写真de俳句の結果発表

第45回「ニースの塩」《ハシ坊と学ぼう!⑫》

ハシ坊

ニースの塩

評価について

本選句欄は、以下のような評価をとっています。

「天」「地」「人」…将来、句集に載せる一句としてキープ。
「並選」…推敲することで「人」以上になる可能性がある句。
「ハシ坊」…ハシ坊くんと一緒に学ぶ。

特に「ハシ坊」の欄では、一句一句にアドバイスを付けております。それらのアドバイスは、初心者から中級者以上まで様々なレベルにわたります。自分の句の評価のみに一喜一憂せず、「ハシ坊」に取り上げられた他者の句の中にこそ、様々な学びがあることを心に留めてください。ここを丁寧に読むことで、学びが十倍になります。

「並選」については、ご自身の力で最後の推敲をしてください。どこかに「人」にランクアップできない理由があります。それを自分の力で見つけ出し、どうすればよいかを考えるそれが最も重要な学びです。

安易に添削を求めるだけでは、地力は身につきません己の頭で考える習慣をつけること。そのためにも「ハシ坊」に掲載される句を我が事として、真摯に読んでいただければと願います。

北条やニースを望む青岬

大地緑

夏井いつき先生より
「北条」と「ニース」の関係が、イマイチ読み解けません。
“ポイント”

ニース塩のチークで鮎にメイクする

清水ぽっぽ

夏井いつき先生より
「チークで~メイクする」は、情報の重複がありそうです。一考してみましょう。
“ポイント”

去年今年ニースとの時差八時間

橘朔

夏井いつき先生より
「初めて俳句というものにチャレンジさせていただきました。俳句とは、兼題と季語、そして自分とじっくり向き合うことだと実感している、今日この頃です」と作者のコメント。

初投句とのこと。ご一緒に学んでまいりましょう。
さて、この句ですが、「去年今年」は非常に奥行の深い難しい季語です。単純な「時差」では片づけにくいというのが、正直な感想です。二〇二四年が終わるその瞬間、再度この季語の現場にて、この季語の本意を考えてみて下さい。
“ポイント”

ばら売りのニースの塩で夏サラダ

あるがままん

夏井いつき先生より
「昔の飴等のばら売りと似ており、ニース塩を使った夏サラダとしました」と作者のコメント。

中七の助詞「で」が、散文的な使い方です。この場合でしたら、「ばら売りのニースの塩や」と詠嘆して、しっかりと切れをいれましょう。下五の季語は、「サラダ」という情報をいれなくてもよいので、より良き季語を探してみましょう。
“ポイント”

彩りアイス思案暮れて定番よ

直感勝負

夏井いつき先生より
「初めて投稿します。ニースの塩の見識がなく、兼題写真で思いつく題材をテーマにしました。色とりどりの塩がジェラートの売り場を思い出したので、それをテーマにしました。色とりどりのアイスを目の前にどれを買おうか悩み、結局いつも選ぶ品になってしまいます。新しいものを選ばなかった悔しさ半分、いつもの品で安心半分の気持ちを書きました」と作者のコメント。

初めまして。ご一緒にコツコツ学んでいきましょうね。
言いたいことは伝わりますが、全体が散文的です。俳句は、なにがどうしてどうなった、という顛末を説明するのではなく、映像を切る取るのだと考えましょう。あなたの「定番」は、どんな「アイス」ですか。それを、言葉で映像化してみましょう。
“ポイント”

量り売り好みの香り夏流行り

喜悦

夏井いつき先生より
何の「量り売り」なのか、「夏」に何が流行っているのか。そこを書きたいですね。
“ポイント”

岸壁に砕ける潮夏の波

ミワコ

夏井いつき先生より
「潮」と「波」、情報が重複します。ここは要一考です。
“ポイント”

舌蕩けフルール・ド・セルに鮎の腸(わた)

乃咲カヌレ

夏井いつき先生より
「古代ローマ時代から続くカマルグの塩田で生産される濃厚な味わいの完全天日塩、フルール・ド・セル(塩の花)。熱く焼いた鮎の内蔵に少し散らすと溶ろける美味しさです。(始めまして。パリ在住の乃咲カヌレと申します。『いつき組』組員になって一ヶ月です)」と作者のコメント。

初めまして。ご一緒にコツコツ学んでいきましょうね。
さて、この句ですが、コメントを読むととても美味しそう! 作者コメントの内容からすると、「フルール・ド・セルに鮎の腸」とするよりは、「鮎の腸にフルール・ド・セル」と書くほうが正しいのかなと。上五「舌蕩け」は説明なので、ここは要一考ですね。
“ポイント”

炎昼や露店飛び散る逃走劇

帷子川ソラ

夏井いつき先生より
「外国映画の1シーンで、街の露店通りを破壊しながら追われて逃げる、緊張感とスピード感あるダイナミックな映像が心に残っています」と作者のコメント。

「街の露店通りを破壊しながら追われて逃げる」光景を描きたかったとして、中七「飛び散る」は描写として再考の余地があります。
“ポイント”

南吹く塩舞う市にベリーの香

那烏夜雲

夏井いつき先生より
「塩舞う市」とは、どんな状況なのでしょう?
“ポイント”

食べくらべ首捻笑う夏の宵

寧々

夏井いつき先生より
「いいお土産を買ったけど、いつもの味との違いがさっぱり分からないね、と笑いあった夏の思い出を表現しようとしました」と作者のコメント。

中七の意味が、掴みにくい一句。具体的に、何を買ったのかを書いたほうが、より具体的になりそうです。
“ポイント”

塩田は淡きピンクの花筏

泉幸

夏井いつき先生より
塩田に、桜の花びらが散り敷いている? 「花筏」とあれば、中七は不要ですね。
“ポイント”

薄暑光量り売りの塩二瓶

藤康

夏井いつき先生より
中七は極力七音に整えるのが定石です。
“ポイント”

夏の昼アンチョビ香るパンバニャ

ぷくぷく

夏井いつき先生より
「今月から俳句を始めました。なかなか頭に浮かぶものさえ出てきませんが、よろしくお願い致します」と作者のコメント。

ハイ、ご一緒にコツコツ学んでいきましょうね。
さて、この句ですが、下五「パンバニャ」は四音の言葉ですね。調べてみると「パンバーニャ」とする呼び名もあるようで、こらちならば五音になります。外国の言葉は、発音によって音数が左右されますので、俳句として使う時は音数を意識する必要があります。ご自身として「パンバニャ」という呼び方に拘りたいのであれば、「アンチョビの香るパンバニャ」とすれば、すっきりと入りますね。季語「夏の昼」は、まだまだ動きそう。じっくりと季語を探してみましょう。取り合わせる季語次第で、すぐに人選の一句になりそうです。
“ポイント”