写真de俳句の結果発表

第41回「お腹が空いていましたので」《ハシ坊と学ぼう!⑥》

ハシ坊

お腹が空いていましたので

評価について

本選句欄は、以下のような評価をとっています。

「天」「地」「人」…将来、句集に載せる一句としてキープ。
「並選」…推敲することで「人」以上になる可能性がある句。
「ハシ坊」…ハシ坊くんと一緒に学ぶ。

特に「ハシ坊」の欄では、一句一句にアドバイスを付けております。それらのアドバイスは、初心者から中級者以上まで様々なレベルにわたります。自分の句の評価のみに一喜一憂せず、「ハシ坊」に取り上げられた他者の句の中にこそ、様々な学びがあることを心に留めてください。ここを丁寧に読むことで、学びが十倍になります。

「並選」については、ご自身の力で最後の推敲をしてください。どこかに「人」にランクアップできない理由があります。それを自分の力で見つけ出し、どうすればよいかを考えるそれが最も重要な学びです。

安易に添削を求めるだけでは、地力は身につきません己の頭で考える習慣をつけること。そのためにも「ハシ坊」に掲載される句を我が事として、真摯に読んでいただければと願います。

どら焼き半分こ明日は入園日

勝亦朝

夏井いつき先生より
前半と後半、逆にしたほうが良いかな。

添削例
明日は入園日どら焼き半分こ
“ポイント”

食む前に月夜走りて言い訳す

希々

夏井いつき先生より
「ダイエット中にもかかわらず、食べようか食べまいかと悩んだ末に、食べることを決断しました。だけど、ちょっとでも心苦しさを和らげるために、軽く走っておこう! と言い訳がましく走ってみた、という気持ちを詠みました」と作者のコメント。

どういう状況なのかを、無理やり十七音に押し込めた感じです。俳句は、説明ではなく映像ですよ。
“ポイント”

孫と摘む菜の花を手に破顔のばあば

いともこ

夏井いつき先生より
「私の母(ばあば)は、父が亡くなった後、川土手を私の娘(孫)を連れて、よく散歩をしていました。その時に菜の花を二人で摘んでいて、久しぶりに楽しそうな顔をしていた時のことを詠みました」と作者のコメント。

「孫と摘む」と上五にありますので、下五を字余りにしてまで、「ばあば」という関係を丁寧に書く必要はありません。
“ポイント”

アブラナめ栗入りあんを所望する

たけ

夏井いつき先生より
「菜の花の黄色が、栗に見えてきました」と作者のコメント。

動物や植物の季語は、(特別な意図がない限りは)カタカナを避けるのが定石です。
“ポイント”

ひとつだけ残した桜餅いずこ

めぐ

夏井いつき先生より
「夏井先生の俳句にふれ、日本語の美しさに惹かれました。これから学んでいきますので、ご指導よろしくお願いします」と作者のコメント。

有季定型の俳句では、季語が主役になる必要があります。この句の場合は、季語「桜餅」が動きます。つまり、他の季語「草餅」「鶯餅」などにしても、ひとまず成立してしまいます。
“ポイント”

春の雪不調出し合い老ランチ

遥琉

夏井いつき先生より
「急な春の雪で心配しましたが、程よく溶けて、約束の日に友人と会えました。会うと元気になれます」と作者のコメント。

中七下五の句意が明確に読み取れません。「老ランチ」という言葉にも無理があります。
“参った”

蝶々追う幼子の手もひらひらと

風羽

夏井いつき先生より
「幼子」と書かなくても、「子」と書くだけで、映像は描けます。
“ポイント”

寝転んでほうばる頬へ菜花揺れ

アサギマダラ

夏井いつき先生より
「菜花」は「花菜」? 季語としては、「花菜」が一般的です。
“参った”

尻尾は僕頭は君へ季節限定桜餡

青柳四万十

夏井いつき先生より
「三十年ほど前、『古畑任三郎』という推理ドラマの熱心な視聴者でした。 鈴木保奈美さんが犯人の回で、妻(鈴木保奈美さん)が夫を殺す手口に、たい焼きを使っていました。 妻は尻尾側にのみ毒を盛る、夫は鯛焼きを半分こする、レディファーストで、あんこがたくさん入っている頭側を妻に分ける。 同じたい焼きを食べたのに、なぜ夫だけ死んだのか。 というドラマの内容を思い出して詠んだ句です」と作者のコメント。

うーむ……お気持ちはわかりますが、そのドラマの核となる部分を、十七音に押し込めてしまうのは、少々無理があります。まずは、自分の体験を俳句にするところから、コツコツ練習していきましょう。
“ポイント”

菜花の丘で母偲ぶ菓子半分残し

竹衣袴

夏井いつき先生より
「母の好きな散歩道に、今年も菜の花が咲いています。母の好物だったどら焼きを持ってきましたが、二人で分けた思い出が蘇り、残りの半分はどうしても食べられませんでした」と作者のコメント。

「菜花」は「花菜」? 音数が溢れています。言葉の優先順位をつけて、単語を一つ二つ外してみましょう。
“ポイント”

母の好きな菜花を供花に甘味を分けり

竹衣袴

夏井いつき先生より
「春らしい可憐な黄色い菜の花を好んだ母を思いながら、詠みました。歩いた散歩道は今年も菜の花が綺麗ですが、母はもういません。いつも二人で分けていた菓子を、今日はひとりで分けました」と作者のコメント。

「菜花」は「花菜」? 表現したい内容は理解できます。少し言葉を整理して、調べを整えてみましょう。
“ポイント”

おひたしにできぬ可憐よ菜花咲く

細葉海蘭

夏井いつき先生より
「菜花」は「花菜」? 季語としては、「花菜」が一般的です。
“ポイント”