写真de俳句の結果発表

第46回「深夜のドライブイン」《ハシ坊と学ぼう!⑨》

ハシ坊

「深夜のドライブイン」

評価について

本選句欄は、以下のような評価をとっています。

「天」「地」「人」…将来、句集に載せる一句としてキープ。
「並選」…推敲することで「人」以上になる可能性がある句。
「ハシ坊」…ハシ坊くんと一緒に学ぶ。

特に「ハシ坊」の欄では、一句一句にアドバイスを付けております。それらのアドバイスは、初心者から中級者以上まで様々なレベルにわたります。自分の句の評価のみに一喜一憂せず、「ハシ坊」に取り上げられた他者の句の中にこそ、様々な学びがあることを心に留めてください。ここを丁寧に読むことで、学びが十倍になります。

「並選」については、ご自身の力で最後の推敲をしてください。どこかに「人」にランクアップできない理由があります。それを自分の力で見つけ出し、どうすればよいかを考えるそれが最も重要な学びです。

安易に添削を求めるだけでは、地力は身につきません己の頭で考える習慣をつけること。そのためにも「ハシ坊」に掲載される句を我が事として、真摯に読んでいただければと願います。

廃墟なるドライブインに星涼し

岡田きなこ

夏井いつき先生より
中七の助詞「に」のみ、再考してみましょう。上五や中七の「に」は、散文的になりがちな要注意の助詞です。
“ポイント”

赤星や蕎麦売切の券売機

おこそとの

夏井いつき先生より
「赤星」は季語? 「蕎麦」と限定することが得か損か。悩ましいですね。
“ポイント”

待てぬこと破局の訳か短夜ぞ

鈴白菜実

夏井いつき先生より
「若気の至り句です。結婚も考えていたのに、仕事のこともあって待ってほしいと言ったら、『醒めた』と言われて突然別れを切り出されました。こんな季節に! 夜だってすぐ明けるのに! 待てないってどういうことだよ! 悲しいより怒りがこみ上げたせいで、しばらく引きずりました」と作者のコメント。

生々しい経験。いつか、これをガツン! と一句にしてやりましょう。人生、心の倍返しです(笑)。下五「短夜ぞ」が無理やりつけたした感じになっています。語順も含め、再考してみましょう。
“ポイント”

虫の闇カーナビの明り頼りにし

一久恵

夏井いつき先生より
「《ハシ坊と学ぼう!》にお取り上げ頂き、ありがとうございました。先生のご丁寧なご指導、もったいない限りです。俳筋力をつけて上達する事が、恩返しかと考えています。私の目標は、まず、常に『人選』位の実力を持つ事です。定年退職し、介護の日常の中、学びや創作のひとときは貴重で、楽しいものです。昭和の子ですから、粘り強く頑張りますよ〜ww」と作者のコメント。

コツコツと一緒に俳筋力をつけていきましょう。
さて、この句ですが、「カーナビの明り」を頼りにしているのならば、車内ですよね。となった時に、季語「虫の闇」がどこまで効いてくるか。ここが思案のしどころですよ。
“ポイント”

トラックや窓に仮眠の白い靴

国東町子

夏井いつき先生より
「ドライブインの駐車場に大型トラックを駐め、窓を開け、足を伸ばして仮眠をしている様子を詠んでみました」と作者のコメント。

季語「白靴」は、基本的には夏のお洒落。労働としての白いズック? とは、多少ニュアンスが異なります。
“ポイント”

驟雨のシーボニア煙る白ポルシェ

飛来 英

夏井いつき先生より
「臨時休校になったので、車で友人らと三浦半島のシーボニアマリーナへ。到着したのは、もう薄暗くなった頃で、おまけに驟雨。駐車している高級車にぶつけぬように駐車しました。(一八音ですが)なるべく十七音に収めるため『白の』とはしませんでしたが、調べは『白の』とした方が良い気がします」と作者のコメント。

なるほど、その感覚がおありでしたら、中七「煙る」という描写もあわせて、再考してはどうでしょう。
“ポイント”

甘酒やソース顔の三春達磨

大西みんこ

夏井いつき先生より
書こうとしている内容は面白いです。軽やかな可笑しみなので、調べがギクシャクしているのが勿体ない。「ソース顔の三春達磨○○○○○」で一句、「甘酒や三春達磨○○○○○」で一句、切り分けてみましょう。比喩とはいえ、「ソース」が、季語「甘酒」を邪魔しています。
“ポイント”

明易のバスや東京へ引くアイライン

笑田まき

夏井いつき先生より
やろうとしていることは分かるし、佳いと思います。ただ、調べがもたついているのが惜しい。何か方法はないかな?
“ポイント”

夏休み京都の人へ深夜バス

ひよこ草

夏井いつき先生より
「京都の人へ」とは、どんなニュアンスなのでしょう?
“ポイント”

クラクション果てないわめき青蜥蜴

小川さゆみ

夏井いつき先生より
切り取ろうとしている場面はよいと思います。季語がどこまで生きてくるか。ここが悩みどころです。
“ポイント”

規制線をくぐる警官脇の汗

仁和田 永

夏井いつき先生より
警官の脇の汗に目が行くのは、俳人の視線です。ただ、この述べ方だと、「規制線をくぐる警官」をみて、自分が脇に冷や汗をかいている、という読みも否定できません。その誤読が回避できるような配慮がもう一匙欲しい。
“ポイント”

低音のゆるしハバネラ夏の果

東田 一鮎

夏井いつき先生より
「ゆるし」は終止形なので、ここで意味が切れます。「ハバネラ」に繋げたいのならば「ゆるき」となりますが。
“ポイント”

白線の溶けて流れて片かげり

うすい木蓮

夏井いつき先生より   評価    並 
「句のコメントではありませんが、俳号を変更しました。元・藤岡美波です。俳号を変更したときは、皆さんどのようにアナウンスをされるのでしょうか? それとも、特にそういう通知はせず、しれっと新たなる俳号で投句を続けていくのでしょうか? よければ教えていただきたいです」と作者のコメント。

事務局からは「特に当サイト内に俳号変更のお知らせ欄のようなものは設けておりませんが、新しい俳号の後に(◯◯改め)と付記したり、SNSでお知らせする方が多く見受けられます。公表する・しないの判断も含め、皆さまのお好きな形でお願いできればと思います」とのことでした。
“ポイント”

ドライブイン思い出数多老いの春

おケイちゃん

夏井いつき先生より
中七「思い出数多」と引っくくってしまうのは得策ではありません。俳句は映像です。このドライブインで、この老人は今何をしているのか。あるいは、ドライブインに入らないままなのか。そこを描写しましょう。
“ポイント”

帰省バス外から「ラジオ深夜便」

やっちゃん日記

夏井いつき先生より
「外から」とは、どういう状況なのでしょう?
“ポイント”

緑陰に導かれ入る喫茶店

井上玲子

夏井いつき先生より
中七が説明になっています。「緑陰の喫茶店」「緑陰に喫茶店」とでもすれば、ある程度想像できますよ。
“ポイント”

褥暑の夜バイク乗りと缶コーヒー

浜 けい

夏井いつき先生より
五六六、合わせると確かに十七音ですが、内容と調べがギクシャクしています。調べを再考してみましょう。
“ポイント”

かなぶんやケームセノクーのネオン

四條たんし

夏井いつき先生より
「自信作です。ゲームセンターのネオンが切れて『ケームセノクー』になっているのを見つけました。なんとなく寂れた感じと、かなぶんの相性もいいかなと思います。ケームセノクーがネオンであることを読み手に伝えるための助詞に悩みましたが、『ケームセノクー』自体が描写なので、シンプルに『の」で接続しました。あえて『ケームセノクー』と鍵括弧で囲まなかったのも、伝わり過ぎないのでいいかなと思います」と作者のコメント。

ふふふ、「伝わり過ぎない」という考え方もあってよいと思います。ただ、一読した時「ケームセノクー」が分からなくて、検索しました。伝わるまでに、ちょっと時間がかかりすぎるので、読者への負荷が大きすぎます。さて、どうする?
“ポイント”

蛍烏賊観なむと夜半の海の駅

英曙

夏井いつき先生より
中七「観なむと」は、「観んと」でしょうね。
“ポイント”

鵙の贄夜の長さのドライヴイン

楽花生

夏井いつき先生より
「深夜のドライヴインには様々な車が並び、生きているような死んでいるような不気味な配列が現れます」と作者のコメント。

描こうとしている内容はよいです。「鵙の贄」との取り合わせがベストか否か。大事な選択です。
“ポイント”

雷雨このタイミングにてドライブイン

おっとっと

夏井いつき先生より
「夜、ドライブしていたら俄に降ってきた強い雨と雷に不安になったが、その時丁度見えた深夜のドライブイン。ラッキー‼ あそこで軽い食事をして、雨宿りをさせてもらおう」と作者のコメント。

「その時丁度見えた深夜のドライブイン」、これを描きたいのですね。ならば、中七を再考してみましょう。俳句は描写ですよ。
“ポイント”