写真de俳句の結果発表

第42回「降車ボタン」《天》

評価について

本選句欄は、以下のような評価をとっています。

「天」「地」「人」…将来、句集に載せる一句としてキープ。
「並選」…推敲することで「人」以上になる可能性がある句。
「ハシ坊」…ハシ坊くんと一緒に学ぶ。

特に「ハシ坊」の欄では、一句一句にアドバイスを付けております。それらのアドバイスは、初心者から中級者以上まで様々なレベルにわたります。自分の句の評価のみに一喜一憂せず、「ハシ坊」に取り上げられた他者の句の中にこそ、様々な学びがあることを心に留めてください。ここを丁寧に読むことで、学びが十倍になります。

「並選」については、ご自身の力で最後の推敲をしてください。どこかに「人」にランクアップできない理由があります。それを自分の力で見つけ出し、どうすればよいかを考えるそれが最も重要な学びです。

安易に添削を求めるだけでは、地力は身につきません己の頭で考える習慣をつけること。そのためにも「ハシ坊」に掲載される句を我が事として、真摯に読んでいただければと願います。

降車ボタン

42

 

八月の降車ボタンが赫黒い

芦幸

 

「八月」は、単にその時期を指すだけでなく、時代と共に様々な本意が蓄積されてきた季語です。

元々、お盆の月ではありましたが、第二次世界大戦によって、広島・長崎の「原爆忌」が、更に「終戦記念日」という季語が生まれるに至りました。現在における「八月」とは、生と死を内包した質量の重い季語となっています。季語とは、時代を表すインデックス(索引)でもあるのです。

「降車ボタン」というモノに、「八月の」という限定の意味が加わったとたん、この「降車ボタン」は比喩的な意味を持つようになります。ただのボタンではなくなるのです。

乗っているバスは、ただのバスではなく、人類の滅びのバスではないか。比喩的象徴として表現された「降車ボタン」ではないか。果たして、私たちはこのバスから降りられるのだろうか。こんなふうに、読み手は「八月」という季語の世界に深入りしていきます。

更に慄然とさせられるのは、そのボタンの色です。「赫黒い」という「赫」の一字は、赤々と燃えるように輝くという意味を持ちます。その赤を含んだ黒さは、まるで人々が流し続けてきた血の色のようでもあります。

下五の口語表現には、強いリアリティもあり、声に出して呟くとじわじわと怖ろしさが増してきます。

“夏井いつき”