写真de俳句の結果発表

第46回「深夜のドライブイン」《ハシ坊と学ぼう!③》

ハシ坊

「深夜のドライブイン」

評価について

本選句欄は、以下のような評価をとっています。

「天」「地」「人」…将来、句集に載せる一句としてキープ。
「並選」…推敲することで「人」以上になる可能性がある句。
「ハシ坊」…ハシ坊くんと一緒に学ぶ。

特に「ハシ坊」の欄では、一句一句にアドバイスを付けております。それらのアドバイスは、初心者から中級者以上まで様々なレベルにわたります。自分の句の評価のみに一喜一憂せず、「ハシ坊」に取り上げられた他者の句の中にこそ、様々な学びがあることを心に留めてください。ここを丁寧に読むことで、学びが十倍になります。

「並選」については、ご自身の力で最後の推敲をしてください。どこかに「人」にランクアップできない理由があります。それを自分の力で見つけ出し、どうすればよいかを考えるそれが最も重要な学びです。

安易に添削を求めるだけでは、地力は身につきません己の頭で考える習慣をつけること。そのためにも「ハシ坊」に掲載される句を我が事として、真摯に読んでいただければと願います。

夜のSAにて推しのシャツ並ぶ新蕎麦券売機

千舟

夏井いつき先生より
「推しのコンサート帰りは、決まって夜のSAでお蕎麦かラーメンを啜って帰りました。同じようなお客さんで賑わっているのです」と作者のコメント。

「夜のSAにて」は、前書きでしょうか? 基本的には、前書きに頼らないほうがよいですし、全部が俳句だとしたら情報が多すぎます。十七音に見合った情報を選び出しましょう。
“参った”

ドライブイン飛んで火に入る火取虫

秀翁

夏井いつき先生より
下五の季語「火取虫」の中に、中七の情報は入っていると考えてよいでしょう。
“参った”

夏の夜やドライブインの白き肌

さふらん

夏井いつき先生より
「夜のドライブインに集う夜行人間たち」と作者のコメント。

「白き肌」は、建物の白い壁と読まれる可能性のほうが高いのでは?
“参った”

花火後テールライトの赤き列

雪割草

夏井いつき先生より
「テールライト」は六音ですが、「尾灯」ならば三音。ひょっとすると「赤き」と書かなくても、「尾灯」という言葉の中にその情報は入っていると考えることもできます。
“参った”

助手席に落つ砂ほどろ夕焼空

朝日千瑛

夏井いつき先生より
「子供達と一日中海遊びをした帰り、服からの砂が助手席に散らばっていました」と作者のコメント。

「落つ」は終止形なので、ここで意味が切れます。「ほどろ」とは、[形動ナリ:雪などがはらはらと降るさま。また、うっすらと雪が積もるさま。はだら。]の意でしょうか? いずれにしても、三段切れにはなりますね。

“ポイント”

休憩所夜明けを待やスキーバス

瞳杏

夏井いつき先生より
「待や」ではなく、「待つや」で、並選。上五を一工夫すれば、さらにワンランクアップ。
“ポイント”

灼け路へロックばらまくカーオーディオ

水越千里

夏井いつき先生より
「周りの車の音楽は、カークーラーがきかないほど暑い日に、窓全開にしている時は、うるさく感じます。『路(みち)』と『カーオーディオ』が少し重複しているかと思いましたが、これは必要だと判断しました」と作者のコメント。

上五「~路へ」は、ちょっと気になりますね。ここは「○○○○や」としっかり詠嘆したほうがよさそう。すぐに人選になりますね。
“ポイント”

夏の夜や漁火ごとくドライブイン

眼蔵

夏井いつき先生より
中七は「漁火のごと」でしょう。ただ、点々と見える灯を、漁火に喩える句はそれなりにあります。
“ポイント”

自販機と死屍累々の誘蛾灯

真秋

夏井いつき先生より
中七は、言わずもがなの措辞です。ここは、中七の描写が勝負ですね。
“ポイント”

小枝(さえだ)照りやまぎはわろふ白夜かな

萌黄多恵

夏井いつき先生より
「深夜、あゝ今夜此処の短い夜は白光で照り映え、遠くの山並みさえ密やかに囁き合っている。今が夏絶好調と感じました」と作者のコメント。

表現しようとする内容は理解できます。ただ、季語「白夜」に対する「照り」「わろふ」に違和感があります。
“ポイント”

眼下には流線の光夏の夜や

春瑛

夏井いつき先生より
「高層ビルから眺めた都会の高速の様子です。『光(コウ)』と読んでもらいたいのですが、無理がありますでしょうか?」と作者のコメント。

うーむ、やはりちょっと無理があるかな。更に、下五「~や」の着地は、バランスの取り難い難しい型です。
“ポイント”

身をのり出しトラックさばく女飛花

古乃池 糸歩

夏井いつき先生より
「大型車を駐車スペースにおさめようと、身をのり出して後方確認をしながらハンドルをさばく女性ドライバー。カッコ良くて美しいです」と作者のコメント。

描写はよいですよ。ただ、季語がいかにも付け足した感じ。さて、どうする?
“ポイント”