第25回 俳句deしりとり〈序〉|「のお」①
始めに
出題の句からしりとりの要領で俳句をつくる尻二字しりとり、はじまりはじまり。
第25回の出題
兼題俳句
闘魚とはしづかに溺れゆく炎 嶋村らぴ
兼題俳句の最後の二音「のお」の音で始まる俳句を作りましょう。
※「のお」という音から始まれば、平仮名・片仮名・漢字など、表記は問いません。
【のお】の検索ヒットせず年の果て
スマイリィ
羽根の音水面を走る2羽の鴨
律
夏昼寝猫の尾を踏み怒らせり
いっちょうかみ
のおとのう区別がつかぬ蔓無南瓜(ズッキーニ)
星瞳花
ズッキーニってこんな漢字書くの!? たしかに育ってる途中の写真をみると文字通り蔓の無い南瓜っぽい。勉強になりますなあ。蔓無南瓜(ズッキーニ)への衝撃はさておき、《星瞳花》さんとおなじく「のお」と「のう」の区別に悩んだ人は多かったみたい。辞書を確認すると「炎(ほのお)」と表記されています。歴史的仮名遣いの場合は表記上「ほのほ」となりますが、発音はいずれも共通して「ほのお」です。が、日常の会話では必ずしも正しい発音がされているわけではありません。「のお」なのか「のう」なのか、どっちともとれるような曖昧な発音を見聞きすることも多いはず。その結果なのか「のお」とは似て非なる二音から始まる句があれこれ届いております。
濃厚ココアコロコロやる気来る
みえこ
濃霧の夜声のみ響く硫黄泉
南の爺さま
農業を退く時来たり春炬燵
アサギマダラ
農兵の辛酸冬の北海道
立町力二
こちらは「農(のう)」。濃厚や濃霧以上に「う」の発音が明確になっているように感じるのは僕が農業高校出身だからなのかしら。《立町力二》さんの句の「農兵」とは明治時代の屯田兵を指す言葉と考えて良いでしょう。北海道出身の漫画家・荒川弘先生が『百姓貴族』のなかでご先祖様は開拓民だったと描かれてたけど、過酷な自然はまさに「辛酸」だったんだろうなあ……。
能天気な街角ピアノ春あらし
そうわ
能無しの脳の萎縮や虚栗
佐倉英華
能舞台体幹鍛え春を舞う
団塊のユキコ
凌霄や愛も呪いも縛ること
井上れんげ
野を焼きてやうやう腹を括りけり
清瀬朱磨
野を走る園児の声や水温む
孤寂
のを書いて俯向く彼女桜貝
大切千年たいせつせんねん
のおみそと発するギャルよ桑苺
片山千恵子
のおのおと温泉のあと今年酒
槇 まこと
のおのおと生きる八十路の昼寝かな
ごとう真樹
のおのおと生き延びており蜆汁
仁
のおのおと巣を張り待つは女郎蜘蛛
瞳杏
ひたすら「のう」や「のを」、果ては「のおのお」にまで翻弄されておりますが、さあお待ちかね。同じ「のおのお」でも次の句はルールをクリアしておりますぞ!
のおのおとジョセフの語る歌舞伎かな
布川 洋一
「ジョセフ」ってジョジョ第二部の主人公? ミュージカル化されたのは知ってたけど、歌舞伎にもなってるのか?? 実はジョジョと全然関係ない句だったらかなしいな……。そしてそして、しりとり成功の句が登場したのが嬉しくて見落としていたけど、「歌舞伎」単体だと季語にならないじゃあありませんか。OH MY ゴッド! 「初芝居」や「村芝居」、あるいは「顔見世」なら季語になるんだけどねえ。
《②へ続く》