣のいなり寿司よ

ならば粒あん

夏井いつき先生より
「出掛けるのが好きだった母。どの場所も天気も昼夜も殆どが季語に当てはまってしまうので『春』としました。それに、母がいなり寿司を作って出掛け始めるのが『春』だったから。パンッパンのいなり寿司でした。(この句は季重なりにならないと判断しました)語順が、太った母ととれるのも気になり『妣のパンパンの』と迷いましたが、自分ではこの順がいいなと思いました」と作者のコメント。

コメントを読むと書きたいことは理解できますが、言葉に優先順位をつけて、再考してみましょう。少なくとも、季語「春」が主役になっているとは、言い難いなあ。
“参った”

食べかけのどら焼き置きて孫を追う春

のろのろ

夏井いつき先生より
「コートのデザインから、どら焼きの持ち主は年齢の女性かなと想像しました。年配の女性が、夫と孫、娘とお散歩に来て、孫を遊ばせている情景をイメージしました」と作者のコメント。

「食べかけのどら焼き」と書き、「孫を追う」とあれば、「置く」と書く必要はありません。全体を再考してみましょう。
“ポイント”

花あらば独りではない野辺の春

蘇芳

夏井いつき先生より 
「どことなく寂しげな風景なので。この「花」は季語にならないと思うのですが……」と作者のコメント。

うーむ……お気持ちは分かるのですが、この内容でしたら、季語である「花」という単語を使わなくても表現できます。再考してみましょう。
“ポイント”

菜の花に酔ふてカフカの虫になる

のの夏

夏井いつき先生より
表現したい内容は、面白いです。「酔ふて」は、「酔ひて」です。音便を発生させる場合もあります。音便については、YouTube『夏井いつき俳句チャンネル』の音便シリーズを参照してください。
“ポイント”

粒あんかこし餡か問う母牡丹

あつ乃

夏井いつき先生より
「アンパンは、こし餡か粒あん、 どっちが好きか? よく会話しませんか。 母がおはぎを作る時もそうでした。 その母は、萩と云うよりは、牡丹のような笑顔でした。 牡丹の花の咲く風情も好きな人でした。 お寺の障壁画や長谷寺に寒牡丹を見にも行きました」と作者のコメント。

「母」は「牡丹」のような人であった? ……ということを表現したかったのならば、むしろ上五中七をもう少し整理する必要があります。
“ポイント”

高瀬の野れんげつくしとあんぱん顔

あつ乃

夏井いつき先生より
「小さかった息子と高瀬川の土手にレンゲ摘みに行った時のことです。小さな子供の笑顔は、アンパンマンですねー」と作者のコメント。

言いたいことを詰め込み過ぎた感があります。
良き

幾星霜の野を行きて春隣

暁月

夏井いつき先生より
気持ちは分かるのですが、具体的な映像がないので、句意が掴みにくいです。
良き

啓蟄やどら焼き持たりウォーキング

宇治 鴇眞

夏井いつき先生より
「持たり」という用法はあるようですが、「や」の切れ字で切れて、「持たり」の終止形が切れる三段切れです。単純に、「どら焼き持って」とすれば、その問題は解消できます。
“ポイント”

アイガーの雪崩聞きつつパンパース

藤田ゆい

夏井いつき先生より
「兼題写真の菜の花の黄色をみて、アイガーの雪崩の音を聞きながら、一面の蒲公英に寝かせてオムツを替えたことを思い出しました」と作者のコメント。

すごい体験だと思います。ただ、「アイガーの雪崩」から下五「パンパース」の落差が極端で、読み手としては、句意を捉えるのに少々戸惑います。
“ポイント”