写真de俳句の結果発表

第46回「深夜のドライブイン」《ハシ坊と学ぼう!⑧》

ハシ坊

「深夜のドライブイン」

評価について

本選句欄は、以下のような評価をとっています。

「天」「地」「人」…将来、句集に載せる一句としてキープ。
「並選」…推敲することで「人」以上になる可能性がある句。
「ハシ坊」…ハシ坊くんと一緒に学ぶ。

特に「ハシ坊」の欄では、一句一句にアドバイスを付けております。それらのアドバイスは、初心者から中級者以上まで様々なレベルにわたります。自分の句の評価のみに一喜一憂せず、「ハシ坊」に取り上げられた他者の句の中にこそ、様々な学びがあることを心に留めてください。ここを丁寧に読むことで、学びが十倍になります。

「並選」については、ご自身の力で最後の推敲をしてください。どこかに「人」にランクアップできない理由があります。それを自分の力で見つけ出し、どうすればよいかを考えるそれが最も重要な学びです。

安易に添削を求めるだけでは、地力は身につきません己の頭で考える習慣をつけること。そのためにも「ハシ坊」に掲載される句を我が事として、真摯に読んでいただければと願います。

列並ぶトイレに桔梗夜行バス

京あられ

夏井いつき先生より
サービスエリアのトイレ? 長距離バスの中のトイレ? そこが明確になるように、言葉を選びましょう。季語「桔梗」が主役になってくれるように。
“ポイント”

誘蛾灯赤し別れ路選ぶ駐車場

つづきののんき

夏井いつき先生より
「別れ路選ぶ」とは? 人生の? 現実的なルート? 音数の溢れ方も気になります。
“ポイント”

不夜城の闇に隠るる金木犀

一生のふさく

夏井いつき先生より
「金木犀」は、匂いを主たる成分とした季語です。中七「闇に隠るる」は、一考の余地があるのではないかと。
“ポイント”

嗚咽噛みトイレ休憩梅雨の月

風早 杏

夏井いつき先生より
「実家の父の急逝を電話で聞いて、駆けつけるドライブインのトイレ休憩の景です」と作者のコメント。

「トイレ休憩」だと説明する必要があるのか。少々気になりました。敢えてそこを書きたいのならば、徹底的に生々しく表現すきべかと。
“ポイント”

夏の夜や箍の外れた二十三

⑦パパ

夏井いつき先生より
「社会人一年生だった二十三歳の頃が、一番モテたし、一番遊んでいました。いま、バチが当たってますw」と作者のコメント。

「二十三」が年齢なのか、何かの道具なのか、迷いました。「二十三歳」として、語順を再考してみましょう。
“ポイント”

ネオンサインちりちり日焼跡隠す

中村すじこ

夏井いつき先生より
「着地がどうなんだろうと、今も悩み中です」と作者のコメント。

そうですね、「隠す」がいるのかどうか…。
“ポイント”

晩夏のドライブイン通夜振る舞いは無し

ペトロア

夏井いつき先生より
語順は要一考です。
“ポイント”

ドライブインネオンも失せて守宮住む

歩一

夏井いつき先生より
「数年ぶりの通りすがりのドライブイン。ネオンも失せて人影もなく、廃墟になったのか」と作者のコメント。

この句の場合の助詞「も」は、要一考です。
“ポイント”

鄙の里ひまわり夜半に東向く

小倉あんこ

夏井いつき先生より
「「鄙の里(ひなのさと)」という、向日葵畑が隣接している道の駅が千葉県にあります。ただ、一般的なイメージを持っていただいても良いかなと思って「 」はあえて外しました。向日葵、特に若い向日葵は夜中に西から東へと向きを変えるそうです。漢字が続くので向日葵はひまわりにしました」と作者のコメント。

「若い向日葵は夜中に西から東へと向きを変える」という情報、実に興味深いですね。となれば、「鄙の里」と場所を書くのではなく、向日葵の一物仕立てで勝負してはいかがでしょう。
“ポイント”

万物がほたる蛍の残響を

千夏乃ありあり

夏井いつき先生より
もう一句も同じ句想でした。こちらは、後半「蛍の残響を」が、こなれていない印象。「蛍の残響」という詩語は、さらに昇華できそうな予感がします。
“ポイント”

やがて扉は閉められた夏舘

八かい

夏井いつき先生より
「これは俳句と言えるでしょうか?」と作者のコメント。

俳句を作ろうという意志は見える句です。ただ、「夏館」という季語は、基本的には「涼し気に設えられた邸」を意味します。ですから、本意の把握や調べの点で、工夫の余地はある句です。
“ポイント”

蟷螂が時速百㎞フロントに

小川晴よ

夏井いつき先生より
「時速百㎞で走る車のフロントガラスに、蟷螂が止まっている景が見えるでしょうか?」と作者のコメント。

語順を再考してみましょう。
“ポイント”

目蓋なきゾンビの群れや熱帯夜

みづちみわ

夏井いつき先生より
「虚の存在であるゾンビを描くことで、季語『熱帯夜』を立たせることができないか? とチャレンジしました。中七を『ゾンビ群れ来る』として動きを出そうとも思いましたが、ここは『群れ』そのものを詠嘆した方が、静かな恐ろしさが出ると思いました」と作者のコメント。

その意図は、面白いチャレンジです。ただ、「ゾンビ」の描写に傾き過ぎていて、季語「熱帯夜」が脇役になっています。ここが勝負のしどころやね。
“ポイント”

賢治忌ヤドライブスルーATM

さ乙女龍チヨ

夏井いつき先生より
「ドライブインからドライブで始まるドライブスルーへ。雨にも風にも負けず働いた尊いお金を、ドライブスルーのATMでおろす様子です。『ヤ』は後にカタカナが続くことや、季語が『賢治忌』であることからカタカナにしました」と作者のコメント。

うーむ……そこまでは読み解けません。言葉を詰め込み過ぎたなあ。
“ポイント”

長距離の肉体冷ます夏の雨

笑笑うさぎ

夏井いつき先生より
「『身体』ではなく、あえて『肉体』を選びました。長距離を緊張した身体が冷めていく感じは、物質的な肉体のほうがあうのかなぁと思いました」と作者のコメント。

「肉体」を使いたい意図はよく分かります。ただ、この字面だと、長距離走を走ったのちの「肉体」と読む人がほとんどではないかと。その点はどうでしょう?
“ポイント”

ダイナーの後姿の秋思かな

彩汀

夏井いつき先生より
「ダイナー」と「秋思」、取り合わせがよいと思います。中七は、要一考。
“ポイント”

夜行バス一人の窓を虎が雨

こもれび

夏井いつき先生より
「急ぎ夜行バスに乗ったのです。不安を抱え、携帯を握りしめて……」と作者のコメント。

雨の表現として、さまざまな季語がありますが、敢えて「虎が雨」とした点を、読者としてどう読み解くか。ちょっと芝居仕立てになってしまうか……。
“ポイント”

心の手繋ぐドライブ天の川

伊藤 柚良

夏井いつき先生より
「水害後、鬱を発症した夫は、一人でどこも行けなくなっていた時期がありました。どこに行くにも一緒で、よく気晴らしに珈琲を飲みに行きました。今はすっかり元気になりゴルフに行ってます。やれやれー」と作者のコメント。

そんな体験を詠もうとしたのですね。人生の大切な光景ですから、一句として残したいてすね。上五中七「心の手繋ぐドライブ」が、第三者にはどういう状況の誰と誰なのか分かりません。作品として仕上げるためには、そこを再考する必要があります。
“ポイント”

短夜や誘蛾灯めくドライブイン

玉響雷子

夏井いつき先生より
主たる季語を「短夜」、比喩として「誘蛾灯」という季語。その意図は分かります。ただ、この表現この語順だと、お互いを殺し合います。意図を実現させるための方法はありますので、再考してみましょう。
“ポイント”

ドライブイン一灯のもと火蛾の舞ひ

しげはら京子

夏井いつき先生より
季語「火蛾」は、まさに「一灯のもと~舞」うものです。季語の中に、それらの情報はすでに入っていると考えましょう。
“ポイント”

ハンバーガーぺらぺらちりり誘蛾灯

山羊座の千賀子

夏井いつき先生より
オノマトペでの表現、面白いですね。語順がこれでよいのか、その点だけ再考してみましょう。
“ポイント”