俳句deしりとりの結果発表

第28回 俳句deしりとり〈序〉|「かし」①

俳句deしりとり
俳句deしりとり〈序〉結果発表!

始めに

皆さんこんにちは。俳句deしりとり〈序〉のお時間です。

出題の句からしりとりの要領で俳句をつくる尻二字しりとり、はじまりはじまり。
“良き”

第28回の出題

兼題俳句

婁を逃れ貪る牛の草若し  おやじん

兼題俳句の最後の二音「かし」の音で始まる俳句を作りましょう。

 


※「かし」という音から始まれば、平仮名・片仮名・漢字など、表記は問いません。

菓子折りを持ってお詫びに新社員

小田毬藻

菓子折をたずさへ詫びに糸蜻蛉

くさもち

菓子折りを断られたる溽暑かな

前田

菓子折りを渡しそびれし新社員

里山まさを

菓子折りを突き返されて溽暑かな

ヒマラヤで平謝り

菓子折と詫びと西日の指導室

深山むらさき

菓子折や平謝りの若葉風

しまちゃん

菓子折りに香る杉板夏羽織

玉響雷子

菓子折りの掛け紙の蓮みどり冥し

かたくり

菓子折りをやめてマンゴー君にする

西 メグル

菓子折は切腹最中文化の日

つんちゃん

菓子折りの中身は小判鐘霞む

千代 之人

菓子折の栗羊羹の底に小判

十月小萩

今回最も多かった回答は「菓子」に関する単語なんですが、その中でも最も多かったのが「菓子折」。特に謝罪関係の場面が多かったですね。みんな実際に謝りに行ったことがあるのかなあ……。なかでも《ヒマラヤで平謝り》さんと《深山むらさき》さんの句は相手方の反応や状況が詳しくわかる形で好感触。

《千代 之人》さんと《十月小萩》さんは時代劇でよくある例の場面。「お代官様、黄金色の菓子でございます。」「ふふふ……○○屋、お主も悪よのう」ってやつ。菓子折の大きさにもよるだろうけど、あれって現在の貨幣価値に換算したらいくらくらいなんだろうね。わたし、気になります。
“良き”

菓子型に流し込む生地苺の香

南全星びぼ

菓子パンの砂糖ざらつく利休の忌

亘航希

かしパンは餡子に限る祭笛

みや

菓子パンのつぶれしを投げ卒業す

葉村直

菓子を撒く父の目頭風光る

比園 岳

菓子の家溶けぬ納税期の雨に

ぞんぬ

菓子から始まる言葉のバリエーションいろいろ。お菓子作りに使う「菓子型」、身近な「菓子パン」などなど。《葉村直》さん、《比園 岳》さんは意外な動詞が読みを広げてくれて興味深い。潰れた菓子パンと「卒業」の取り合わせが織りなす粗雑なリアリティ、菓子を撒く場面の万感、どちらも場面がよく感じ取れます。お菓子撒く場面といえば結婚式とかかなあ。《ぞんぬ》さんはヘンゼルとグレーテルの童話に出てくるお菓子の家……なんだけど、溶け方が世知辛くて侘しい……。納税期を季語として採録した歳時記は手元では確認できませんでしたが、昨今は「確定申告」と共に季語としてはどうか、という意見もあるようですね。可能性は未知数ですが、今後時代とともに季語と認知されていく可能性もあるのかも?
“ポイント”

カシオレの缶積み上げる喜雨休み

のりのりこ

カシオレを呷る二十歳や若葉冷

うめやえのきだけ

カシス酒よ五十年目の愛の日よ

黒猫

甘い物つながりでお酒ネタ。「カシオレ」はカシスオレンジの略でしょう。カシスリキュールとオレンジジュースをあわせた甘くて飲みやすいカクテルですね。僕も好きです。《黒猫》さんの「カシス酒」はカクテルになる前の、いわば素材のひとつ。合わせ方によって味わいを変える柔軟さが「五十年目の愛の日」を迎えた夫婦の間柄を暗示するようで素敵。

“とてもいい“

火酒の香を吸いて咲きたる白き百合

円海六花

アルコール分が多く、火をつけると燃えるほど強い酒を「火酒」といいます。時々映画や小説で気付けに火酒を含む場面が出てくるけど、酔っ払って動けなくならないのかなあ。時に過剰なまでに香りを放つ「白き百合」、特に火酒の香を吸いながら蕾を開いた百合ならさぞやでありましょう。
“ポイント”

カシユーナツツ砕けば春愁の厨

おかだ卯月

カシューナツ一皿分のうららかさ

三日月なな子

お酒のお供にナッツ類。カシューナッツは王道のおつまみですねえ。ただ、類似した食べ物と比較してみると、案外「カシューナッツ」に必然性を持たせるのって難しいのかもしれません。たとえば、季語にはなってしまうけど「ピーナッツ(落花生)」、「銀杏の実」とか。季語でないものなら「ピスタチオ」、「アーモンド」、とか。

発想の出発点はしりとりですが、完成した自分自身の句を推敲していくのは個人の自由。カシューナッツよりピッタリなフレーズが見つかれば、推敲して自分の句帳に加えておくのも有りですよ。

“ポイント”

カシラよりボンジリが好き電波の日

咲山ちなつ

かしき鍋煮え端眺め大吟醸

あねもねワンヲ

かしみん焼二つ包ませサングラス

もりたきみ

食べ物いろいろ。カシラとボンジリは焼き鳥の部位で聞いたことありますが、「かしき鍋」と「かしみん焼」は知らないなあ。調べてみると「かしき鍋」は鴨・猪・雉の3種類の肉を味わえる醤油だしベースの鍋料理だそうです。「かしみん焼」は鶏肉のかしわと牛脂のミンチを乗せて焼くお好み焼き風の料理。「二つ包ませ」はお持ち帰りですかね。注文して焼けるまでジリジリ暑い中で待つ「サングラス」の人物。

《②へ続く》
“とてもいい“