俳句deしりとりの結果発表

第25回 俳句deしりとり〈序〉|「のお」①

俳句deしりとり
俳句deしりとり〈序〉結果発表!

始めに

皆さんこんにちは。俳句deしりとり〈序〉のお時間です。

出題の句からしりとりの要領で俳句をつくる尻二字しりとり、はじまりはじまり。
“良き”

第25回の出題

兼題俳句

闘魚とはしづかに溺れゆく炎  嶋村らぴ

兼題俳句の最後の二音「のお」の音で始まる俳句を作りましょう。

 


※「のお」という音から始まれば、平仮名・片仮名・漢字など、表記は問いません。

のお】の検索ヒットせず年の果て

スマイリィ

もはや恒例になりつつある「そんな言葉みつかりません!」の悲鳴。「年の果て」が呆然と途方に暮れる取り合わせでありますなあ。とはいえ、《スマイリィ》さんはみつからないなりに「のお」の二音からしりとりの一句を始められてるんだからエライ。まずはその一歩からでありますぞ~!
“良き”

羽根の音水面を走る2羽の鴨

夏昼寝猫の尾を踏み怒らせり

いっちょうかみ

しりとりであることを忘れたのか、「のお」の二音から始まる言葉が見つからなさすぎてヤケになったのか(笑)。「の音」「の尾」とそれぞれ一句のなかに「のお」の二音が含まれてはいますが、これではしりとり不成立。しりとり俳句ではお題となった句の最後の二音から自分の句を作り始めなければならないのです。
“ポイント”

のおとのう区別がつかぬ蔓無南瓜(ズッキーニ)

星瞳花

ズッキーニってこんな漢字書くの!? たしかに育ってる途中の写真をみると文字通り蔓の無い南瓜っぽい。勉強になりますなあ。蔓無南瓜(ズッキーニ)への衝撃はさておき、《星瞳花》さんとおなじく「のお」と「のう」の区別に悩んだ人は多かったみたい。辞書を確認すると「炎(ほのお)」と表記されています。歴史的仮名遣いの場合は表記上「ほのほ」となりますが、発音はいずれも共通して「ほのお」です。が、日常の会話では必ずしも正しい発音がされているわけではありません。「のお」なのか「のう」なのか、どっちともとれるような曖昧な発音を見聞きすることも多いはず。その結果なのか「のお」とは似て非なる二音から始まる句があれこれ届いております。

“とてもいい“

厚ココアコロコロやる気来る

みえこ

霧の夜声のみ響く硫黄泉

南の爺さま

いずれも「濃(のう)」の一字から始まる句。日常生活では「のーこー」「のーむ」と発音することもあるだろうなあ、と体感としては納得するのですが……うーん、やっぱりしりとり的には「濃厚(のうこう)」「濃霧(のうむ)」と考えるべきじゃないかなあ。となると、しりとり不成立、残念! 個人的には、濃厚ココアの温かな甘さがやる気をなだめすかせるように連れてきてくれる感覚は好きなんだけどねえ。
“ポイント”

業を退く時来たり春炬燵

アサギマダラ

兵の辛酸冬の北海道

立町力二

こちらは「農(のう)」。濃厚や濃霧以上に「う」の発音が明確になっているように感じるのは僕が農業高校出身だからなのかしら。《立町力二》さんの句の「農兵」とは明治時代の屯田兵を指す言葉と考えて良いでしょう。北海道出身の漫画家・荒川弘先生が『百姓貴族』のなかでご先祖様は開拓民だったと描かれてたけど、過酷な自然はまさに「辛酸」だったんだろうなあ……。

“ポイント”

天気な街角ピアノ春あらし

そうわ

無しの脳の萎縮や虚栗

佐倉英華

舞台体幹鍛え春を舞う

団塊のユキコ

「能(のう)」からそれぞれ違う単語へと枝分かれした三句。個人的な感覚だけど「能天気」は長音の「のー」、「能無し」は場面によって「のー」と「のう」が切り替わり、「能舞台」はハッキリと「のう」と発音することが多い気がする。とはいえ、字としての読みはいずれも「のう」なんだよなあ。残念!
“とてもいい“

霄や愛も呪いも縛ること

井上れんげ

「のお」から始まる季語を探した結果、これや! と辿り着いたのかしら。しかし残念、「のおぜん」ではなく「のうぜん」なのです。中七下五のフレーズに対して、他の植物に絡みつく蔓性の「凌霄」の取り合わせはやや近くはありますが、その分理解はしやすい。近さを良しとするか否かで評価は分かれそうですねえ。
“ポイント”

 

野を焼きてやうやう腹を括りけり

清瀬朱磨

野を走る園児の声や水温む

孤寂

のを書いて俯向く彼女桜貝

大切千年たいせつせんねん

単独の漢字一文字ではなく「の」+「を」のケースもありました。地域によっては「お」と「を」の発音を区別せず、どちらも「お」と発音する場合があると聞きますね。むしろ「を」を「WO」で発音する地域の方が少数派? と某番組でかつて取り上げられ驚いた記憶があります。助詞「を」を日々の発音の感覚として「お」と認識しているとすれば、「炎(ほのお)」からこのしりとりへと繋がるのは理解できる……けど、やっぱり文字としては「を」ではなく「お」になっている句を取りたいよなあ。
“ポイント”

 

のおみそと発するギャルよ桑苺

片山千恵子

漢字ではなくひらがなで表記したパターン。雑に発音すると「のおみそ」「のーみそ」になるけど、正しくは「脳(のう)」だよねえ。季語のチョイスがシブイ。桑苺一緒にとったり食べたりしてくれるのって良い子じゃね??
“ポイント”

 

のおのおと温泉のあと今年酒

槇 まこと

のおのおと生きる八十路の昼寝かな

ごとう真樹

のおのおと生き延びており蜆汁

のおのおと巣を張り待つは女郎蜘蛛

瞳杏

温泉とお酒、長生きの昼寝、食事、捕食者の余裕。句の内容からして、上五はいずれも副詞と考えて良いでしょう。心配などがなくなりゆったりとした気分でいる様を表す言葉ですが、実は正しい表記は「のうのう」なのです。残念。

ひたすら「のう」や「のを」、果ては「のおのお」にまで翻弄されておりますが、さあお待ちかね。同じ「のおのお」でも次の句はルールをクリアしておりますぞ!
“良き”

のおのおとジョセフの語る歌舞伎かな

布川 洋一

呼びかけの「のお」! これならOKじゃのぉ~!

「ジョセフ」ってジョジョ第二部の主人公? ミュージカル化されたのは知ってたけど、歌舞伎にもなってるのか?? 実はジョジョと全然関係ない句だったらかなしいな……。そしてそして、しりとり成功の句が登場したのが嬉しくて見落としていたけど、「歌舞伎」単体だと季語にならないじゃあありませんか。OH MY ゴッド! 「初芝居」や「村芝居」、あるいは「顔見世」なら季語になるんだけどねえ。

《②へ続く》
“ポイント”