俳句deしりとりの結果発表

第26回 俳句deしりとり〈序〉|「るを」③

俳句deしりとり
俳句deしりとり〈序〉結果発表!

始めに

皆さんこんにちは。俳句deしりとり〈序〉のお時間です。

出題の句からしりとりの要領で俳句をつくる尻二字しりとり、はじまりはじまり。
“良き”

第26回の出題

兼題俳句

みせばやの垂れゐるむかし溶岩(らば)なるを  沼野大統領

兼題俳句の最後の二音「るを」の音で始まる俳句を作りましょう。

 


※「るを」という音から始まれば、平仮名・片仮名・漢字など、表記は問いません。

るをのばしゆつくり蜜をすふ蝶々

でんでん琴女

お次は文字の形ではなく、自然界に存在する「る」の観察。蝶の口吻が伸びる様子をスロー再生で見たような一物仕立てであります。これほどどんぴしゃに「る」の形をしてるものってなかなかないんじゃなかろうか。あとは薇くらい?
“ポイント”

「る」を「し」へと変えし決断山笑う

欣喜雀躍

「る」を消して「ない」「別れない」朧月

三浦海栗

「る」を消して「た」とそっと書き藪椿

うめやえのきだけ

「る」を「いた」に変える届け出夏終わる

二城ひかる

言葉の中に存在する「る」を見出した人たち。「る」の一音を変えるだけで、過去形になったり否定形になったりするんだから日本語って面白い。生み出されるストーリーが後ろ向きなものになるか、前向きなものになるか、並べて見ると作者の性格が垣間見えるような気がするなあ。うちも両親が離婚してるので、なんだか《二城ひかる》さんの句には親近感が湧きまする。世の皆様、知ってます? 離婚届って薄緑色なんよ。儚い緑が一層「夏終わる」っぽいよネ。
“良き”

るを命令形にしろ山眠れ

さおきち

「る」を「ろ」で読めばほがらかや風光ろう

七瀬ゆきこ

「る」の一音を過去形へ変化させる人もいれば、他の形に変化させた人もいました。《さおきち》さんは命令形の「山眠れ」。中七までの流れも強い口調で命令を飛ばしております。一方、《七瀬ゆきこ》さんは意思を表す「風光ろう」。上五からの展開も、読んだとしたら、と仮定の形で語る物腰が柔らか。それぞれ狙った内容の下五に落とし込むためのアプローチは、さながらゴルフのグリーン上の寄せのようでもあります。玄人だねえ。
“ポイント”

るをるるにらるをらるるに春るるる

たきるか

文語で俳句をやってる人には避けては通れない文法のお話。なんじゃこりゃあ呪文かいな!? と思っちゃう人もいるかもしれないねえ。終止形「る」を連体形「るる」に活用させているのです。「春るるる」は理解を深めつつ勉強を楽しんでる鼻歌なのか、それとも頭から煙出しつつ打ちひしがれているのか、どっちかな~(笑)。

“とてもいい“

Le(る)をつける仏語の試験春深し

ピアニシモ

Leをつけてフランス猫の恋るるる

戸村友美

leを巧く発音できず巴里は春

ときちゃん

leを付くる言の葉の色巴里の秋

めいめい

外国語を勉強する人たち。同じ綴りでも言語によって発音は変わってきますが、「Le」を(る)と読むのはやはりフランス語でしょうか。仏語、巴里、といったそれぞれの句の内容からしても。《ピアニシモ》さんが「試験」という勉強のフィールドで描いてる一方、他の三句は学習風景というよりもフランスでの暮らしぶりを語る色合いが強く出ています。《めいめい》さんの、言の葉に色があるって感覚、良いなあ。特定の単語とも考えられるし、フランス語そのものへの感慨とも考えられます。イメージ上の「色」が、巴里の秋の黄金色の実景へとオーバーラップしていくようで美しい。
“ポイント”

るを弾く舌さき軽く春うごく

だいやま

「る」を舌と襞へうららに住まわせる

北里有李

実際に発音してみたシリーズ。舌の動きを意識しながら発音してみると、《だいやま》さんの句のとおり、舌は小さく口の上側を弾いているのがわかります。口中の細かな動きと大きな時候の季語である「春うごく」の取り合わせの落差が面白い。

かたや《北里有李》さんは「襞」とまで言及してるのが日本語の発音っぽくなくて興味そそられるなあ。舌だけでなく口蓋の襞ひとつひとつにまでうららを意図的に「住まわせる」とは。巻き舌の「る」をしっかり意識しなきゃいけない音じゃないか? イタリア語のRの音みたいな。丁寧な発音ひとつひとつを探求し楽しむ気持ちが「うらら」に籠もっております。

“ポイント”

るを知るの空欄埋めよ鳥雲に

いしとせつこ

探求といえば、この句も不思議な魅力がありますねえ。「るを知るの空欄」? 一文字目「る」の前に書かれていない文字を推理せよ、ということか。個人的に思いつくのは「足るを知る」、くらいかなあ……他にも候補はあるんだろうか……。

ちなみに調べて知ったけど「足るを知る」は「足ることを知る」ともいい、中国の思想家・老子の言葉なのだそうです。へぇー。
“とてもいい“

るををーん古刹より来る鐘朧

一生のふさく

るをんるをん天狼ゆらす風力タービン

ちえ湖

るををんるををん流氷の鳴く夜更け

板柿せっか

るをんと広げるるんと畳む蝶の翅

津々うらら

るをるをとひかりを弾きさより舟

岸来夢

るをををと吐く狐火の断末魔

広島じょーかーず

るをーんるあーんトマトの嘆きもっと水

芳野

果敢なオノマトペ一族。なんらかの音を耳で捉えていると思しき人もいれば、直感的にオノマトペを引きずり出してきている人もいます。《一生のふさく》さん、《ちえ湖》さんは鐘や風力タービンの回る振動を感知できる気がしますが、《板柿せっか》さんの「るををん」は、流氷の音にどれだけ忠実なのか南国愛媛の人間からするとわからなくて悔しい……。現地に聞きに行ったらこんな音してるのかなあ。

《津々うらら》さんは蝶の動きをオノマトペで描写しようと試みた形。蝶の体に対して大きすぎる翅のアンバランスさが感じられてグッド。そこから半歩虚の世界へと踏み込んでいくのが《岸来夢》さんと《広島じょーかーず》さん。「さより舟」が弾くひかりは波か、あるいは寄ってくるさよりか? いずれにせよこちらはまだ実在するモノと受け取りやすいのだけど、「狐火」しかも「断末魔」ともなるとかなり難易度が上がってきます。炎が燃え尽きようとするときはたしかに揺らぐというか、咳き込むようにスパークするから、あの感じかなあ……。

《芳野》さんの句にいたってはなかなかのエキセントリック! トマトが乾きを訴える声を聞き届けられるとは、そんじょそこらの俳人じゃないぜ!! こんなこと考える人好きやわぁ~。「るをーん」「るあーん」がいいよね、夢枕獏先生の『キマイラ』シリーズみたいで。

“ポイント”
 
第28回の出題として選んだ句はこちら。

第28回の出題

婁を逃れ貪る牛の草若し

おやじん

難しい漢字軍団の中から「婁を」をチョイス。「婁」には、ひきよせる、むなしい、つなぐ、といった意味があります。「逃れ」「貪る」の強烈な動詞の畳みかけによって、読者は牛の体験を我がことのように感情移入できるようになります。解放と貪欲と、噛み砕かれた草の放つ青臭い匂いと。存分に食べて良いぞと放たれた牛の目線には、みずみずしく若草の波が広がっているのです。

ということで、最後の二音は「かし」でございます。

しりとりで遊びながら俳句の筋肉鍛えていきましょう!
みなさんの明日の句作が楽しいものでありますように! ごきげんよう!

“とてもいい“