第46回「深夜のドライブイン」《ハシ坊と学ぼう!⑭》
評価について
本選句欄は、以下のような評価をとっています。
「天」「地」「人」…将来、句集に載せる一句としてキープ。
「並選」…推敲することで「人」以上になる可能性がある句。
「ハシ坊」…ハシ坊くんと一緒に学ぶ。
「並選」…推敲することで「人」以上になる可能性がある句。
「ハシ坊」…ハシ坊くんと一緒に学ぶ。
特に「ハシ坊」の欄では、一句一句にアドバイスを付けております。それらのアドバイスは、初心者から中級者以上まで様々なレベルにわたります。自分の句の評価のみに一喜一憂せず、「ハシ坊」に取り上げられた他者の句の中にこそ、様々な学びがあることを心に留めてください。ここを丁寧に読むことで、学びが十倍になります。
「並選」については、ご自身の力で最後の推敲をしてください。どこかに「人」にランクアップできない理由があります。それを自分の力で見つけ出し、どうすればよいかを考える。それが最も重要な学びです。
安易に添削を求めるだけでは、地力は身につきません。己の頭で考える習慣をつけること。そのためにも「ハシ坊」に掲載される句を我が事として、真摯に読んでいただければと願います。
握る手の重くなりたる夜光虫
きたくま
夏井いつき先生より
「スマホのLINEがずっと既読のまま返事がこない、気になって仕方ない様子を詠みました」と作者のコメント。
「握る手」が、スマホを握っているとは読み解けません。誰かの手を握っているのかと……。
「スマホのLINEがずっと既読のまま返事がこない、気になって仕方ない様子を詠みました」と作者のコメント。
「握る手」が、スマホを握っているとは読み解けません。誰かの手を握っているのかと……。
ドライブイン霧が開けるか夢のなか
道工和
夏井いつき先生より
下五は要一考。夢の中で霧が開けているのだとしたら、季語としての鮮度が落ちます。ドライブインでうたた寝をしていた間に、霧が晴れていったのだとしたら、それが分かるような書き方をしましょう。
下五は要一考。夢の中で霧が開けているのだとしたら、季語としての鮮度が落ちます。ドライブインでうたた寝をしていた間に、霧が晴れていったのだとしたら、それが分かるような書き方をしましょう。
ネオン一文字消えて海街冬ざるる
緑萌
夏井いつき先生より
「ネオン一文字消えて」という措辞には、強い既視感があります。何らかの工夫が欲しいですね。
「ネオン一文字消えて」という措辞には、強い既視感があります。何らかの工夫が欲しいですね。
サングラスひとりネオンのチャーメンへ
島田雪灯
夏井いつき先生より
「この句は夜の設定なのですが、夜にかけているサングラスとなると、季語としての力は弱くなるのでしょうか?」と作者のコメント。
季語「サングラス」は、日差しを避けることに本意があるので、夜という時間帯になると、季語としての鮮度は落ちるかと思います。夜のサングラスを詠んではいけないという意味ではなく、かなりの工夫あるいは企みが必要ではないかと。
「この句は夜の設定なのですが、夜にかけているサングラスとなると、季語としての力は弱くなるのでしょうか?」と作者のコメント。
季語「サングラス」は、日差しを避けることに本意があるので、夜という時間帯になると、季語としての鮮度は落ちるかと思います。夜のサングラスを詠んではいけないという意味ではなく、かなりの工夫あるいは企みが必要ではないかと。
次のSA過ぎて故郷星涼し
三太郎
夏井いつき先生より
「妻の故郷の田舎に高速道路で行った時のことです。長時間の運転でやっと最後のSAに着き、空を見たら星が綺麗でした」と作者のコメント。
「次の~過ぎて」という叙述に違和感があります。せめて「次のSA過ぎれば故郷」ぐらいでしょうか。
「妻の故郷の田舎に高速道路で行った時のことです。長時間の運転でやっと最後のSAに着き、空を見たら星が綺麗でした」と作者のコメント。
「次の~過ぎて」という叙述に違和感があります。せめて「次のSA過ぎれば故郷」ぐらいでしょうか。
季重なり
夏登山帰りは豚かつ馴染み店
かや楓
夏井いつき先生より
「登山」だけで、夏の季語になります。
「登山」だけで、夏の季語になります。
夕焼けや止めてきたかと仰ぐ空
含
夏井いつき先生より
「夫の運転で遠出した帰途、煮込みをしていた鍋の電源を止めてきたか不安になっても、慣れない外国の高速道路を運転中の夫に言うわけにいかず、夕焼けも火事かと、ドライブインどころではありませんでした」と作者のコメント。
この文字面では、何を「止めてきたか」なのか、読み解けません。
「夫の運転で遠出した帰途、煮込みをしていた鍋の電源を止めてきたか不安になっても、慣れない外国の高速道路を運転中の夫に言うわけにいかず、夕焼けも火事かと、ドライブインどころではありませんでした」と作者のコメント。
この文字面では、何を「止めてきたか」なのか、読み解けません。
嫁ぐ日に庭に侘助ひめやかに
藤野いく子
夏井いつき先生より
二つの助詞「に」で損をしています。
添削例
嫁ぐ日の庭や侘助ひめやかに
二つの助詞「に」で損をしています。
添削例
嫁ぐ日の庭や侘助ひめやかに
縁石に蜥蜴買い物に自転車
そーめんそめ女
夏井いつき先生より
「買い物に行く途中、縞模様の青くツヤツヤした蜥蜴を見つけ、思わず見惚れました」と作者のコメント。
語順を一考してみましょう。
「買い物に行く途中、縞模様の青くツヤツヤした蜥蜴を見つけ、思わず見惚れました」と作者のコメント。
語順を一考してみましょう。
大空の闇に目印夏の星
こま爺
夏井いつき先生より
「目印」とは、夏の星のことですか? 何か、別の目印ですか? そこらへんが分かり難いです。
「目印」とは、夏の星のことですか? 何か、別の目印ですか? そこらへんが分かり難いです。
暗闇に潜む安堵や夏の星
こま爺
夏井いつき先生より
どんな種類の「安堵」なのか、少しヒントが欲しいです。
どんな種類の「安堵」なのか、少しヒントが欲しいです。
盆帰り味で勝負のドライブイン
天亨
夏井いつき先生より
「田舎に行って帰る途中、夜遅くなってお腹も空いてきたので、ドライブインに寄ると、新鮮な魚貝類がいっぱいの定食にびっくり。美味しかったです。昔のドライブインと違い、生き残りのためにはうまい料理で頑張っているようです」と作者のコメント。
どこの店も本来は「味で勝負」してこそですから、中七が少々雑。作者コメントに「新鮮な魚貝」とありますので、そういうドライブインだと分かるような工夫が欲しいですね。
「田舎に行って帰る途中、夜遅くなってお腹も空いてきたので、ドライブインに寄ると、新鮮な魚貝類がいっぱいの定食にびっくり。美味しかったです。昔のドライブインと違い、生き残りのためにはうまい料理で頑張っているようです」と作者のコメント。
どこの店も本来は「味で勝負」してこそですから、中七が少々雑。作者コメントに「新鮮な魚貝」とありますので、そういうドライブインだと分かるような工夫が欲しいですね。
家出してファミレスに混ざる火取蛾
立石神流
夏井いつき先生より
「家出した男子高校生が、隣町のファミレスに大人のふりをして一晩過ごすイメージで作りました」と作者のコメント。
「家出して~に混ざる」という叙述が、やや散文臭いかな。更に、「灯蛾」という三音の季語もあるので、それやらこれやら一考してみましょう。
「家出した男子高校生が、隣町のファミレスに大人のふりをして一晩過ごすイメージで作りました」と作者のコメント。
「家出して~に混ざる」という叙述が、やや散文臭いかな。更に、「灯蛾」という三音の季語もあるので、それやらこれやら一考してみましょう。
夜中にはたぬきも化けてドライブイン
兎波
夏井いつき先生より
「たぬき」は確かに季語ではありますが、この句の場合は季語としての働きは薄いかな。
「たぬき」は確かに季語ではありますが、この句の場合は季語としての働きは薄いかな。
うらがへる大蛾のたどき無き翅音
朝日千瑛
夏井いつき先生より
「山繭蛾はひっくり返るとバタバタしても戻るのは難しく、時間がたつと翅音も力なくなります」と作者のコメント。
「たどき」は、「手段」の意でしょうか? 幾つかの意味があるようですが、そもそもこの言葉は、必要でしょうか。辞書には、以下の記載があります。
・たどき【方便】=たずき(方便)
・たずき【方便・活計】(後世は「たつき」「たつぎ」とも)
① 手がかり。よるべき手段。方法。よるべ。
② 様子・状態を知る手段。見当。
③ 生活の手段。生計。たつ。
「山繭蛾はひっくり返るとバタバタしても戻るのは難しく、時間がたつと翅音も力なくなります」と作者のコメント。
「たどき」は、「手段」の意でしょうか? 幾つかの意味があるようですが、そもそもこの言葉は、必要でしょうか。辞書には、以下の記載があります。
・たどき【方便】=たずき(方便)
・たずき【方便・活計】(後世は「たつき」「たつぎ」とも)
① 手がかり。よるべき手段。方法。よるべ。
② 様子・状態を知る手段。見当。
③ 生活の手段。生計。たつ。
蛾群がる峠の自販機ドライブイン
えりまる
夏井いつき先生より
「自販機」か「ドライブイン」、どちらかに絞って、描写し直してみましょう。人選は目の前ですよ。
広重の涼風わたる日本橋
氷雪
夏井いつき先生より
「わたる」が必要かどうか、再考してみましょう。
「わたる」が必要かどうか、再考してみましょう。
そうめんを啜るトラック野郎独り
夏の町子
夏井いつき先生より
念のため、「冷そうめん啜る」としておくと、季語の問題を回避できます。それなら人選。
念のため、「冷そうめん啜る」としておくと、季語の問題を回避できます。それなら人選。
露寒やチェーンをつけてかけうどん
常然
夏井いつき先生より
「峠のドライブインで、チェーンをつけてから夜食のかけうどんを食べた経験があります。季語が『露寒』で良いのか悩みました」と作者のコメント。
そうですね。雪に備えてのチェーンですから、季語は冬の、しかも雪や凍てを思わせるものにしたほうがよいでしょう。
そうですね。雪に備えてのチェーンですから、季語は冬の、しかも雪や凍てを思わせるものにしたほうがよいでしょう。
海霧窓に広げクーペは山に消ゆ
留辺蘂子
夏井いつき先生より
上五中七まではOK。下五「山に消ゆ」は、クーペが消えたと解釈されるかと思いますが、作者の視点はどこにあるのでしょう? 車内なのか、クーペを遠くから見ているのか。
諍ひの車窓を翳る夜這星
内藤羊皐
夏井いつき先生より
上五中七を良しとした時、季語はちょっと企み過ぎてます。意図が見えすぎるというか。