第41回「お腹が空いていましたので」《ハシ坊と学ぼう!⑫》
評価について
本選句欄は、以下のような評価をとっています。
「並選」…推敲することで「人」以上になる可能性がある句。
「ハシ坊」…ハシ坊くんと一緒に学ぶ。
特に「ハシ坊」の欄では、一句一句にアドバイスを付けております。それらのアドバイスは、初心者から中級者以上まで様々なレベルにわたります。自分の句の評価のみに一喜一憂せず、「ハシ坊」に取り上げられた他者の句の中にこそ、様々な学びがあることを心に留めてください。ここを丁寧に読むことで、学びが十倍になります。
「並選」については、ご自身の力で最後の推敲をしてください。どこかに「人」にランクアップできない理由があります。それを自分の力で見つけ出し、どうすればよいかを考える。それが最も重要な学びです。
安易に添削を求めるだけでは、地力は身につきません。己の頭で考える習慣をつけること。そのためにも「ハシ坊」に掲載される句を我が事として、真摯に読んでいただければと願います。
季重なり
寒波来る屋台たいやきしっぽまで
美月 舞桜
「寒波来る」「鯛焼」、どちらも季語ではあります。
春の昼湖畔広がる珈琲香
数哩
下五「珈琲香」は、少々寸詰まりな表現です。
脳活と草餅ひとつ3時かな
ちづ姫
"ピアノマン"聴き土手散歩鯛焼食む
啓太郎
「ビリー・ジョエルの『ピアノ・マン』を聴きながら、鯛焼きを食う土手散歩。寒さにまけずほっこりします」と作者のコメント。
ちょっと内容が多すぎます。この内容ならば、三句ぐらいに分けられそうですね。
初蝶やふわりと舞いて風を知り
四季
この菜の花はなんのなのはなぬぬぬぬぬ
滝川橋
上五中七は、よいですね。まさに実感。下五の着地はちょっと安易かな。ここが、勝負のしどころですよ。
「待て桜」土手は黄色の初舞台
風輝
「黄色」は菜の花なのだろうと思いますが、下五「初舞台」という比喩がやや大げさ。季語「桜」も主役にはなっていませんね。
チョコ2つ渡せぬままに春ショール
風輝
菜花風カフェまでゆるき坂のある
ミンコフスキー
「菜花」は「花菜」? 季語としては、「花菜」が一般的です。
菜花の土手和菓子の紙をそっと解き
桜貝
「菜花」は「花菜」? 季語としては、「花菜」が一般的です。
小正月痩せ細る子等ユニセフへ
みよこ
「娘婿がポケットマネーで寄付をしており、私も見習って始めました。今年一回目は小正月でした。振込用紙が届いたら振り込むぐらいですが、少しでも長くと思っています。あの子等の目が訴えているようで……」と作者のコメント。
お気持ちはよく分かります。ただ、書きたいことを詰め込んでしまってますので……例えば、「ユニセフへ」と「小正月」で一句。「痩せ細る子らの目」とでもユニセフのポスターの子供たちを描写して、季語と取り合わせて一句、というふうに、二句に分けて作り直してみましょう。
春昼やお口に餡のただならぬ
あおい結月
中七下五の表現は愉快ですね。季語が動きそうですが、ベストの季語を探すのは、ちょっと時間がかかるかも。気長に探してみましょう。
大空やリュックの重し花椰菜
にも
「~や」の詠嘆で切れて、「重し」の終止形で切れての三段切れです。どちらか一つを残して、全体を推敲してみましょう。
同窓会菜花連れてバスの群れ
とまま
「菜花」は「花菜」? 季語として、「花菜」が一般的です。
春の川土より聴こゆ大合唱
ちえのわ
「土より」聞こえてくるものが「大合唱」している? 一体なんだろうと、不思議に思います。
冬の風勝るドラヤキ口を開く
の菊
「ドラヤキ」の片仮名から、そのまま「口」となるので、「ドラヤキロ」って何? と思ってしまいました。
いちめんの菜花仲直りのあんぱん
海月のあさ
福岡に維新ありけり望東尼の梅
こちのうめか
歴史上の出来事を俳句にするのが悪いわけではありませんし、この句の形にはなっています。が、まずは自分の体験を切り取り描写するところから、練習を始めましょう。
アルペジオやほどけてしまう春の土手
舟端玉
発想はよいです。調べを少し整えられるとよいのですが。
赤赤とマグマ子孫か芝桜
咲織
中七の句意が、ちょっと読み取りがたいか。
揺れるピアスにしたし佐保姫さがそうか
だいやま
大匙で黒豆喰ふお八つ時
ときちゅら
「いつまでも余っているお節料理の黒豆を、一月末にはおやつに大匙で掬って食べる様子です」と作者のコメント。
「~で」が散文的な使い方。「大匙にすくふ黒豆」とすれば、「で」を回避できます。「喰ふ」と書かなくても、「すくふ(掬ふ)」とあれば、食べるに違いないと想像できます。
どら焼きは流動食へポチうらら
殻ひな
「愛犬の介護をしていた当時、だんだん食が細くなっていくので、エサだけでなくどら焼きなど甘い物をミキサーにかけて食べさせていました。 下五を『日向ぼこ』にしたら、犬の介護と思う人は少ないでしょうが、いろんな人に共感してもらえるかなという気持ちと、『ポチうらら』だと材料が多すぎるけど、私の中の映像は、春のひだまりの中で幸せそうに流動食のどら焼きを食べる愛犬の姿なので、『ポチうらら』が近いかなという思いで迷いました」と作者のコメント。
内容が多すぎるのかな。俳句だけ読むと、最後の季語がいかにも付け足しめいた印象に終わります。
小春日和散歩後に町中華
トリケイ
この内容でしたら、五七五の定型に入りますよ。
空きっ腹にビールプッハーハー
茶雨
お気持ちは分かりますが、あまりにも有り勝ちな「プッハーハー」です……ざんねん。
竜天に落ちし鱗の万花咲く
白秋千
「この兼題写真は春の堤かなという発想から、第30回「常念道祖神の桜」《ハシ坊と学ぼう!⑤》〈竜天に登る摩滅激しき塞の神〉で、傍題『竜天に』があると教えていただき、再考しました」と作者のコメント。
前回の句は、〈竜天に摩滅烈しき塞の神〉でよいと思います。今回の句は、それとは別の句と捉えてよいのだろうとは思いますが、「竜天に落ちし」と続く展開は、誤読をまねきがちで、あまりお勧めできません。
鼻唄は電波ソングに菜の花や
杜若友哉
語順と助詞を一考してみましょう。