第41回「お腹が空いていましたので」《ハシ坊と学ぼう!⑮》
評価について
本選句欄は、以下のような評価をとっています。
「天」「地」「人」…将来、句集に載せる一句としてキープ。
「並選」…推敲することで「人」以上になる可能性がある句。
「ハシ坊」…ハシ坊くんと一緒に学ぶ。
「並選」…推敲することで「人」以上になる可能性がある句。
「ハシ坊」…ハシ坊くんと一緒に学ぶ。
特に「ハシ坊」の欄では、一句一句にアドバイスを付けております。それらのアドバイスは、初心者から中級者以上まで様々なレベルにわたります。自分の句の評価のみに一喜一憂せず、「ハシ坊」に取り上げられた他者の句の中にこそ、様々な学びがあることを心に留めてください。ここを丁寧に読むことで、学びが十倍になります。
「並選」については、ご自身の力で最後の推敲をしてください。どこかに「人」にランクアップできない理由があります。それを自分の力で見つけ出し、どうすればよいかを考える。それが最も重要な学びです。
安易に添削を求めるだけでは、地力は身につきません。己の頭で考える習慣をつけること。そのためにも「ハシ坊」に掲載される句を我が事として、真摯に読んでいただければと願います。
緩らかに揺れる油ら菜昼の宴
萌黄多恵
夏井いつき先生より
「緑が少ない堤で春先、十文字の素朴な油ら菜を見つけると、春の到来を思わせ、気持ちを休ませてくれます(カナダ平原地帯でさえ)」と作者のコメント。
下五「~の宴」は、やや使い古された表現です。俳句は描写。どんな様子がそう見えたのか。そこを描写しましょう。
「緑が少ない堤で春先、十文字の素朴な油ら菜を見つけると、春の到来を思わせ、気持ちを休ませてくれます(カナダ平原地帯でさえ)」と作者のコメント。
下五「~の宴」は、やや使い古された表現です。俳句は描写。どんな様子がそう見えたのか。そこを描写しましょう。
オレンジに黄色にピンク春よ春
福朗
夏井いつき先生より
「散歩道の家の庭には、春になるとパステルカラーの花が咲き、やっと寒さが終わって春が来たと飛び上がるような嬉しい気持ちになります。色だけで気持ちを表せているでしょうか」と作者のコメント。
お気持ちは分かるのですが、俳句に書かれているのは色のみです。これが、花だと分かるような表現を一つ入れてみましょう。
「散歩道の家の庭には、春になるとパステルカラーの花が咲き、やっと寒さが終わって春が来たと飛び上がるような嬉しい気持ちになります。色だけで気持ちを表せているでしょうか」と作者のコメント。
お気持ちは分かるのですが、俳句に書かれているのは色のみです。これが、花だと分かるような表現を一つ入れてみましょう。
鶯や餡子炊く香よ里山に
春瑛
夏井いつき先生より
「鶯や」の詠嘆で切れ、さらに「~香よ」の詠嘆で切れる三段切れです。「よ」を外して、全体を整えてみましょう。
「鶯や」の詠嘆で切れ、さらに「~香よ」の詠嘆で切れる三段切れです。「よ」を外して、全体を整えてみましょう。
冬ぬくし青雲の下銅鑼焼き食う
順孤
夏井いつき先生より
この内容でしたら、五七五の定型におさまりますよ。推敲してみましょう。俳句は言葉のパズル。不要な言葉がないか。そこから考えてみましょう。
焼芋の割りて小さき方を子へ
碧月ゆう
夏井いつき先生より
「夕飯の買い物と一緒に、焼き芋を一本買ってきました。二つに割った小さい方を子に渡したのは、夕飯前だからではなく、私が大きい方をいただきたかったからです」と作者のコメント。
「焼芋の」ではなく「焼芋を」割るのですね。
添削例
焼芋を割りて小さきを子へわたす
「夕飯の買い物と一緒に、焼き芋を一本買ってきました。二つに割った小さい方を子に渡したのは、夕飯前だからではなく、私が大きい方をいただきたかったからです」と作者のコメント。
「焼芋の」ではなく「焼芋を」割るのですね。
添削例
焼芋を割りて小さきを子へわたす
山笑ふ遠しいただき握りめし
高見 正太
夏井いつき先生より
中七この語順であれば「遠きいただき」になりますし、「遠し」としたいのであれば、「いただき遠し」となります。
中七この語順であれば「遠きいただき」になりますし、「遠し」としたいのであれば、「いただき遠し」となります。
菜花狩り趣深く腹満たす
飯島寛堂
夏井いつき先生より
「菜花」は「花菜」? 「花菜」という書き方が、基本のようです。
自転車そろり籠のやわき牡丹餅
ただなかのめ
夏井いつき先生より
後半は、「籠のぼた餅やわらかし」ぐらいかなあ。
春兆す野道走りし五輪人
天龍蘇人
夏井いつき先生より
「五輪人」は、いかにも寸詰まりな表現です。
「五輪人」は、いかにも寸詰まりな表現です。
沢庵の噛む音響くお斎かな
閑陽
夏井いつき先生より
「お斎」は、葬儀・法事の後に行われる会食の席。この句の内容でしたら、「沢庵を噛むや」とすれば、「音響く」と書かなくても、その音は聞こえてきます。残った音数をどう使うか。ここが工夫のしどころです。
厳寒やアイス取り合う三兄弟
光司
夏井いつき先生より
「寒い冬にもかかわらず、アイスを取り合う三兄弟を眺めています」と作者のコメント。
「厳寒」は、ちょっと行き過ぎの季語かもしれません。「冬のアイス」とすれば、季重なりの問題も解消しますので、推敲してみましょう。
「寒い冬にもかかわらず、アイスを取り合う三兄弟を眺めています」と作者のコメント。
「厳寒」は、ちょっと行き過ぎの季語かもしれません。「冬のアイス」とすれば、季重なりの問題も解消しますので、推敲してみましょう。
原っぱのビブリオバトル菜の花忌
あきの風さん
夏井いつき先生より
「春の土手の下に広がる原っぱで、家族や友人たちが思い思いに好きな本を紹介しあう光景が浮かびました。ビブリオバトルよりゆるいイメージなのですが、適当な言葉が見つかりません。ご教示いただけますと幸いです」と作者のコメント。
「ビブリオバトル」という単語を選んだのが悪いとは思わないのですが、作者としては「家族や友人たちが思い思いに好きな本を紹介しあう光景」を表現したいのですね。だとすれば、「絵本見せ合う」ぐらいに率直に書けばよいかと思います。そうなってくると、下五の季語は一考の必要がでてきますね。
「春の土手の下に広がる原っぱで、家族や友人たちが思い思いに好きな本を紹介しあう光景が浮かびました。ビブリオバトルよりゆるいイメージなのですが、適当な言葉が見つかりません。ご教示いただけますと幸いです」と作者のコメント。
「ビブリオバトル」という単語を選んだのが悪いとは思わないのですが、作者としては「家族や友人たちが思い思いに好きな本を紹介しあう光景」を表現したいのですね。だとすれば、「絵本見せ合う」ぐらいに率直に書けばよいかと思います。そうなってくると、下五の季語は一考の必要がでてきますね。
「そば清」の如く食むらむ春の草
えりまる
夏井いつき先生より
「そば清」は、お蕎麦屋さんの屋号ですよね。誰が? 何が? そのように食べているのか。読みを迷います。
「そば清」は、お蕎麦屋さんの屋号ですよね。誰が? 何が? そのように食べているのか。読みを迷います。
初蝶や蜂蜜入りの菓子欠片
入道まりこ
夏井いつき先生より
並選のもう一句〈春の日や与那国馬の腹旋毛〉も同じなのですが、上五中七までは良いのです。が、下五が「菓子欠片」「腹旋毛」と、無理矢理言葉を押し込めている感じになっています。どちらもここが改善されると、人選になる素材です。
並選のもう一句〈春の日や与那国馬の腹旋毛〉も同じなのですが、上五中七までは良いのです。が、下五が「菓子欠片」「腹旋毛」と、無理矢理言葉を押し込めている感じになっています。どちらもここが改善されると、人選になる素材です。
藤井風無限ループの目借時
蛙目
夏井いつき先生より
「藤井風」というのが、一読分かりにくいです。中七を「無限ループ」とせずに、上五が歌であることが分かるような情報を入れてみましょう。「無限ループ」と説明しなくても、「目借時」という季語がそんな様子を想像させてくれるはずです。
「藤井風」というのが、一読分かりにくいです。中七を「無限ループ」とせずに、上五が歌であることが分かるような情報を入れてみましょう。「無限ループ」と説明しなくても、「目借時」という季語がそんな様子を想像させてくれるはずです。
早弁の土手たんぽぽの綿毛
蛙目
夏井いつき先生より
「ちょっと早い昼食を、仕事を抜けて食べるちょっとした背徳感と、ワクワクを味わいながら土手に行くと、たんぽぽの綿毛が今まさに飛ばんとする様子が、自由とか浮遊感の今の自分の行動と繋がったという句です」と作者のコメント。
この内容でしたら、五七五に入りますよ。推敲してみましょう。
「ちょっと早い昼食を、仕事を抜けて食べるちょっとした背徳感と、ワクワクを味わいながら土手に行くと、たんぽぽの綿毛が今まさに飛ばんとする様子が、自由とか浮遊感の今の自分の行動と繋がったという句です」と作者のコメント。
この内容でしたら、五七五に入りますよ。推敲してみましょう。
恵方巻き婆婆のは二本口に入り
山本芳山
夏井いつき先生より
「もう大きくなっているのに、婆婆は子供用に細く作ってくれています。婆婆を笑わせようと二本、口に入れて見せました」と作者のコメント。
俳句のこの字面で、作者コメントにある様子を読み取るのは、ちょっと難しいです。おばあちゃんは、子供用に恵方巻きを細く作ってくれる。これを書くだけで、俳句になりますよ。
「もう大きくなっているのに、婆婆は子供用に細く作ってくれています。婆婆を笑わせようと二本、口に入れて見せました」と作者のコメント。
俳句のこの字面で、作者コメントにある様子を読み取るのは、ちょっと難しいです。おばあちゃんは、子供用に恵方巻きを細く作ってくれる。これを書くだけで、俳句になりますよ。
堤防の向こうはビル群野蒜摘む
春野つくし
夏井いつき先生より
「向こうは」の「は」を外せば、人選です。
御供えの徐々にへる減る初いちご
ミツコ
夏井いつき先生より
「『初いちご』はいつの季語になるのか分かりませんが……」と作者のコメント。
「初物の苺」という意味でしょうか? 「初物の苺」を仏壇に供えるで、一句。それが減っているで更に一句。切り分けて二句にしてみましょう。
「『初いちご』はいつの季語になるのか分かりませんが……」と作者のコメント。
「初物の苺」という意味でしょうか? 「初物の苺」を仏壇に供えるで、一句。それが減っているで更に一句。切り分けて二句にしてみましょう。
菜の花を一輪亡き父のジャンパーに
こはる
夏井いつき先生より
「春が来る前に他界した父を想って」と作者のコメント。
「菜の花」という花の特徴を思う時、「一輪」がよいのか、悩ましいです。「他界した父を想って」ということでしたら、別の切り口で表現することを一考してみてはどうでしょう。
「菜の花」という花の特徴を思う時、「一輪」がよいのか、悩ましいです。「他界した父を想って」ということでしたら、別の切り口で表現することを一考してみてはどうでしょう。
ホカホカのたい焼き一匹春の土手
ちえ湖
夏井いつき先生より
「たい焼き」も季語ではありますが、この句の場合は脇役にしたいのだろうと推測します。「ホカホカ」「一匹」どちらか一つにして、「春の土手」の様子が見えてくるように、全体を推敲してみましょう。