写真de俳句の結果発表

第45回「ニースの塩」《ハシ坊と学ぼう!⑥》

ハシ坊

ニースの塩

評価について

本選句欄は、以下のような評価をとっています。

「天」「地」「人」…将来、句集に載せる一句としてキープ。
「並選」…推敲することで「人」以上になる可能性がある句。
「ハシ坊」…ハシ坊くんと一緒に学ぶ。

特に「ハシ坊」の欄では、一句一句にアドバイスを付けております。それらのアドバイスは、初心者から中級者以上まで様々なレベルにわたります。自分の句の評価のみに一喜一憂せず、「ハシ坊」に取り上げられた他者の句の中にこそ、様々な学びがあることを心に留めてください。ここを丁寧に読むことで、学びが十倍になります。

「並選」については、ご自身の力で最後の推敲をしてください。どこかに「人」にランクアップできない理由があります。それを自分の力で見つけ出し、どうすればよいかを考えるそれが最も重要な学びです。

安易に添削を求めるだけでは、地力は身につきません己の頭で考える習慣をつけること。そのためにも「ハシ坊」に掲載される句を我が事として、真摯に読んでいただければと願います。

山法師かつて栄えし塩の道

角田 球

夏井いつき先生より
季語としては、「山法師の花」と書いたほうがよいですね。「栄えし」の「し」は過去の意味なので、「かつて」は不要です。

添削例
山法師の花や栄えし塩の道
“ポイント”

山塩の味見はこぶし島柄長

オニチョロ

夏井いつき先生より
申し訳ないですが、「こぶし島柄長」は一単語? 「こぶし」が季語? 「島柄長」は鳥だよね? ちょっと句意が読み解き難く……。
“ポイント”

地底より掘り上ぐ塩を若葉風

松雪柳

夏井いつき先生より
「掘り上ぐ」が「塩」にかかっていくとすれば、「掘り上ぐる」と連体形になります。そこを訂正すれば、人選です。
“ポイント”

少年の髪に潮風いちご食む

石澤双

夏井いつき先生より
季語は動きそうです。
“ポイント”

ニースでは塩までうまし空豆かな

銀幕なり

夏井いつき先生より
中七「~うまし」の終止形で切れているので、下五「空豆かな」の詠嘆が浮き上がってしまってます。
“ポイント”

マス酒や清めと旨さ競う「場所」

銀幕なり

夏井いつき先生より
この「場所」とは何でしょう? 相撲? どこかの店?
“ポイント”

あのあをは紫陽花の青選ばれし碧

さおきち

夏井いつき先生より
「あの」と指さされているものが何なのか。「紫陽花」が比喩に終わっているのか。そのあたりが、悩ましい一句。
“ポイント”

シーグラス胸に寄せくる夏怒涛

リコピン

夏井いつき先生より
「シーグラス」と「夏怒涛」が、ちょっと近いかも。中七の工夫次第で、生きてきそうな予感も。一考してみましょう。
“ポイント”

目の怒る冬蜂古書に動かざる

野々山ふう

夏井いつき先生より
「先月添削して頂いた句をまた推敲しました。〈冬蜂の古書に動かず目の怒る〉という句ですが、語順を考えるようにとのご指摘でした」と作者のコメント。

このニュアンスを表現したいのならば……

添削例
怒る目の冬蜂古書を動かざる
“ポイント”

母の日に10種喰いたし塩むすび

南風

夏井いつき先生より
特別な意図がない場合は、漢数字にするのが定石です。上五の助詞「~に」は散文的になりがちな助詞。この場合ならば、「や」でしょうか。
“ポイント”

クリスマス島の白塩届く夏

なみこまち

夏井いつき先生より
句材はよいと思います。ただ、「白塩」の「白」は必要なのかなあ? 音数合わせ?
“ポイント”

塩の香や故郷の君と花海桐

海泡

夏井いつき先生より
「子供のころ住んでいた家の近くに、海桐(とべら)が多い公園がありました。海のそばで散歩コースでした。私の妻は同郷で家も近い。夏の思い出から空想を飛ばしました」と作者のコメント。

「塩」でよい? 「潮」の可能性は? 作者コメントからすると、「潮の香や」ではないかと思うのですが。「潮」ならば、人選にしたいところです。
“ポイント”

長寿銭財布にしまふ聖五月

滝川橋

夏井いつき先生より
「友人のお父上のご葬儀で『長寿銭』という物を頂きました。小さな祝儀袋に入って、清め塩と共に会葬御礼の封筒に収められていました。長寿に肖るようにとのメッセージと思われますが、帰宅して、このコインをどう始末(?)すればよいか悩み、ネットで調べたりしました。諸説ありましたが、結局祝儀袋のままお財布にしまう事にしました。天寿を全うした方のご葬儀は、どことなく明るさのあるものでした」と作者のコメント。

語順を一考してみましょう。季語として「聖五月」を選んだのは、故人がクリスチャンだったから? 季語は動くようにも思います。
“ポイント”

紺碧や波乗り2秒今日は吉

永華

夏井いつき先生より
「ニース→コート・ダジュール→紺碧海岸。青のグラデーションでした!」と作者のコメント。

「~や」で強く切れて、中七「~二秒」でも意味が切れるので、調べを再考してみましょう。
“ポイント”

夕鯵の行商息きらし来ぬ

紫月歪丸

夏井いつき先生より
「シンプル過ぎではありますが、足の速い鯵を早く届ける行商の心遣いと、字足らずにして急いでいる感じを表現しました」と作者のコメント。

意図は理解しましたが、調べとしては、やはり「息を切らし来ぬ」をおススメします。それならば、人選。
“ポイント”

八月の海岸遠くに烏帽子岩

林としまる

夏井いつき先生より
「茅ヶ崎市の『烏帽子岩』は、サザンの歌と意外に沖にあって小さいという印象を持っていました。調べると、戦後ですが一時期在日米軍の砲撃演習の場となり岩は標的として被弾し、今の形は戦争の歴史を伝えているとわかりました。歴史を知ると、これから先、海岸のにぎわいの中に立った時、平和であって欲しいと改めて願い、眺める景色となりました」と作者のコメント。

「八月」という季語を立てるとすれば、中七下五は江の島の絵ハガキのような切り取り方に終わっています。季語「八月」は難物ですが、時間をかけて仕上げて下さい。
“ポイント”

昼下がり浮き輪の塩を舐めたい子

ふたば葵

夏井いつき先生より
面白い場面ですね。上五にもう一工夫あると、すぐに人選になりそう。
“ポイント”

花は葉に子選ぶ白のランドセル

瀬央ありさ

夏井いつき先生より
「子の選ぶランドセル白」として、下五に季語を置いてみましょう。「花は葉に」を選んでいる意図は分かるのですが、更に良き季語との出会いもありそうです。
“ポイント”

青鳩の嘴(はし)をニースの唸るいろ

くるすてぃーぬ

夏井いつき先生より
「~を」に対して、「ニースの唸るいろ」の句意がとりにくいです。何か、詩的な表現意図があるとは思うのですが。
“ポイント”

夏ざかな太古の塩を振つて喰ふ

植木彩由

夏井いつき先生より
「夏ざかな」という表現だけ一考してみましょう。
“ポイント”