第46回「深夜のドライブイン」《ハシ坊と学ぼう!⑦》
評価について
本選句欄は、以下のような評価をとっています。
「天」「地」「人」…将来、句集に載せる一句としてキープ。
「並選」…推敲することで「人」以上になる可能性がある句。
「ハシ坊」…ハシ坊くんと一緒に学ぶ。
「並選」…推敲することで「人」以上になる可能性がある句。
「ハシ坊」…ハシ坊くんと一緒に学ぶ。
特に「ハシ坊」の欄では、一句一句にアドバイスを付けております。それらのアドバイスは、初心者から中級者以上まで様々なレベルにわたります。自分の句の評価のみに一喜一憂せず、「ハシ坊」に取り上げられた他者の句の中にこそ、様々な学びがあることを心に留めてください。ここを丁寧に読むことで、学びが十倍になります。
「並選」については、ご自身の力で最後の推敲をしてください。どこかに「人」にランクアップできない理由があります。それを自分の力で見つけ出し、どうすればよいかを考える。それが最も重要な学びです。
安易に添削を求めるだけでは、地力は身につきません。己の頭で考える習慣をつけること。そのためにも「ハシ坊」に掲載される句を我が事として、真摯に読んでいただければと願います。
夏波や明け待つカフェに肩冷えし
林檎子
夏井いつき先生より
下五が惜しいです。「肩」に焦点を絞ってみましょう。
添削例
夏波や明け待つカフェに冷ゆる肩
下五が惜しいです。「肩」に焦点を絞ってみましょう。
添削例
夏波や明け待つカフェに冷ゆる肩
短夜の窓辺に映ゆる美し君
陽雲
夏井いつき先生より
「美し」が「君」にかかるのならば、「美しき」と連体形になりますが……。
「美し」が「君」にかかるのならば、「美しき」と連体形になりますが……。
花見帰路店内響くフォークの音
直感勝負
夏井いつき先生より
「著名な桜を見に、遠路出かけて行きました。帰りは渋滞に遭い、すっかり夜の食事は遅くなりました。やっと見つけたレストランは閉店間際でお客は自分達だけです。食事は美味しかったのですが、静かで食器やナイフ・フォークの音が響いてたのが印象にあります。今回の投稿は二回目です。時間を見つけては」《ハシ坊と学ぼう!》で勉強させて頂いてますが、未だ半分も理解できてない状況です。ご指導の程、宜しくお願いします」と作者のコメント。
「花見帰路」と経緯を語りたいお気持ちは分かるのですが、すでに「花見」が終わってしまっているので、季語を主役にするという考え方にはそぐわない書き方です。上五を「花の夜や」あるいは「花の夜の」として、中七下五を整えてみましょう。中七に、更なる工夫の余地があります。
「著名な桜を見に、遠路出かけて行きました。帰りは渋滞に遭い、すっかり夜の食事は遅くなりました。やっと見つけたレストランは閉店間際でお客は自分達だけです。食事は美味しかったのですが、静かで食器やナイフ・フォークの音が響いてたのが印象にあります。今回の投稿は二回目です。時間を見つけては」《ハシ坊と学ぼう!》で勉強させて頂いてますが、未だ半分も理解できてない状況です。ご指導の程、宜しくお願いします」と作者のコメント。
「花見帰路」と経緯を語りたいお気持ちは分かるのですが、すでに「花見」が終わってしまっているので、季語を主役にするという考え方にはそぐわない書き方です。上五を「花の夜や」あるいは「花の夜の」として、中七下五を整えてみましょう。中七に、更なる工夫の余地があります。
びいどろのおちょこを選む夏の夜や
乃咲カヌレ
夏井いつき先生より
「選む・撰む・択むの中から『選』と『択』で迷い、馴染みのある『選』にしました」と作者のコメント。
動詞の選択もさることながら、下五「~や」は、バランスが取りにくい難しい型です。語順も含めて、再考してみましょう。
「選む・撰む・択むの中から『選』と『択』で迷い、馴染みのある『選』にしました」と作者のコメント。
動詞の選択もさることながら、下五「~や」は、バランスが取りにくい難しい型です。語順も含めて、再考してみましょう。
短夜を更す遠乗りサザンの音
風子
夏井いつき先生より
素材はよいですよ。「更かす」の意味ならば、送り仮名「か」を入れましょう。「~の音」が必要かどうかも再考しましょう。
星殺し足錆び付かす溽暑
北村桜優
夏井いつき先生より
「雲が厚くて海沿いで、となったら湿気がヤバそうなのと、海の近くは錆による車の損耗が激しいと聞いて。兼題写真だと星が見えないのはネオンのせいですよね」と作者のコメント。
表現しようとする内容は、とてもよいのです。調べを再考してみましょう。その上で、必要な言葉を足すことも考えて下さい。
「雲が厚くて海沿いで、となったら湿気がヤバそうなのと、海の近くは錆による車の損耗が激しいと聞いて。兼題写真だと星が見えないのはネオンのせいですよね」と作者のコメント。
表現しようとする内容は、とてもよいのです。調べを再考してみましょう。その上で、必要な言葉を足すことも考えて下さい。
長距離を荷運ぶ吾は火取虫
帷子川ソラ
夏井いつき先生より
下五の季語「火取虫」を比喩として使っているかと。比喩になると季語の鮮度が落ちてしまいます。一考してみましょう。
駐車の列見て巣作る夏つばめ
那烏夜雲
夏井いつき先生より
「夏つばめ」の時期には、すでに巣作りは終えているのではないかと。
「夏つばめ」の時期には、すでに巣作りは終えているのではないかと。
ソーダ水ゴーゴーうなる波の音
岡 ミミズク
夏井いつき先生より
「兼題写真の中に『シーサイドレストラン』とあったので、そこに入り、食事のあとにソーダ水を飲みながら波の音を聞いている。これも想像で作ってみました」と作者のコメント。
素材はよいのですが、中七は要一考。
「兼題写真の中に『シーサイドレストラン』とあったので、そこに入り、食事のあとにソーダ水を飲みながら波の音を聞いている。これも想像で作ってみました」と作者のコメント。
素材はよいのですが、中七は要一考。
ドライブイン笑顔こぼれる夏休み
龍眞
夏井いつき先生より
「笑顔」とあれば、「こぼれる」は不要です。
「笑顔」とあれば、「こぼれる」は不要です。
思い馳すルート66(ろくろく)炎暑かな
松田 涼花
夏井いつき先生より
下五「かな」が浮いているので、この句の場合は、下五名詞止で「~なる炎暑」とでもするのがベター。後は、上五を再考しましょう。「思い馳す」のような言葉は、俳句においては本来不要です。思いを馳せているから、このような俳句ができているのですからね。
下五「かな」が浮いているので、この句の場合は、下五名詞止で「~なる炎暑」とでもするのがベター。後は、上五を再考しましょう。「思い馳す」のような言葉は、俳句においては本来不要です。思いを馳せているから、このような俳句ができているのですからね。
渋滞にソフトクリーム今夜だけ
みーあ
夏井いつき先生より
上五「~に」を「~の」とすれば、人選です。
上五「~に」を「~の」とすれば、人選です。
金立のちゃんぽんに列夜半の冬
たそへ
夏井いつき先生より
作者にとっては意味のある地名「金立」なのだと思いますが、作品として考えた時に、地名の効果は薄いかと。
作者にとっては意味のある地名「金立」なのだと思いますが、作品として考えた時に、地名の効果は薄いかと。
火我のとぶあの日あの娘と深夜めし
まちつぼ
夏井いつき先生より
「我」は、「蛾」の入力ミスでしょうか。誤字を直せば、並選です。
「我」は、「蛾」の入力ミスでしょうか。誤字を直せば、並選です。
蟬の羽や車内に寝顔残し行く
太刀盗人
夏井いつき先生より
「我が子を車内に残して、深夜の逢瀬」と作者のコメント。
小説の一場面のような一句を描きたいのですね。とはいえ、この文字面と作者の意図のあいだには溝があります。誰の「寝顔」なのかわからないし……。
小説の一場面のような一句を描きたいのですね。とはいえ、この文字面と作者の意図のあいだには溝があります。誰の「寝顔」なのかわからないし……。
梅雨冷の水滴にネオン802
滋庵風
夏井いつき先生より
素材はよいですよ。下五「802」が、ちょっと読み解きにくいか。人選を目指して、推敲してみましょう。