第30回 俳句deしりとり〈序〉|「ふき」③
始めに
出題の句からしりとりの要領で俳句をつくる尻二字しりとり、はじまりはじまり。
第30回の出題
兼題俳句
菓子涼し木陰のごとし風の吹き のんつむ45号
兼題俳句の最後の二音「ふき」の音で始まる俳句を作りましょう。
※「ふき」という音から始まれば、平仮名・片仮名・漢字など、表記は問いません。
不機嫌が消えるまるごと桃のパフェ
紫木蓮
不機嫌なゴリラの如く水を打つ
麦のパパ
不機嫌なとき黙る癖アマリリス
ノセミコ
不機嫌なパンジーにある磁力かな
常磐はぜ
不機嫌な顔の揃ひて盂蘭盆会
孤寂
不機嫌な顔の南瓜のわたを抜く
樋ノ口一翁
不機嫌な君黙々とかき氷
いちすぺ
不機嫌な波ご機嫌な鱗雲
清瀬朱磨
不機嫌な彼の小皿にあるパセリ
うめやえのきだけ
不機嫌に鰯に塩をしておりぬ
湯屋ゆうや
不機嫌の落としどころや髪洗う
寺田 美登里
不機嫌や我らは汗の製造機
二城ひかる
不機嫌をすぐに治める氷菓かな
クスノさとみ
不機嫌を隠して刻む胡瓜かな
ふじっこ
不機嫌を悟られぬやう泡立草
西野誓光
不機嫌を冷えたビールが吹き飛ばし
風輝
フキハラのチェックしてみる熱帯夜
小島やよひ
フキハラの舅に似せた案山子かな
十月小萩
フキハラを恐れため息飲み込む春
春海 凌
「不機嫌な果実」産科の窓の蔦
舟端玉
「不機嫌な果実」読み終え旱星
太之方もり子
カギ括弧でくくってるということはなんらかの作品っぽいですね。調べてみたら、林真理子の小説と、小説を原作としたテレビドラマと映画の情報が出てきました。原作小説の単行本が発行されたのが1996年。不倫をテーマにした小説として当時世間に衝撃を与えたとのこと。1990年代後半、妙にその類いの作品が流行ってた記憶がありますねえ。『失楽園』もこれくらいの時期じゃなかったっけ。作品未読だったのであらすじだけ確認してきましたが、《舟端玉》さんの「産科」との取り合わせは物語の結末も踏まえての内容になるんですね。小説の内容的にも感情を盛りたくなりそうなものですが、季語「蔦」の選択は抑制の効いた描写になっていて良いバランス感覚。
不吉なる非通知の文字迎へ梅雨
白いチューリップ
不吉なバスを郭公が追ってくる
たきるか
不謹慎だよねあの月この心
里山子
不謹慎ですよそんなにも白い薔薇は
澤村DAZZA
不謹慎な蒲公英踏んで通夜らしく
馬場めばる
つつしみがない様、ふまじめな様が「不謹慎」。しかし冷静に考えてみると、不謹慎かそうでないか、って主観的な物言いだよなあ。《里山子》さん、《澤村DAZZA》さんの句はどちらも口語の主張の強さが魅力。こういう変な句を作る勇気、ぼくは敬意を表するッ!
《馬場めばる》さんの句はもう少し意図を推し量りやすい。「蒲公英」の明るい黄色の、「通夜」に対するそぐわなさ。その蒲公英を踏み潰すことでようやく通夜らしくなりましたよ、といったところでしょうか。エゴを詩に昇華しております。
不起訴なり河豚の刺身の澄みわたる
細川 鮪目
不起訴です幽霊のしたことなので
みづちみわ
一方、《みづちみわ》さんはそんなバカな! を笑うタイプの滑稽味ある一句。ミステリーもので「犯人は実は幽霊でした!」なんてやられると噴飯ものなんですがねえ。現代落語っぽくもあり。
《④へ続く》