俳句deしりとりの結果発表

第27回 俳句deしりとり〈序〉|「うげ」①

俳句deしりとり
俳句deしりとり〈序〉結果発表!

始めに

皆さんこんにちは。俳句deしりとり〈序〉のお時間です。

出題の句からしりとりの要領で俳句をつくる尻二字しりとり、はじまりはじまり。
“良き”

第27回の出題

兼題俳句

野送りや島にいつより仏桑花  佐藤さらこ

兼題俳句の最後の二音「うげ」の音で始まる俳句を作りましょう。

 


※「うげ」という音から始まれば、平仮名・片仮名・漢字など、表記は問いません。

右舷には群れし魚影よ青岬

日月見 大

右舷から一直線にとびの魚

オカメインコ

右舷には鯨大きく潮を吹く

甘蕉

右舷より逃げ来し魚影勇魚来る

陶瑶

右舷みてろクジラが跳ぶぞカメラだ

おりざ

右舷よりイルカの群れや星月夜

小川さゆみ

右舷より仕掛け上々烏賊を釣り

とぜん

右舷ゆくアオバト三羽桜まじ

ほうちゃん

船の右側である「右舷」。出題を選んでおきながら、悲鳴の「うげげ」とか以外に選択肢あるのかな……と思ってたんですが、ありましたねえ立派な一般名詞が。

右舷から眺める景色にはいろんな生き物が登場してきます。まっさきに思い浮かぶのはやはり魚。特に、海上へと姿を現してくる種類の生物が句材になりやすいようです。《陶瑶》さんの句にある「勇魚(いさな)」は鯨のこと。ホエールウォッチングやイルカ、見てみたいねえ。意外と少数派だったのが《ほうちゃん》さんのような鳥系。特に、海との関わりを連想しやすい海猫や鴎ではなく「アオバト」を持ってきたのは面白い。調べてみると、アオバトは海水を飲みにくるんだそうです。へぇー、そうなの!? 翼がしっかりと桜まじを捉えて綺麗。アオバトの明るい黄緑色と似合います。
“良き”

右舷より魔物真夏の午后の夢

海里

右舷からゴジラ接近夏の海

舟端玉

右舷よりゴジラ襲来春の雷

朝月沙都子

右舷から大王烏賊に食はれけり

阿部八富利

右舷よりレヴィアタン見ゆ寒夕焼

細葉海蘭

右舷に接近してくるのは魚や鳥だけじゃあないぞ、大王烏賊やら、怪物たちもきてくれた!! 近年映画でのリメイクも盛んなゴジラを筆頭に、レヴィアタンことリヴァイアサンやら。嫌いじゃないよ、そういうの! むしろ好き!
“ポイント”

右舷より現われ来たりジョーズ夏

逢來応來

右舷より厳つき鮫の巨き口

広島じょーかーず

右舷より恐るべき鰭そして虹

沼野大統領

忘れちゃいけない、鮫も登場だ!! 映画好きにとっては鮫映画は一大ジャンルを築いているからね、しょうがないね!! 鮫映画の原点ともいわれる『ジョーズ』(スティーヴン・スピルバーグ監督/1975年)から始まり、現在も多数の鮫映画が世に生まれ出ております。《沼野大統領》さんは象徴的な「鰭」だけを描くことで、見えない鮫の脅威を演出してます。理解ってやがる……素敵だ……。

“とてもいい“

右舷では大漁模様左舷鮫

うらん

右舷より左舷へ艫へ鯨水夫(かこ)

泉楽人

右舷から左舷へ待人探す春の風

琥幹

右舷に春陽左舷に神戸港

わーい

右舷より夜を左舷より夏霧を

ツナ好

右舷は陽左舷は薄き花の陰

長楽健司

右舷との対比で「左舷」を登場させた人たち。「右舷」で三音、「左舷」で三音、合計六音と音数の消費はそれなりにありますが、正反対の位置情報をうまく活かせればいろんな効果が生み出せます。右左で全然違った光景を一句のなかで同居させたり、位置の移動を描くことで空間の広さを生んだり、それぞれに使い方が面白いですね。特に《ツナ好》さんと《長楽健司》さんの句は興味深い。《ツナ好》さんは動詞を使わないことで解釈の幅が生まれています。夜を・夏霧を見ているのか、嗅いでいるのか、あるいは船上へと「夜」「夏霧」が侵入してきている、または受け取っているのか。それぞれに違った魅力が立ち上がります。一方、《長楽健司》さんはしっとりとした映像作りが上手い。右舷側の要素を「右舷は陽」の五音で完結させて切れを作ることで、中七下五での左舷側の描写に軸足を持たせる。それによって、季語が明確な主役になっています。水際の桜の陰が淡く美しい一句であります。
“ポイント”

烏ゲラゲラ雀チュロチュロ嗚呼春暁

江口朔太郎

霞む眼で見ると一文字目がハッキリ見えん……。鳥じゃなくて「烏」、カラスですね。オノマトペのリアリティとして、カラスの鳴き声って「ゲラゲラ」かなあ? と懐疑的な気持ちも湧くのですが、「雀チュロチュロ」と立て続けにオリジナリティある擬音を繰り出されると力技で納得させられます。「嗚呼」がもの思わせぶり。どんな状況なんだろう。仕事の徹夜明け? 

“ポイント”

鵜月下に括られ繰られ長良川

ときちゃん

鵜月光を縒りて散らして右舷へと

満生あをね

鵜げっぷを舟に残して長良川

藍創千悠子

鵜げと絞められた首楽になり

のんつむ45号

鵜飼で有名な「鵜」。子どもの頃に一度見た記憶はあるんですが、以後は歳時記で季語として眺めるのみの存在であります。獲った魚を吐き出させられて人間が掠めとっていくの、鵜からしたら「ふざけんな」の極みだろうなっていつも思ってる。《のんつむ45号》さんの「首楽になり」は大丈夫なんだろうか。生きてる? 召されてる……?
“とてもいい“

うげ仕掛け静かに流れゆくぬるめ

友鹿

ひらがなで「うげ」。なにかの道具のようですが、いったいなにもの?? 調べてみると、鰻や泥鰌を捕るための竹で編まれた筒状の道具が出てきました。「うえ」や「うけ」とも呼ばれるようです。「ぬるめ」は水田の縁に設けられた水溜まりや溝のこと。ほほう、そこにうげを仕掛けておけば、泥鰌が入ってきたりするんですかねえ。知らない日本語を教えてもらえたのはとても楽しいけれど、季語らしきものは見当たらず、残念無念。とろっとした空気感には魅力を感じるんだけど。

《②へ続く》
“ポイント”