写真de俳句の結果発表

第43回「花屋さん内のカフェ」《天》

評価について

本選句欄は、以下のような評価をとっています。

「天」「地」「人」…将来、句集に載せる一句としてキープ。
「並選」…推敲することで「人」以上になる可能性がある句。
「ハシ坊」…ハシ坊くんと一緒に学ぶ。

特に「ハシ坊」の欄では、一句一句にアドバイスを付けております。それらのアドバイスは、初心者から中級者以上まで様々なレベルにわたります。自分の句の評価のみに一喜一憂せず、「ハシ坊」に取り上げられた他者の句の中にこそ、様々な学びがあることを心に留めてください。ここを丁寧に読むことで、学びが十倍になります。

「並選」については、ご自身の力で最後の推敲をしてください。どこかに「人」にランクアップできない理由があります。それを自分の力で見つけ出し、どうすればよいかを考えるそれが最も重要な学びです。

安易に添削を求めるだけでは、地力は身につきません己の頭で考える習慣をつけること。そのためにも「ハシ坊」に掲載される句を我が事として、真摯に読んでいただければと願います。

第43回「花屋さん内のカフェ」

43

 

仮死したる花屋の花を春に葬る

花屋英利

 

「葬る」は、「ほうむる」と読むと音数がもたつきますので、「はぶる」あるいは「はふる」と読ませたいのだと思います。

「花屋」に所狭しと並べられた美しい花々を、「仮死したる」ものたちであるよと捉えたところに詩があります。言われてみると、確かに茎を切られ辛うじて水を吸い上げながら、ゆっくりと死んでいく時間を、人々は愛でているのだと。

花々が最も心躍らせて咲き誇るのが「春」という季節。その季節に、仮死したままの花々を私たちは、花屋で買い、部屋に飾り、楽しむのです。春を謳歌するように咲く花屋の花々は、己の死を自ら悼むようにかぐわしい香を放っているのかもしれません。

映像を持たず、しかも長い時間軸を持つ「春」は、大変扱いづらい季語です。更に、「春」という季節と「花屋の花」を取り合わせると、かなりベタな、もっと率直にいうと凡人的な句になりがちですが、「仮死」「葬る」という負のイメージをもった言葉を取り合わせることで、詩として昇華しました。このテクニックもまた大いに褒めたいところです。

“夏井いつき”