写真de俳句の結果発表

第46回「深夜のドライブイン」《ハシ坊と学ぼう!⑤》

ハシ坊

「深夜のドライブイン」

評価について

本選句欄は、以下のような評価をとっています。

「天」「地」「人」…将来、句集に載せる一句としてキープ。
「並選」…推敲することで「人」以上になる可能性がある句。
「ハシ坊」…ハシ坊くんと一緒に学ぶ。

特に「ハシ坊」の欄では、一句一句にアドバイスを付けております。それらのアドバイスは、初心者から中級者以上まで様々なレベルにわたります。自分の句の評価のみに一喜一憂せず、「ハシ坊」に取り上げられた他者の句の中にこそ、様々な学びがあることを心に留めてください。ここを丁寧に読むことで、学びが十倍になります。

「並選」については、ご自身の力で最後の推敲をしてください。どこかに「人」にランクアップできない理由があります。それを自分の力で見つけ出し、どうすればよいかを考えるそれが最も重要な学びです。

安易に添削を求めるだけでは、地力は身につきません己の頭で考える習慣をつけること。そのためにも「ハシ坊」に掲載される句を我が事として、真摯に読んでいただければと願います。

門灯の蛾の腹数多宴の後

蛇の抜け殻

夏井いつき先生より
「夜中に多くの蛾が灯りの下で饗宴し、明け方に力尽きて、多くの死体を残している様を詠みました」と作者のコメント。

上五中七は、しっかりと観察した描写になっているのですが、下五「宴の後」は一種の擬人化ですね。ここが実に勿体ない。
“ポイント”

涼風や潮の香連れしパーキング

いわさき

夏井いつき先生より
「し」は、基本的には過去の意味になる助動詞です。ここを一考してみましょう。
“ポイント”

街灯なきハイウェイ灯す月代や

ふく

夏井いつき先生より
下五の「~や」は、とても難しい型です。語順を一考してみましょう。
“ポイント”

百千の蛍の照らす川の音

ぴょーんと

夏井いつき先生より
「照らす」は必要ですか?
“ポイント”

梅雨の朝2人になびく時つかぜ

西山

夏井いつき先生より
下五は一考してみましょう。中七、数詞は漢数字にするのが定石です。
“ポイント”

<七月のNYにて>
午後三時帰宅ラッシュ夏の空

柳子

夏井いつき先生より
「夏のNYはサマータイムで一時間早く始まり、二時間早く上がっていました。なので午後三時は帰宅ラッシュ。電車では若い女性達がアフターナイトの相談をしていました。日も高く、その日の第二部を野球観戦などで楽しんでいました」と作者のコメント。

表現したい内容からして、前書きは不要でしょう。例えば、「サマータイムの帰宅ラッシュや」とでもすれば、読者はある程度のところまで想像してくれます。
“ポイント”

クラクション「コーラ」がのどを走る夜

空素(カラス)

夏井いつき先生より
「『コーラ』も季語とは、知りませんでした」と作者のコメント。

「清涼飲料水」という季語の範疇に入っている、という認識です。カギカッコは、表現の上で必要ですか?
“ポイント”

車窓からオリオン見上げ紅茶飲む

京都さくら

夏井いつき先生より
「見上げ」は必要ですか?
“ポイント”

ドライブ中別れ話や雷光る

春霞

夏井いつき先生より
夏の「雷」は、音を主体とした季語。秋の「稲光」は、音なき光を主体とした季語です。
“ポイント”

似合わないGジャンを着て夜半の夏

希凛咲女

夏井いつき先生より
素材はよいですよ。「~着て」は必要ですか。
“ポイント”

ネオン咲くドライブインで夜涼かな

葉山美咲

夏井いつき先生より
この助詞「で」が散文的な使い方になります。ひとまず、「で」は解消しましょう。
“ポイント”

箸置くや「信じろ」を消す雷鳴が

よしえ

夏井いつき先生より
何か切迫している空気は感じるのですが、何を「信じろ」なのか、読み切れないもどかしさがあります。
“ポイント”

着地なくラストオーダー火取虫

陽だまり

夏井いつき先生より
上五「着地なく」の読みを迷いました。再考してみましょう。
“ポイント”

燈火数多共に逝こうと秋彼岸

向日葵姐

夏井いつき先生より
中七「共に逝こうと」と書いてしまうのではなく、「燈火」のどんな様子が、そのように感じられたのか。そこを描写するのが俳句です。
“ポイント”

空ぶかし止まぬエンジン八月尽

細川 鮪目

夏井いつき先生より
「八月の最後に何かしたいと思う気持ちと、暑さや忙しさで思い通りに行動できない感じを、空ぶかしのエンジンに託しました」と作者のコメント。

表現したいことは分かります。ただ、下五の季語「八月尽」がベストの選択かどうか、悩ましいところです。
“ポイント”

渋滞を泳ぎ疲れて煙草かな

メレンゲたこ焼き

夏井いつき先生より
この場合の「かな」の詠嘆はあまり効いていません。むしろ「~煙草」と体言止めにした方が、余韻が深くなります。
“ポイント”

目が合ったさっきの鯵の叩きかな

折田巡

夏井いつき先生より
「兼題写真のドライブインには水槽がありました。そこから連想したのは、店内の水槽で泳いでいた鯵を料理してくれた居酒屋。新鮮な鯵のたたきやフライが美味かったです」と作者のコメント。

お気持ちは分かりますが、展開に少々無理があります。
“ポイント”

メット脱ぐドライブインに夏至夜風

ヒロヒ

夏井いつき先生より
中七「~に」の助詞のみ一考です。人選は目の前ですよ。
“ポイント”

夏合宿ぐでんぐでんの夜行バス

きいこ

夏井いつき先生より
「学生時代、毎年夏は遠征に行っていました。行きのバスの中はまだ話し声が聞こえたり、シャキッと座ってたりするんですが、帰りはもうボロボロ。精も根も尽き果てて座席で各々が寝落ちしてる様子を詠んでみました」と作者のコメント。

「ぐでんぐでん」は、酒に酔っぱらっているようにも読めるオノマトペですが……。
“ポイント”

仙人掌の白一輪に夜明けかな

あま門

夏井いつき先生より
「三年目にやっと花を咲かせてくれた私のサボテン。花茎の芽が出てから一ヶ月、毎日早起きして待っていました。花色は白でした」と作者のコメント。

下五惜しいです。この句の「かな」はあまり効いていません。「~夜明け」と体言止めにする方が、余韻が深くなります。再考してみましょう。人選は目の前です。
“ポイント”