第30回 俳句deしりとり〈序〉|「ふき」①
始めに
出題の句からしりとりの要領で俳句をつくる尻二字しりとり、はじまりはじまり。
第30回の出題
兼題俳句
菓子涼し木陰のごとし風の吹き のんつむ45号
兼題俳句の最後の二音「ふき」の音で始まる俳句を作りましょう。
※「ふき」という音から始まれば、平仮名・片仮名・漢字など、表記は問いません。
吹きながら涙は拭けぬ草の笛
村瀬ふみや
「草笛」が夏の季語なわけですが、間に助詞を挟んで「草の笛」として下五に収めています。四音の季語に対して苦肉の策でこういった使い方をする場合もありますが、個人的にはできるだけ避けたいと考える立場。わかるけどさあ、なんかモニョモニョしない?
吹き零したる秋思とふ夜の蝋色
小山美珠
吹き飛びし蛙バクチクの無罪
俊恵ほぼ爺
吹き飛んだ小児病院鐘氷る
曽根朋朗
吹溜る黒南風に胎盤の腐す
清水縞午
吹きこんで抜けて紙ふうせん懐く
だいやま
吹き抜けにア・カペラ春のニコライ堂
よはく
吹き抜けの駅のドームや菊日和
コミマル
吹き抜けの大きな窓に大きな蛾
前田昂平
吹き抜けを埋める人夫や冬の暮
青村秋入
吹き溜まり碧の沼に散った花
ヨシキ浜
吹き竹の灰に驚く守宮かな
横山雑煮
吹矢てふスポーツ愉快夏休
蓼科 嘉
吹矢吹く背筋は凛と孔雀草
梅田三五
吹き戻しのピープー唄ふ薄暑かな
赤味噌代
吹き戻しぴゃーぴゃー開く夏祓
しみずこころ
こちらは名詞化したシリーズ。日常的に目にする場所や物から、懐かしさを感じる道具まで。「吹き戻し」って口にくわえて吹いたら紙がピューッと伸びたり戻ったりするアレのことだそうです。子どもの頃から遊んだことはあったけど、正式名称があるって考えたことなかったなあ。なんとなくピーヒョロとかって呼んでた気がする。実は現在国内で製造される吹き戻しの80%は淡路島で作られているのだそうです。へぇー!
ふきもどし戻り忘れる冬の影
滋庵風
吹越満の抜け殻枇杷の花
青水桃々
吹消婆ほほづきの赤濁りたる
翡翠工房
固有名(?)のお二人。「吹越満」さんは日本の俳優。大河ドラマなどにも多数出演されています。けど、「抜け殻」とはいったい……? 《翡翠工房》さんの「吹消婆」は別名・火消婆、ふっけし婆とも呼ばれる日本の妖怪。マニアックな句材見つけてきましたなあ。ランタンのような形の「ほほづき」が灯火を消す妖怪との取り合わせの接点。
ふきだしの虹はるかなるドラえもん
おりざ
吹き出しのコマに悴む修正ペン
ぷるうと
吹き出しに入るる台詞や冬隣
源早苗
ふきだしの余白の手柄夜の秋
うに子
《②へ続く》