写真de俳句の結果発表

第46回「深夜のドライブイン」《ハシ坊と学ぼう!⑥》

ハシ坊

「深夜のドライブイン」

評価について

本選句欄は、以下のような評価をとっています。

「天」「地」「人」…将来、句集に載せる一句としてキープ。
「並選」…推敲することで「人」以上になる可能性がある句。
「ハシ坊」…ハシ坊くんと一緒に学ぶ。

特に「ハシ坊」の欄では、一句一句にアドバイスを付けております。それらのアドバイスは、初心者から中級者以上まで様々なレベルにわたります。自分の句の評価のみに一喜一憂せず、「ハシ坊」に取り上げられた他者の句の中にこそ、様々な学びがあることを心に留めてください。ここを丁寧に読むことで、学びが十倍になります。

「並選」については、ご自身の力で最後の推敲をしてください。どこかに「人」にランクアップできない理由があります。それを自分の力で見つけ出し、どうすればよいかを考えるそれが最も重要な学びです。

安易に添削を求めるだけでは、地力は身につきません己の頭で考える習慣をつけること。そのためにも「ハシ坊」に掲載される句を我が事として、真摯に読んでいただければと願います。

驟雨来て灯りに逃げしドライブイン

琥幹

夏井いつき先生より
「夕立が突然降り出し、真っ暗な雲の下、ドライブインのあたたかい灯りが避難ボートのように見えて、飛び込むところを詠みました」と作者のコメント。

語順を再考しましょう。「ドライブインの灯」を映像として、しっかりと見せたいところです。
“ポイント”

六月の幻灯機より吸血鬼

よはく

夏井いつき先生より
季語が動きそうな気がします。「六月」がベストかどうか、再考してみましょう。
“ポイント”

宵闇に有刺鉄線内の無辺

馬風木瓜子

夏井いつき先生より
上五「~に」は要一考の助詞です。中七下五のフレーズは良いですから、ここの一音を再考して、完成させましょう。
“ポイント”

県境の除染迫らる夜を月

ナノコタス

夏井いつき先生より
「迫らる」が「夜」に掛かっていくのであれば、「迫らるる」となるべき……だが。
“ポイント”

冬銀河苦さも乗せて夜行バス

安久愛 海

夏井いつき先生より
「父が倒れて十数年、介護が必要になっていました。離れて暮らしているので 普段は妹が老父と老母を手伝ってくれていて、二、三か月に一度、故郷に戻って介護生活を交代するということを続けていました。まだ小さい子供を抱えている妹への罪悪感、東京に残している自分の家族の心配など、さまざまな思いを抱えて、実際は新幹線に乗って帰っていましたが、夜行バスに乗っている乗客も、皆さん様々な事情があるのだろうなと想像します」と作者のコメント。

中七が説明です。「苦さ」の原因が、読者に少しでも読み取れるような配慮が欲しいところです。
“ポイント”

蛍狩横切る猫目共演者

笑道心文

夏井いつき先生より
一句に生き物を二つ入れると、お互いを殺します。ダメというわけではありませんが、高度なテクニックが必要になります。ひょっとすると「猫目」の人物を「共演者」だといってるのかもしれませんが、いずれにしても、季語「蛍狩」が主役になれるよう、再考してみましょう。
“ポイント”

凍星や互ひを照らす販売機

芹が谷栗まんじゅう

夏井いつき先生より
「夜中のドライブインは人がいなくて、自動販売機だけがお互いを照らすように明るく寂しく光っていました」と作者のコメント。

表現したいことは十分わかります。ただ、中七は説明です。俳句は描写ですよ。
“ポイント”

夏の夜にドライブするも夢のうち

ねこぱんだ

夏井いつき先生より
「大きく体調を崩し、二回投稿できませんでしたが、今月からまたよろしくお願いします」と作者のコメント。

無理をすると長続きしません。体調に合わせて、ゆっくりコツコツと学んでまいりましょう。
さて、この句ですが、「ドライブ」しながら居眠り? とも読めてしまいます。まずは、「夏の夜や」と切れをいれて、中七下五を整えてみましょう。
“ポイント”

冷めぬ夜をネオン導く夏の風

ねこぱんだ

夏井いつき先生より
「導く」は要一考。「ネオン」のどんな様子が、導いているのように感じられたのですか。そこを描写するのが、俳句です。
“ポイント”

朝遠し仕事している誘蛾灯

朝宮馨

夏井いつき先生より
中七「仕事している」は確かにそうなのですが、誘蛾灯がどんな様子だから、「仕事している」と思ったのでしょうか。そこを描写してみましょう。
“ポイント”

誘蛾灯はじける刹那後世の闇

鄙野蕎麦の芽

夏井いつき先生より
「誘蛾灯はじける」までは、描写できています。この描写があれば、「刹那」と念を押す必要はありません。下五「後世の闇」は少々観念的。まずは、描写するところから俳筋力をつけてまいりましょう。
“ポイント”

闇濃き日明けて聖母被昇天祭

鄙野蕎麦の芽

夏井いつき先生より
「『明日は』と『明けて』で悩みました。『明けて』の方が解決感があるような気がしてこっちにしました。自信はまったくありません」と作者のコメント。

季語そのものがかなりの音数を占めていますので、前半をシェィプアップしてみましょう。情報の重なりはありませんか。
“ポイント”

五月闇通夜参列の中央道

かよちゅう

夏井いつき先生より
「実父が亡くなったと妹から夜中に連絡あった時に、飛び起きて主人と二人、中央道で実家にすっ飛んで行った時のことを詠みました。『参列の』と『参列へ』で迷ってしまいました」と作者のコメント。

もう一案として「通夜へ」とすれば、「参列」そのものが不要になります。全体を再考してみましょう。
“ポイント”

人まばら日付またいでシャワーかな

茶椅子

夏井いつき先生より
下五「かな」の詠嘆は効いていません。上五「人まばら」がどういう場所なのか、その情報が欲しいですね。写真はあくまでも兼題。俳句は、文字面が全てです。
“ポイント”

八月や店主も客も三代目

水鳥川詩乃

夏井いつき先生より
中七下五のフレーズがよいですね。季語は、再考してみましょう。単純に、それが「八月」の頃だからという理由で季語を取り合わせるのは早計です。季語「八月」はかなり重い奥行をもっています。この店の雰囲気を表現できる季語を探してみましょう。
“ポイント”

自販機の汁粉一人で冬銀河

一胡

夏井いつき先生より
助詞「で」が散文的な使い方。ここが大事な最後の締めどころです。再考してみましょう。
“ポイント”

秋夜のアンコールバンマスの目交ぜ

酒天わーい

夏井いつき先生より
語順を逆にすると効果的です。

添削例
バンマスの目交ぜ秋夜のアンコール
“ポイント”

貼り紙のお代は籠へ冷やしそば

田中 百子

夏井いつき先生より
「若い頃、皆でワイワイ騒いでいても、ちゃんと代金は籠に入れ、それを持ち去る人もいなかった時代。そんなドライブインがあったことを思い出しました」と作者のコメント。

貼り紙に書いてある文字だと分かるように、「  」をつけてみましょう。
“ポイント”

風死すグラスの氷音高く

鶴喰 照

夏井いつき先生より
調べを整えてみましょう。すぐに、人選になりますよ。
“ポイント”

黒南風や自販機の微かな唸り

金魚

夏井いつき先生より
「『夜』を入れたかったのですが、上手くまとまりませんでした」と作者のコメント。

「夜」を入れたかったのならば、「黒南風」の「黒」に拘るよりは、「南風の夜や」とするほうが得策かと。
“ポイント”

夏深し夜のしじまやハイウェイ

道草散歩

夏井いつき先生より
「夏深し」「~しじまや」と切れるので、三段切れになります。どちらかを繋ぎましょう。
“ポイント”

雷のサンドイッチをがぶりとす

大地緑

夏井いつき先生より
取り合わせの素材は面白いのですが、「~の」と繋いでしまうのが、よいのかどうか。まさか、「雷の」は比喩ではないですよね。
“ポイント”