写真de俳句の結果発表

第46回「深夜のドライブイン」《ハシ坊と学ぼう!②》

ハシ坊

「深夜のドライブイン」

評価について

本選句欄は、以下のような評価をとっています。

「天」「地」「人」…将来、句集に載せる一句としてキープ。
「並選」…推敲することで「人」以上になる可能性がある句。
「ハシ坊」…ハシ坊くんと一緒に学ぶ。

特に「ハシ坊」の欄では、一句一句にアドバイスを付けております。それらのアドバイスは、初心者から中級者以上まで様々なレベルにわたります。自分の句の評価のみに一喜一憂せず、「ハシ坊」に取り上げられた他者の句の中にこそ、様々な学びがあることを心に留めてください。ここを丁寧に読むことで、学びが十倍になります。

「並選」については、ご自身の力で最後の推敲をしてください。どこかに「人」にランクアップできない理由があります。それを自分の力で見つけ出し、どうすればよいかを考えるそれが最も重要な学びです。

安易に添削を求めるだけでは、地力は身につきません己の頭で考える習慣をつけること。そのためにも「ハシ坊」に掲載される句を我が事として、真摯に読んでいただければと願います。

ががんぼと指洗ふ狭き宇宙よ

ざぼん子

夏井いつき先生より
「深夜のドライブインといえば、トイレや洗面所にいるががんぼ。見るたびに思ったより大きく、こちらが遠慮してしまいます」と作者のコメント。

書こうとしている内容はとてもよいのです。後半「狭き宇宙よ」と、一見かっこよくゴマ化さないで、最後まで描写に徹しましょう。
“参った”

「月が綺麗ですね」帰路の風死せり

西瓜頭

夏井いつき先生より
「片思いの人と、ファミレスへ晩御飯を食べに行った帰りの事です。告白しようか迷った挙句、素直に告白できず、アイラブユーの意味の『月が綺麗ですね』と言ってみたのですが、全く気付いてない反応でした。ただ、私自身はドキドキして変な汗が出て、風の音も無くやけに靴の音や周りの音が鮮明に聞こえたのを覚えています。」と作者のコメント。

お気持ちは十分に分かります。「月が~」のフレーズが、アイラブユーを意味することも分かってはいるのですが、俳句としての「月」は大きな秋の季語なので、下五に「風死せり」と季語がでてくると、違和感がのこります。
“参った”

腹鳴って三日月背負って直走る

広島じょーかーず

夏井いつき先生より
「実体験です。墓参りに行くのにナビをつけていたら、車一台通るほどのギリギリの道でしかも断崖! 落ちたら川へドボン! その帰り、緊張からの緩和でお腹が空いて、でも早く帰りたい! サービスエリアで止まらず、一気に帰った思い出です」と作者のコメント。

お気持ちは分かりますが、空腹なのか下痢なのか、途中から分からなくなりました。「~鳴って~背負って直走る」動詞の多用が、下痢の読みを助長しているのかも。
“参った”

季語なし

カーラジオは稲川淳二非通知来

野菜α

夏井いつき先生より
「『稲川淳二』さんが夏の季語になったという事で、チャレンジしてみました」と作者のコメント。

ある一部のネット歳時記で、そのように盛り上がっていたのかもしれませんが、季語とみなすには無理があります。
“参った”

ぎーちょんと自販機下の銭と秋

鈴木そら

夏井いつき先生より
「『ぎーちょん(きりぎりす)』にかかる言葉は『秋』なのですが、『秋と銭』にすると音の感じが良くないですし、季語の秋が主役にならない気がして、このように置きました」と作者のコメント。

「自販機下の銭と秋」というフレーズはよいですね。あとは上五。季語っぽい言葉は使わずに、何ができるか? 佳き句になりそうですよ。
“ポイント”

夏の夜泣けるネオンに虫が飛び

砂糖香

夏井いつき先生より
「夏の夜」が主たる季語だということは分かるのですが、「虫」は秋の代表的な季語なので、この描き方はちょっと損です。ネオンや街頭に集まってくる虫のことを「火取虫」といい、これが夏の季語になります。
“ポイント”

驟雨越え畝るセリカの排気音

海里

夏井いつき先生より
「固有の言葉を「 」でくくるという手法に慣れていないため、車名であるセリカを強調できず、はっきりしない句になってしまいました。初代セリカは憧れの車。ドライブインと掲げられどうしても「セリカ」という言葉を使ってみたかったと云う我儘な想いです。激しく降る驟雨の中でも、あの低い排気音が聞こえてくるだけで雄姿が思い浮かび、それだけで幸せな気分になります」と作者のコメント。

この場合、「 」でくくらなくても、十分にセリカという言葉は際立っていますよ。むしろ、再考すべきは「越え畝る」の部分の描写。人選めざして一考してみましょう。
“ポイント”

夏海の帰りはいつもチョコのパフェ

コミマル

夏井いつき先生より   評価    並 
「World MS Day 2022の「想いでつながる私の多発性硬化症俳句コンテスト」で、秀逸に選んでいただきましたコミマルです。今回初投稿です。港町生まれの私は、夏になると家族や友人と近くの海水浴場に出かけ泳いだり、浜で遊んだりしていました。帰りは必ずパフェが名物の喫茶店に寄り、ほてった身体とまとわりついた潮の香りを、甘く冷たいチョレートパフェで中和して帰るのがお約束でした。そのことを句にしてみました」と作者のコメント。

初投句、ようこそ! 一緒にコツコツ学んでまいりましょう。さて、句材はよいのですが、このままだと並選です。下五「チョコのパフェ」は、五音にするための苦肉の策。「チョコレートパフェ」あるいは「チョコパフェ」を、十七音の調べに溶け込ませてみましょう。
“ポイント”

ホトトギス夜のしじまのネオン鳥

かたばみ

夏井いつき先生より
「夜でも鳴き通す悲しい習性を思う。『ネオン鳥』とは人間臭さの表現です」と作者のコメント。

「ネオン鳥」という表現は、時鳥を指すのでしょうか。夜に生きる人々を指しているのでしょうか。季語としての「時鳥」は、片仮名を避けるのが定石ではありますが……何らかの意図があるのでしょうか。
“ポイント”

バーガーのネオンサインを覆うミルキーウェイ

韻修

夏井いつき先生より
「~を覆う」は必要ですか。季語「天の川」ではダメ?
“ポイント”

縁解く桜蘂降る門出かな

峠の泉

夏井いつき先生より
第四十二回『降車ボタン』〈花冷えや離婚届に蕊の降る〉(ハシ坊)を推敲しました。『桜蘂降る』という季語を教えて頂きました。花冷えの時期と桜の蘂が降る時期には、気温のズレがあるのだと思いました。推敲しているうちに、離婚は悲しい中にも、ある種の前向きな決断だ! と感じたことを句に含みたくなりました」と作者のコメント。

「離婚届」というモノが映像としてあった初案のほうが良いです。下五「門出かな」も、中途半端な詠嘆です。
“ポイント”

食堂のおばちゃん出汁の夜鷹蕎麦

ほーさく

夏井いつき先生より
「夜のドライブインで、おばちゃんが持ってきた蕎麦のつゆにおばちゃんの親指が入っていたのを、何も言えずにいただいた思い出を詠んでみました」と作者のコメント。

「親指が入っていた」とは読み解けません。おばちゃんの得意の出汁……ぐらいにしか読めないなあ。
“ポイント”

風薫る湧く馴染客輝る指

創次朗

夏井いつき先生より
「馴染客の多いドライブイン。若いカップルが入ってくると、期せずして歓声があがる。カップルの指にはダイヤが輝いていました」と作者のコメント。

この文字面では、婚約指輪だとは読み切れません。再考してみましょう。
“ポイント”

ナイターの深夜食堂なる無言

月野うさぎ

夏井いつき先生より
「ナイター」は野球場? いやいや、深夜までは営業してないか。「ナイター」と「深夜食堂」、情報の重複は?
“ポイント”