写真de俳句の結果発表

第46回「深夜のドライブイン」《ハシ坊と学ぼう!④》

ハシ坊

「深夜のドライブイン」

評価について

本選句欄は、以下のような評価をとっています。

「天」「地」「人」…将来、句集に載せる一句としてキープ。
「並選」…推敲することで「人」以上になる可能性がある句。
「ハシ坊」…ハシ坊くんと一緒に学ぶ。

特に「ハシ坊」の欄では、一句一句にアドバイスを付けております。それらのアドバイスは、初心者から中級者以上まで様々なレベルにわたります。自分の句の評価のみに一喜一憂せず、「ハシ坊」に取り上げられた他者の句の中にこそ、様々な学びがあることを心に留めてください。ここを丁寧に読むことで、学びが十倍になります。

「並選」については、ご自身の力で最後の推敲をしてください。どこかに「人」にランクアップできない理由があります。それを自分の力で見つけ出し、どうすればよいかを考えるそれが最も重要な学びです。

安易に添削を求めるだけでは、地力は身につきません己の頭で考える習慣をつけること。そのためにも「ハシ坊」に掲載される句を我が事として、真摯に読んでいただければと願います。

海水着脱がずに深夜腹満たす

飯島寛堂

夏井いつき先生より
惜しい! ちょいと直すと、人選。

添削例
海水着脱がず深夜の腹満たす
“ポイント”

夏の宵七十秒のコーヒールンバ

久えむ茜咲

夏井いつき先生より
「関越道のSAのコーヒーの自販機は、コーヒールンバが流れてミル挽きのコーヒーが淹れられます。調べたら70秒だそうです、子どもも親も楽しみました」と作者のコメント。

語順を逆にすると人選です。

添削例
七十秒のコーヒールンバ夏の宵
“ポイント”

八重の潮風波めくは帰省の尾灯

感受星 護

夏井いつき先生より
「帰省時の実家が近くなってきた時の高速道路を詠みました。実家は北九州で、関門橋を渡ると戻った気になります。故郷に近づきつつある、あともう少しの気持ちと安堵感が出れば良いのですが……」と作者のコメント。

これもいいところまできています。中七下五はとてもよいですよ。上五をしっかりと五音で「○○○○や」と季語ではない言葉を詠嘆すれば、人選まちがいなし!
“ポイント”

下宿燃ゆ西瓜ポンポンとして分つ

感受星 護

夏井いつき先生より
「学生時代、盆に帰省しない者だけで車一台で銭湯に行く事になりました。ひとしきりして帰ってくると、下宿が火事で丸焼けでした。しかし、グニャリとした先輩の冷蔵庫から冷えた西瓜が丸ごと出てきて、皆で盛り上がり、どうやって分けたか忘れましたが、車内で楽しく分け合った想い出です。焦げた異臭漂う中、少し辛いのですが、分かち合う友がいる事の大切さが、そこには確かにありました。因みに原因は、放火と見られる不審火でした」と作者のコメント。

凄い体験ですね。これを、たった十七音にしてしまうのは無理というもの。カメラのシャッターボタンを押す感覚で、一句一句に掬いあげていきましょう。百句ぐらいはできそう~。
“ポイント”

売れ残りたる鯵に未練や道の駅

正宗一孝

夏井いつき先生より
前半を「売れ残る鯵や」として、後半を整えなおして下さい。「~に未練や」と説明しなくても、きっとそうなのだろうなと想像できるような後半を工夫しましょう。
“ポイント”

ドライブインで済ます夕飯海水浴

夏井いつき先生より
現実の体験なのだとは思うのですが、季語「海水浴」が脇役になってしまってます。その点を再考してみましょう。
“ポイント”

熱帯夜通夜の帰りの数珠重し

閑陽

夏井いつき先生より
「熱帯夜」「通夜」「重し」、これらの取り合わせが少しずつ近すぎるのです。別の言い方をすると、似合い過ぎていて、イメージが重複してしまっているということ。季語を動かしてみて、季語との距離感について、考えてみましょう。
“ポイント”

その刹那花火が照らす頬愛し

UVA桜

夏井いつき先生より
「『プレバト‼️』で、千原ジュニアさんが『時間軸が長すぎる』とおっしゃっていて、なるほどと思いました。ならばほんの一瞬を題材にしてみようと作ってみました」と作者のコメント。

「照らす」は必要ですか。
“ポイント”

秋の色父より回り来る七味

ひいらぎ

夏井いつき先生より
中七下五は、シンプルに情景が描写できています。季語が動きそう。
“ポイント”

朝日浴び百も二百も秋つばめ

入道まりこ

夏井いつき先生より
「浴び」は必要ですか。
“ポイント”

ものもらい片目細めて天の川

妙啓

夏井いつき先生より
「子供の頃、ものもらいの痛痒い目で眺めた天の川。この瞬間を絶対に見逃すまいと見ていた実体験を俳句にしました」と作者のコメント。

表現しようとしている内容はよいです。ただ、中七の描写「細めて」が言わずもがな。こんな時は、逆の書き方をすると詩が発生します。

添削例
天の川細し片目のものもらい
“ポイント”

立葵ルージュの如し信号機

山本芳山

夏井いつき先生より
「夜目に信号の赤い光りは、艶っぽいルージュに見えました」と作者のコメント。

中七「ルージュの如し」の終止形で意味が切れますので、この比喩は「信号機」ではなく「立葵」のことだと読めてしまいます。
“ポイント”

潮騒や傷もて余す若き人

八重山吹

夏井いつき先生より
今回、「潮騒」を夏の季語だと勘違いしての投句が散見しています。主要な歳時記には載っていませんので、念のためネット歳時記やネット記事を調べてみると、「潮騒は夏の代表的な季語」等、腑に落ちない内容のものもありました。俳句を勉強するためには、信用できるしっかりとした歳時記を一冊、手元におきましょう。ついでに指摘しますと、「おウチde俳句くらぶ」サイトにある『俳句季語辞典』なるものも、時折気になる記述が載っていたりします。問題を見つけた時は、削除してもらっています。
“ポイント”

縦列に停めたからざる夜長かな

雄蹴

夏井いつき先生より
「どんなに気持ちのいいドライブでも、縦列駐車は避けたいです」と作者のコメント。

「からざる」という表現に違和感があることと、季語「夜長」の時間軸が長すぎるのも気になります。
“ポイント”

ドライブイン臍の緒と待つ朝焼や

天橋立右彩

夏井いつき先生より
「ドライブインで幼い頃に別れた娘を待っている。臍の緒を持ち、朝焼けと共に夜が明けるのを待つ」と作者のコメント。

非常にドラマチックな場面。下五「~や」の詠嘆で終わる型は、バランスが取り難くて、とても難しいのです。語順を一考してみましょう。
“ポイント”

眠れない眠りたくない白夜かな

こはる

夏井いつき先生より
「そのまんま」と作者のコメント。

「そのまんま」が悪いわけではないのです。俳句は、基本的には季語を主役にしたいわけで、この書き方だと、「白夜」のみならず一年中の「夜」にあてはまってしまいますね。そこを工夫してみるのが、俳句を作る面白さになるのです。
“ポイント”

母のいる街の朝焼け手をかざし

夏村波瑠

夏井いつき先生より
語順で損をしています。前半を「手をかざす朝焼」として、まずは季語を立ててから、後半をまとめてみましょう。佳い句になりますよ。
“ポイント”

真夜中のドライブインで鮎見つけ

つる

夏井いつき先生より
「~で~見つけ」という表現が散文的です。語順を一考してみましょう。
“ポイント”

黒南風や漢が喰らうスタミナ丼

イシカワナオキ

夏井いつき先生より
「黒南風」と「スタミナ丼」の取り合わせ、よいですね。中七には工夫の余地あり。人選めざして!
“ポイント”

盆三日墓前の子宮がらんどう

雉虎緑目

夏井いつき先生より
「私には子どもがいませんが、母のお墓参りをするたびに、孫の顔を見せたかったなと思います」と作者のコメント。

表現したい内容に対して、文字面で少々損をしています。「盆三日墓前の」この前半は、もう少しシンプルに表現できますよ。人選めざして、一考してみましょう。
“ポイント”