第30回 俳句deしりとり〈序〉|「ふき」②
始めに
出題の句からしりとりの要領で俳句をつくる尻二字しりとり、はじまりはじまり。
第30回の出題
兼題俳句
菓子涼し木陰のごとし風の吹き のんつむ45号
兼題俳句の最後の二音「ふき」の音で始まる俳句を作りましょう。
※「ふき」という音から始まれば、平仮名・片仮名・漢字など、表記は問いません。
吹き替えか字幕か、まずはソーダ水
瀬央ありさ
吹き替えか字幕か短夜のミニバン
春野ぷりん
吹き替えのディズニーアニメこどもの日
くぅ
吹き替えの声優代わりつくつくし
潮汐子
吹替えの変わったアニメソーダ水
天雅
吹替のパズーソウルの雲は夏
加里かり子
吹き替えの違和感拭う熱帯夜
那烏夜雲
吹き替えの声みな故人夜の秋
かなかな
オタクしかわからない話になってきつつあるからこの辺で切り上げましょう、ハイ。
蕗の薹昨日の今はあったのに
めぐえっぐ
蕗のじい傘も疊まで立ち話
老蘇Y
蕗の姑花婚式は明日
宇治 鴇眞
蕗の薹元野良猫の白い皿
九月だんご
蕗味噌や酒と息子と苦笑い
蕃茄
蕗味噌や声変はりしてから好きに
小野蒼水
蕗味噌や父に欠かせぬ酒の友
詠華
蕗味噌嘗めてみる二軒目も敬語
うーみん
「蕗の薹」はジャンルとしては春・植物の季語だけど、その蕗の薹を調理したものである「蕗味噌」は春の生活・人事の季語になります。蕗の薹の苦味が酒のあてに丁度良いのか、お酒との取り合わせはよく見る句材であります。《うーみん》さんはそのイメージを下敷きにしつつ、言葉の省略が効いていて巧みです。打ち解けないのは自分自身か、相手の方か、どっちかなあ。
蕗を剥き髭の生えたるお母さん
⑦パパ
蕗を剥くばあちゃんの指ぎゅうしたい
ほうちゃん
蕗を剥く指先黒き野の匂ひ
とも女
蕗抱え靴を鳴らして婆ちゃんち
泉幸
ふきの葉に受ける漬けもん畦の茶事
花屋英利
蕗の雨喉腫れし日の駐輪場
空豆
拭きあげる教室秋の風さらり
茂木 りん
拭きかけの皿を残して揚花火
悠美子
拭き上げて手放す今朝の冷蔵庫
ユリノキ
拭き上げて水の依代なる切子
ツナ好
拭き尽くすトイレ明日は秋彼岸
不二自然
拭き掃除今朝も西瓜の種ひとつ
絵夢衷子
拭き掃除途中の廊下ねむの花
田原うた
再びの動詞、今度は「拭き」です。最初に紹介した「吹き」シリーズと同じように、複合動詞化したり、名詞化したりしています。《ユリノキ》さん、《ツナ好》さんは共に複合動詞「拭き上げ」を使っています。どっちも良いねえ。「上げ」の達成感と、その感慨を引き継いで中七へと接続する「て」の接続が効果的。
噴き溢す七草粥もなゐの国
沼野大統領
噴き上がる紙登山の崖のトイレ
どこにでもいる田中
《③へ続く》