写真de俳句の結果発表

第41回「お腹が空いていましたので」《ハシ坊と学ぼう!⑤》

ハシ坊

お腹が空いていましたので

評価について

本選句欄は、以下のような評価をとっています。

「天」「地」「人」…将来、句集に載せる一句としてキープ。
「並選」…推敲することで「人」以上になる可能性がある句。
「ハシ坊」…ハシ坊くんと一緒に学ぶ。

特に「ハシ坊」の欄では、一句一句にアドバイスを付けております。それらのアドバイスは、初心者から中級者以上まで様々なレベルにわたります。自分の句の評価のみに一喜一憂せず、「ハシ坊」に取り上げられた他者の句の中にこそ、様々な学びがあることを心に留めてください。ここを丁寧に読むことで、学びが十倍になります。

「並選」については、ご自身の力で最後の推敲をしてください。どこかに「人」にランクアップできない理由があります。それを自分の力で見つけ出し、どうすればよいかを考えるそれが最も重要な学びです。

安易に添削を求めるだけでは、地力は身につきません己の頭で考える習慣をつけること。そのためにも「ハシ坊」に掲載される句を我が事として、真摯に読んでいただければと願います。

施設戻ろ車窓の花見チョコ一欠片と

祥子

夏井いつき先生より
「『一欠片(ひとかけ)』と読みます。『戻ろ』は、切ない思いを出すために『戻ろ』で切りました。施設生活三年目の母とは、コロナ禍以降、通院時しかアクリル板無しで会うことができません。病院の帰り道、少しでも長く一緒にいたくて、車を停め、懐かしい外の景色を見せながらチョコレートを小さく割って渡すと、とても喜んでくれました」と作者のコメント。

一句に押し込めた情報量が多いのだろうと思います。それぞれの単語に優先順位をつけてみましょう。そこから、推敲のヒントが見えてきますよ。
“ポイント”

ハンバーグ霞の中の遠嶺かな

なんくる

夏井いつき先生より
「河川敷での近景と遠景に挑戦してみました」と作者のコメント。

意図は理解します。ただ、俳句は季語が主役となるべきだと考えています。この句では、「ハンバーグ」の存在が強くて、「霞」は背景となっています。
“ポイント”

風光るどら焼き半分初デート

遊川百日紅

夏井いつき先生より
「初デート」は、かなりの凡人ワード。これを書かずに、ほんのりとした恋のイメージを描くことを考えてみましょう。
“ポイント”

受験慣れ吹っ切る土手へ呑める足

山田季聴

夏井いつき先生より
下五「呑める足」が、ちょっと分かりにくいかなあ……。
良き

風花舞うハングル5級八十路の友

遼君のハムスター

夏井いつき先生より
全体として、情報が多すぎる点が気になります。さらに、上五「風花や」とでもすれば、風花というものは舞うものですから、「舞う」と念を押す必要はありません。
“参った”

菜の花や修羅の上にぞ笑いをり

二兎丸

夏井いつき先生より
「や」「ぞ」の切れ字のうえに、下五は終止形の切れ。全体がブツブツ切れているため、調べが滞っています。基本的に、切れは一カ所あれば安定します。
“ポイント”

断面を魅せて職業病の春

蜘蛛野澄香

夏井いつき先生より
「職業病とは、俗に、ふだんから出てしまう職業上のくせや習慣を指します。銀行員はカンマの位置が間違っていると気になったり、溶接工などの技術者は1メートルを1000ミリと言ったり。兼題写真の作者も、断面を綺麗に見せる仕事についているのではないか? と思いました(プロカメラマン、和菓子屋、断面研磨技術者など)」と作者のコメント。

やろうとしていることは、理解できます。成功させるのは、ちょっと難しいとは思いますが、「魅せて」は説明の言葉。さて、この発想をどうやってカタチにするのか。一つの職種ごとに、具体的にやってみるのも一手かもしれません。
“参った”

好物と眼福の景春到来

睦月うさぎ

夏井いつき先生より
「兼題写真には写っていませんが、桜が咲いているはずと想像し、桜と菜の花の景色を眼福としました。陽気がよい中で、美しい景色を見ながら美味しいもの食べられる  幸せな一コマを詠みました」と作者のコメント。

具体的な映像が欲しいですね。季語はあくまでも「春」。これを主役にする必要があります。
“ポイント”

菜の花や水の災い耐えし土手

宮本てふ

夏井いつき先生より
「実家の近くの川は、台風がきた時に土手の高さギリギリまで増水し、越水してしまう所も出ました。決壊は持ち堪えましたが、増強工事が進められました。そんな夏の苦労もものともせず、春になればまた、菜の花が咲きます」と作者のコメント。

「水の災い耐えし」が説明の言葉になります。これを、どうやって映像にするのか。ここが、工夫のしどころです。
“ポイント”

菜の花やこの花が好きと言ったひと

春霞

夏井いつき先生より
これは、季語がいかようにも動きます。
良き

菜の花の吐き気でまずし三笠山

おやじん

夏井いつき先生より
「菜の花」と「三笠山」の取り合わせは、悪くないのです。中七は、要一考ですね。
“ポイント”